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第136話

 そういえば、ここまで采配を振るってきた相談役ダーガンというと、幹部達は内心思う所があった。


 彼は自分達と違って成り上がってきたわけではないからだ。


「あの相談役はウチらの組織のためって言って、どこかからカヴラさんが連れてきたというが、死んだはずの過去の大物がどこから来たのか、俺も聞かされてないなブンブン」


「オレも不思議に思ってたゴスよ! カヴラさんが悪魔術とか使って蘇らせたわけじゃあるまいしゴスゴス」


 ビーネットとスコルビオン。犬猿の仲の蜂と蠍である二人だが自然と同調する。


「コケ、若手のお前らもあのタコ男を知ってるとは意外だな」


 この二人は揃ってコカトリーニョやレカドールよりも序列では下である。幹部でありながら門番の肩書きを与えられているのもそのため。ダーガンが全盛期で活動していた8年前の岩龍会の時代から4年ほどした頃に裏社会で頭角を現しその後、カヴラに見出されワイルドコブラに入った。


「カタギも容赦なく、テーマパークとかに爆弾仕掛けて事件に巻き込む、犯罪コーディネーターとして名前は知ってたゴスよ」


「ある時は少年、ある時は老人、ある時は美女と姿を変える異人(ゼノ)がいた話を俺も聞いたことがある。だがスカールさんや総帥に倒されたと」


 二人とも異なる場所で耳にした化蛸のダーガン。表舞台から姿を消した後もその悪名は語り継がれている。


 姿を変えて美女の姿をしていても、肩や脇から伸びるその生々しく黒い縞模様が入ったタコの触手を辛うじて目撃した者は悪魔を想起したという。


「なあ、あの相談役がウチに来てから、こう思ったことはないか?」


「ん?」

「なんだゴス?」


 ビーネットとスコルビオンは問いかけるコカトリーニョに一斉注目する。


「カヴラさんも変わったよなって。指揮も相談役に任せっきりで」


 ビーネット、スコルビオンコンビの二人よりもコカトリーニョは長くこの世界におり、悪名高きダーガンの存在は知っていたが、まさか死んだと思っていた彼が自分達の組織に加わるとは思ってもいなかった。

 

「8年前岩龍会が滅んだ後、まだ売れてなくて路頭に迷ってた俺っちは男気あるカヴラさんに誘われて、ワイルドコブラに入った!」


 カヴラはたくましい肉体を持つ、裏社会のレスラーでもある。ダークメア三大幹部一角で蛇拳王という異名以外にもチャンピオンとも呼ばれている。その戦いぶりは数多の屈強な異人(ゼノ)達の尊敬を集め、虜とした。


 スカールが本家を統括し総帥に代わって仕切る立場ならば、カヴラは剛を担うポジションである。

 

 コカトリーニョもカヴラに惚れ込んだその一人で、岩龍会が滅んだ後の新たな関東裏社会のサッカーのスペシャリストに上り詰め、リングの上でカヴラとエキシビションマッチをしたことがある。拳と足技が火花を散らし、会場を沸かせた。


「レへヘヘ……ボスと相談役は恵比寿に潜伏して……いますよ……」


 人狼少女と滝沢の妹にやられたばかりで会話に参加できないレカドールが横たわりながらしなびた舌を動かして言葉を紡ぐ。


「恵比寿ゴスか! 確か前線基地として、そこのホテル貸し切ってたゴスね」


「ブンブン。ただそこに集まると敵にバレちまうから、俺が指揮した偵察部隊に始まり、全員がバラバラで攻めたんだったな」


 またしても同調する蜂と蠍。


「俺っちは事前に何かあった時の駆け込み寺として聞かされてたが、なかなかに良いホテルだったコケ! 今思えばウチは最高幹部が直々に率いる二次団体とはいえ、そのカネはどこから出てきたんだろうな?」


 カヴラさんの出血大サービスだと思ってたとコカトリーニョ。


「レヘヘヘへ、あなたがた、何も知らないんですね……」


「マスター、もしや何か知ってるゴスか!?」


 スコルビオンはじめ、その場にいる全員が一斉注目し聞く耳を立てる。それは思いがけないものであった。


「相談役のダーガン……知略だけでなく、なぜか巨万のカネを持っていて……今のワイルドコブラのカネは全てあの相談役で回ってるも同然なんですよ……」


「コケ!? そんなの知らないぞレカドール!  俺っちになんで教えてくれなかった!」


 体を起こして胸ぐらを掴むコカトリーニョ。


「聞かされたのが、あなたが倒された後だったからです……本部が陥落しても安心しろ、大丈夫だと」


「大丈夫!? 何が大丈夫だコケーッ!!」


「当人曰く、コネがあるようで……」


「「「コネ!???」」」


 レカドールの言葉に三人とも揃って驚愕した。これまでカヴラに代わって采配を振るってきた、ワイルドコブラの軍師ともいうべきダーガン。

 彼の計算された指揮によって一時期は初月諒花の泊まるホテルを突き止め奇襲、数の暴力によって優位に立ったが、実行役のコカトリーニョが倒されたことで雲行きが怪しくなった。


 ここまで司令塔の役割を果たしてきたその相談役にまさかコネがあるとは思いもしなかったのである。


読んで頂きありがとうございました!

前回の第135話の改行でミスがあったので修正させて頂きました。

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