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第130話

「それじゃ話そう――まず、レーツァンはな――――」


 密会の中で、他言無用を条件にスカールはその全貌を教えてくれた。これは仲間であっても口外禁止の最高機密だ。絶対に話してはいけない。


 たとえ初月諒花でも実の妹でも。時が来るまでは決して核心を明かしてはいけない。全てが台無しになる。覚悟を胸に話を聞いた。


 まず出たのはあのレーツァンについての話題だった。彼は初月諒花に倒され、黒條零と中郷に繋がる手掛かりを言い残した後、その身を自らの緑炎で焼かれながら死んだわけだが……そのオチを聞いた。


 一言でいえば、あぁ、やっぱりそうだったか。そうとしか言えなかった。


 そして、


「まだ会ったことがない俺はともかく、レーツァンは自分を負かしたあの女を認めているだろう」


 帝王である彼を倒した諒花は紛れもなく彼が認めた鍵を握る異人(ゼノ)として合格だという。


 レーツァンが実行役になり、彼女から両親や恋人を奪い、更に黒條零を送り込み、二人の背後で糸を引く全ての黒幕は中郷だ。今の彼女はやがて時が来れば中郷を目指したくなること間違いない。


 中郷も彼女を狙ってる以上、時が来れば両者が相まみえるのは時間の問題だ。中郷の魔手が伸びれば彼女もまた抵抗するだろう。


「いわば、彼女こそがこのプロジェクトの鍵。ということですわね」

「そうだ。気がつけばあの女はレーツァンを倒しただけじゃなく、お前らまで味方につけているじゃないか」


「現状は組織の膿を出すための内紛処理の最中にワイルドコブラ暴走というアクシデントこそあったが、あの女(初月諒花)を立てたアイツ(レーツァン)の筋書き通りに事は進んでいる」


 彼の筋書きは初月諒花が自分を止められるほどの異人(ゼノ)であるという賭けが成功し、そこから彼の死のニュースを利用して組織内の反乱分子に内紛を起こさせた、今に至る事全てを指すのだろう。

 彼は初月諒花の敵として立ちはだかり、全力で青山とこの一帯の破壊を目論む自分を止められるか彼女に賭けていたと言っていたが、その賭けが的中し、彼の理想通りになっている。


 振り返ってみればあの女は――初月諒花は、と切り出すスカール。


「始めは中郷が目をつけ、組んでたレーツァンは最初からあの女を奪い、裏切って蹴落とす算段だった。だが裏社会で立場の弱かった俺達はのし上がるためのコネ作りのためにあえて当時XIED(シード)の一人の重役にすぎなかった中郷の仕事を受け続け、今日に至るまで反撃の機会を伺っていたわけだ」


 初月諒花が生まれた2010年代初頭。当時はまだこの関東裏社会は岩龍会のものだった。XIED(シード)も日本支部トップたる東日本支部長官は中郷ではなかった。

 この時のXIED(シード)の主要メンバーは今とは比べ物にならない。


 岩龍会は抗争の末に2016年に滅ぶことになり、以降は関東裏社会はダークメアが取って代わっていき今に至る。


 今はそのつみ重ねもあって、レーツァンがダークメア総帥であり裏社会の帝王として君臨し、中郷が日本のXIED(シード)のトップという長官と、それぞれ伸し上がって、二人が互いにキングとなって手を組みながらも駆け引きしていると認識していれば良い。


 ここで気になったことがあった。


「スカールさんは中郷に会ったことはありますか?」


 中郷は実際に目の前に姿を見せない長官として有名だ。公開されている顔写真も本人という確証はない。名前と存在が一人歩きしている。

 下積み時代からレーツァンと交流があったならばナンバー2である彼も見たことはあるのではないか。


 だがしかしスカールは首を横に振った。


「ないな。中郷はあくまでレーツァン個人の顧客クライアントとして繋がっているだけで、中郷から振られた仕事をレーツァンが俺達に任せられるならば振るのさ」


 通りでこれまで主にレーツァン単独で動き、スカールら最高幹部が初月諒花にだんまりなのも頷ける。彼はスカール達に介入させなかったのだろう。


「となると、レーツァンは会ったことがあるということですか」


「だろうな。それ以上の事は俺もさっぱりだ。俺が知っていれば顔をもとに賞金をかけて情報提供を呼び掛ける手配書を作るだろう」


「それをレーツァンがしない理由は?」


 訊くと、スカールは俯いて唸りながら黙ってしまった。ハインも不敵な笑みを浮かべて彼を見つめるのみだった。



「…………分からない」


 それしか言えなかった。


読んで頂きありがとうございました!

続きなのですが本作のストックと執筆の関係で今週は7月23日夜のみの更新とさせて頂きます。すいません。

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