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第115話

 紫水があのトカゲ野郎を食い止めている間、ありがたく着替えることにした。


 戦える服ならば何でも良い。ここは滝沢組事務所だから男物でも動きやすい服でもなんでもあるはずだ。洗濯されてるかは別として。


 廊下に出ると、向かい側に二つのドアをそれぞれ発見する。何となく勘で右手のドアの方へと向かった。一階は死体だらけなのでこんな濡れた状態でそこまで向かう気にはなれない。


 灰色の沢山の事務用机の並ぶオフィスルームには着替えというものはなさそうだ。辺りを見渡すと奥に小部屋に続くドアがあるのを確認した。


 ドアを開けるとその先はロッカーがズラリと置かれ狭い通路となっている更衣室だった。部屋の上部にある換気用の小窓から夕陽が差し込んでくる以外は薄暗い。


 ロッカーの取っ手に手当たり次第に手を付けていくが、鍵がかかっていて開かない。


 更衣室に見切りをつけて廊下に出ると隣にあるもう一つの扉。中に入るとそこは棚に様々なものが段ボールに詰め込まれ、置かれている物置きだった。パソコンのモニターやコードとか。あとはファイリングされた適当な書類まで。


 だが部屋奥の壁の隙間に並べられた服の類に目がいった。ハンガーにかかっているそれは一着で上半身から下半身までを覆うものだった。


 ──紫水はこの服のことを言っていたに違いない。所謂レザースーツというやつか。


 男女問わず、本来はバイクに乗るライダーが着ているもので、袖もしっかり密着して入るピッタリとした構造上から胸元からウェスト、手足まで体型がくっきりとなるアレだ。


 全身真っ黒。サイズは男用で少しだけ大きい。だが身長も他の女子より一際高く、体格もあり、スタイルも発育も良い人狼少女には関係なかった。


 既に濡れているここまで着てきた制服や下着から、新たな服に足を入れ袖を通すと、チャックを上げて胸の谷間が少しだけ見える所で止めた。男はこういう格好を見るのが好きな奴もいるだろう。

 ついでに黒い手袋もあったので装着したい所だが、どうせ戦闘時は人狼の手で殴るのだからこれはしないでおく。


 服全体がちょうど肌に密着していてピッタリだ。自分の体型が普段よりもスレンダーに目の前に立てかけられてた鏡に映る。首下から胸元までの白く健康的な肌が強調されているようにも見えた。


 普段の服装よりも若干締め付けられている感じもするが、肌に密着している分、逆に身軽で動きやすくこれはこれでいいかもしれない。正拳突きや回し蹴りをしても袖やスカートが邪魔に感じることもない。


 なぜこんなものがここにあるのか。バイクにでも乗らない限り着る理由が浮かばない。滝沢組でバイクに乗る組員でもいたのだろうか? あるいは戦闘服?


 考えてもしょうがない、この格好ならば、動きのキレも良くてあのトカゲ野郎の速さに追いつけそうだ。ついでに普通の服と違って水に濡れてもある程度は平気そうだ。唾液をかけられても直接肌にかけられなければいい。


 急いで紫水の所に戻らなければ――!



 *


 唾液によるブレスが飛んできたとしても水の障壁で防げばいい。体についた唾液も水を発生させて洗い流すことができる。このチカラはいつでもどこでも、異源素(ゼレメンタル)が許す限り、体中どこからでも水を発生させられ、操れるのだから────!


「レヘヘヘヘヘヘ!! あなたも斬り刻んで料理してあげます」

 

 唾液攻撃は一切効かない。レカドールは漆黒の刃、影双像(カゲソウゾウ)を手に跳びかかってくる。刃の先端が怪しく光る。


「おっと、危ない!」

 それを横に避け、再び視線でロックオンして迫りくる奴の顔面に両手から大量の水を浴びせ、怯ませる。


「ぶももももももももも!!!」

奴は(ベロ)を出しているのもあって、大量の水をぶつけると口の中が溢れ、動きが無防備になる。


「そこだぁ!!!」

 口の中が水でいっぱいになって身動きがとれないレカドールに紫水の鉄拳が炸裂し、仰向けに倒れ込んだレカドールの口から大量の水が噴水のように吹き出た。


「ぶへっ!! ゴホッゴホッ……やってくれますね……」

 口の中の水が喉元まで刺激したのか咳をするレカドール。スーツもすっかり濡れており、ゆっくりと立ち上がる。


「こうなれば、この影双像(カゲソウゾウ)のチカラ、存分にお見せしましょう!!」


 レカドールは高速で縦横無尽に動き回る。一回動くごとに奴の残像がいくつも描かれてはまた一人に収束し、再び動き出すとその後に残像が描かれる目まぐるしい高速移動。こちらを動きまくって、攪乱してくるつもりのようだが気のせいか、さっきまでよりも動きにキレが入っているようだ。


「レヘヘヘヘヘヘ!! あなたを先に引き裂いてあげます!!」


 ────諒花……早く!


 だが諒花が帰ってくるまで持ちこたえなければならない。奴の動きに目を離してはいけない。数秒でも目を離せば、その時は死を覚悟する必要があるだろう。


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