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第127話

「でもこれも作戦の内でまた復活するんだろう?」


 わざとらしい断末魔とともに再び崩れ落ちたスカール。一つ分かることがある。先ほどのは死んだふりみたいなものだったのだろう。


 あれは初見殺しだ。不意打ちを喰らわないように、奴の残骸の山に目を離さない。その場でそっとファイティングポーズで身構える。


 こうしていれば、復活した所をまた攻められる。そう思っていた時────、


「!??」


 先ほど、足元に散らばった鎖の部品の数々。それらは一つ一つが知恵の輪のように連なっている長方形で鎖という武器を構成している。鎖とはそういうもの。

 だが、その一つ一つのバラバラになった部品が、どういうわけか勝手に動き出し、宙に浮いて自分を起点に周囲で渦巻いており、再び鎖の形を成し、蛇のように胴体に巻きついてきたのだ。


「なんだよこれ!? 生きてるみたいじゃねえか! ──え?」


 これも奴の仕業か。すかさず前を見ると先ほどまであったスカールの残骸は一切なくなっていた。

 

 どこにいった? 辺りを見渡すがどこにもいない。


 またしても背後か、となった時、背後から突如腕を回され、抱きつかれた。現れた長髪とゴーグル姿の男。


「良いスタイルだ……」


 ジュルリと舌を舐める音が耳元から聞こえて寒気がする。


「……っふははははは! どれだけ殴っても無駄だ……!」

「この野郎!!」

 急いで振りほどくと意外とあっさり解けた。巻き付いていた鎖も引きちぎり、


「初月流・青狼せいろう後返うしろがえ正拳せいけん!!」


 たぎる蒼白いオーラを集中させ、放った燃え上がらせた拳を背後に立つスカールの胸部にお見舞いし、そこに大きな風穴を開いた。が、奴は吹っ飛ばされるどころか倒れるそぶりを見せない。

 それどころか、穴がみるみると自動で修復されていく。


「くそっ!!」

 殴っても、殴っても、その体を砕くことはできてもすぐに修復されてしまう。


「どうなってんだ……攻撃しても全然効かねえぞ!」

 胸部がダメならそのツラだ――ドヤ顔を決め込むその顔面を横から思い切りブン殴った。


「なっ……!」

 が、殴られて鼻血を出すこともない。代わりに顔は殴られた左頬部分が一度白骨化し、再び元に戻ったのだ。殴られても皮膚まで綺麗に回復してしまっている。


「っふはははははは!! どうした? さっきまでの威勢はよ!!」

 スカールの嘲笑が森に響く。その見下す眼光が突き刺さる。


「お前は俺に勝つことはできまい。どれだけ俺を殴ろうと、蹴ろうと、俺は何度でも骨化し、骨からまた肉体を元通り復活させることができる!」


 奴を攻撃すると発生する白い粉、白い塊の正体。そういうことかと。

 あれは――復活しようとした奴の体を構成する骨そのものだったのだと。


「つまりは骸骨。スケルトンか」

 花予のやってるRPGに骸骨でそういう名前のザコ敵がいるのを思い出した。スカルなんちゃらというのもいた。だがそいつらと違い、コイツは何度も復活している。


「その通り! 俺は骸骨スケルトン。さっきまではわざと壊れてやったのさ! 油断させるためにな!」

「黙れ!!」

 気合を込めた渾身の正拳突きが、奴の胸部に再び突き刺さる。が、風穴は開いても再び骨から肉体が生成されるように塞がっていく。


「声と威勢は良いが……クソショボいパンチだな……よくそんなのでウチの総帥に勝てたな!!」

 スカールは苛立ちを隠せない様子だ。


 フォルテシアや翡翠に言われて痛感したことが再び蘇ってくる。自分が稀異人(ラルム・ゼノ)と呼ばれるだけのチカラを持っていながらも同じ稀異人(ラルム・ゼノ)に押し負けるのは、幼少の頃からずっと首にしてきたチョーカーで本来持っていたはずの強いチカラを抑え込まれていたせいだ。


 変態ピエロに勝てたのも、その時の奴を何としても倒したい思いや様々な要因が積み重なって後押ししてくれたからだ。だからフォルテシアにもなすすべなく負けた。それは痛いほど分かっている。


「お前、本当に稀異人(ラルム・ゼノ)か? ラルムのチカラに目覚めて間もない異人(ゼノ)に毛が生えたレベルだぞ、こりゃ」


「くそぉっ……!」

 次々と呆れた批評が突き刺さり、唇を強く噛みしめる。反論できない。


 ここで、あるものに気づく。戦う前に放り出した漆黒の刃。それにしがみつき、構える。武器を手に戦うことは柄じゃないし素人だが。


ワラにもすがる思いってやつか。やってみろよ、俺をそれで斬れるものなら――」

「くっそおおおおおおおお!!」


 残像を作り、奴の周りを高速移動して撹乱した後、零の見様見真似で大ぶりでその刃を振り落とす。避ける動きをした奴の無駄に長い横髪がわずかに斬り落とされるが、切り傷からは出血もなく、ただ塞がっていくのみ。


「これでどうだ!! 初月流・急所突き!!」

 間合いを詰めると、両手で刃を持ち、奴の心臓めがけて突っ込んだ。


 ――――ッ!


 突っ込んだ時、持っていた刃が手を離れて右目の横を回転して通り過ぎ、地面に突き刺さった。


 一瞬、何が起きたか分からなかった。気がつけば刃は手元からなくなっていた。スカールの手には再びあの不思議な鎖が握られていた。


「ド素人の剣技で、俺に敵うと思ったか!? っふははははははははは!!」

「くそっ……」


 どうすればいい? 攻撃してもすぐに回復してしまう。これじゃ横髪を斬り落としただけだ。


 ――あの髪までは修復できないのか……?


 フォルテシアとはまた違う戦闘力で翻弄してくる彼も、間違いなくそれ相応の実力者……


 骸骨スケルトン人間。これまでの蠍、蜂、鶏、蜥蜴とは違う、久しぶりの動物由来ではない能力。


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