表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/146

第105話

 先の戦いで、裏社会の帝王にして犯罪組織ダークメア総帥のレーツァンを倒した人狼少女、初月諒花。だが相棒で親友の黒條零がまだ見ぬ敵の監視役だと判明し、確認しようと彼女の家を訪れるが失踪してしまう。

 唯一の残された手掛かりである零のノートパソコン。その解析を協力関係となった滝沢家が請け負うが、ダークメアの三人の最高幹部の一角カヴラが率いる二次団体、ワイルドコブラが武装蜂起。諒花は襲い来る三人の幹部、戦闘蜂ビーネット、鋼鉄蠍スコルビオン、怪鶏コカトリーニョの撃破に成功する。だが敵の攻撃が激しくなる渋谷に居続けることは安全とは言えなくなり滝沢家当主、翡翠の提案で叔母で義母の花予とともに滝沢家の本拠地である青山の滝沢邸へ避難する。

 滝沢家による零のパソコンの解析が完了したことで、諒花はまだ見ぬ敵、全てを動かし暗躍していた黒幕にしてXIED東日本支部長官、中郷利雄の存在と、零はそこから送られてきた監視役などの事実を知るのであった……


「…………ふぅ……」


 部屋に入ると目の前にあるふかふかな布団が敷かれたベッドの上にグッタリとその身を預けて仰向けとなって背筋をうんと伸ばした。零のパソコンを通してずっと話を聞いていたら、一人になりたくなったので翡翠に部屋の場所を訊き、やってきたのだ。


 ここは滝沢邸の二階奥にある客人宿泊用に用意された一室。自宅から持ってきた荷物は滝沢家の使用人によって運び込まれていた。きっと花予を怖がらせないように位の高い、ちゃんとした人を翡翠が選んでくれたのだろう。バルコニーのある窓からはこの屋敷の自慢の庭、美しい森林が一望できる。


 ここに来るまで、電話や車の中で翡翠が再三に渡って注意してきた警告の意味が、今ならばよく分かる気がした。


 巨悪というのはダークメアやワイルドコブラみたいな組織を指すと思っていた。典型的で分かりやすい悪党どもが徒党を組んでるものだと。ヤクザやギャング、胡散臭い宗教団体とか。たとえそれが黒幕だとしても。


 だが今は違う。最終的に立ち向かわなければならない相手がいる。それはまさかのXIEDシードの中枢そのもの。立ち位置もそうだが、異人(ゼノ)だった母親は勿論、父親も在籍した組織なので疑う余地もない。


 秩序を司るXIEDシード。それを支配する長官、中郷利雄。


 本来は正義側のトップのはずが、犯罪組織総帥のあの変態ピエロ、レーツァンと手を組み、自ら手を汚さずに両親、恋人と次々と大切な存在を奪い去り、更には零を小4の時に転校生として送り込みずっと監視させていた。零がやってきたのは2020年4月。今から4年前だ。


 なお、変態ピエロはこの間も中郷を倒すためにこっそり動いていたというがそんなのはいい。


 今の関東裏社会も、その二人の密約のもと、土地を分け合って生まれた。頭の中でもう一度プロジェクターに映し出された対象地域を青と黄色に塗った地図の構造を思い浮かべてみると、東京23区は全てダークメアの青色でXIEDシードはその外にポツポツと黄色で拠点を構えていた。それは世界史の授業で出てきたどこかの国が互いに領土を均等に分け合う様に似ていた。


 だが、今ならばしっくりくることもある。たとえ変態ピエロに目をつけられていても、XIEDシードが来て守ってくれなかったのもそのためだということ。零が監視役なのもあるし、変態ピエロが独自の思惑とこちらに仕掛けてきていたのも、全ては絶妙に中郷の思惑通りにいっていたのだろう。こちらの身に何かあれば零が頑張れば良いと。


 フォルテシアが来た、あるいは来れた理由はまだ分からない。変態ピエロを倒したことによる影響があったのだろうか。フォルテシアはXIED(シード)だが、中郷サイドではないならば、こちらに手を出されることは中郷には都合が悪いはずだ。


 零はどのような思いで監視役をしていたのだろうか。とても苦しかったのではないだろうか。贈り物も受け取らなかったのも、本当は不本意だったのかもしれない。監視役であることを暴いた時の去り際に左目からこぼれた一粒の涙もそうだが、何かしらの強い葛藤があったに違いない。


 コンコン。


 ドアを軽くノックする音がした。



 ※


 その数分前。黒條零のパソコンの中身に関する発表会を終えた直後、自室でイヤホンをして小休憩をとる翡翠のもとにパソコンで音楽を聴いている所に一通のメールがやって来た。


「……あら」


『お宅の滝沢組事務所を占拠しました。捕虜の三幹部の身柄引き渡しと、初月諒花一人で来ることを要求します。日が沈むまでに要求を呑めなければ、あるいはこちらの意に背くと見た場合、あなたの屋敷を攻撃します────アレックス・レカドール』



 ──催蜴さいえきの彼ですか。ふむ……


 ここまで現れて撃破したワイルドコブラ幹部三人のうち、戦闘蜂せんとうばちビーネットと鋼鉄蠍こうてつさそりスコルビオンは門番で幹部としては若手の部類だ。今朝現れた切り込み隊長の怪鶏かいけいコカトリーニョと地位もほぼ同格の実力者。


 仮に今、レカドールに単独でこの屋敷に侵入を許せば、安全を脅かすことになる。絶対に敵を入れてはならない。客人のためにも。

 

読んで頂きありがとうございました!第三部開幕です!

三週間休載していたため、冒頭にあらすじをつけさせて頂きました。

キャラ紹介や用語は準備ができ次第挿入予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ