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転生者の贖罪  作者: 七篠
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天敵が現れた

 その後も順調に俺の魔力量は増え、涙は魔力操作が少しずつ丁寧になっていった。

 流石に俺やタマのように魔力が変動しないように戦うのはまだまだ難しいが、ある程度は様になったとは思う。

 夏休みも半分切りそうな頃にタマから言われる。


「明日には遥が来るからその時組手してもらいなさい」


 途中経過のテストという感じだろうか。

 でもまぁ現在の実力を計ると言う意味ではかなりいいだろう。

 何せ相手は格上、こっちがどんな攻撃してこようが絶対に倒れない自信がある。

 こんな心意気じゃダメだろうけど。


 そうタマが言った次の日、俺は意外な人物が大神遥の隣居た。


「みなさん修行は順調ですか?」

「はい。少しずつですが強くなっていると思います」

「俺も……はい」


 大神遥の隣にいる人物からの熱すぎる殺意の視線に俺はビビっていた。

 何でこんな厄介な奴がここに居るんだよ!!


「…………へぇ。これが渉の言ってた気に入らない奴。ふぅん。へぇ」


 そう言いながら品定めしながら殺意を隠そうともせず全身を舐め廻す様に見る一応女性。

 何故一応と言う言葉を使っているかと言うと、見た目が幼いからだ。

 金髪に頭には狐の耳、尻には金色の尻尾が一本。身長は中学生くらいで非常に目付きが鋭い。いわゆる狐目と言う奴。

 ファッションは町中にいてもおかしくない服装だが、動きやすいようにかなり短いショートパンツ。丈があっていないんじゃないかと思うくらい短いTシャツでへそが出ている。


 こいつは前世の頃の俺が最も苦手とする相手。

 名前は――


たえ?何で遥と一緒に居るの?」


 金毛妙。金毛タマの妹である。


「別に。仕事が予定よりも早く終わったから前入りしただけ。それよりその気に入らない奴はなんでこんな所に居るの」

「初対面で気に入らないはないでしょ。年上なんだからそう言う所しっかり見せないと」

「そ。それじゃ先輩からの激励って事で」


 そう言って即座に妙は俺の目玉に向かって引き金を引いた。

 それ以上の速さで俺は反応して向かってくる銃弾をハエを潰すような感覚で両手で挟んで止める。

 銃口を取り出し引き金を引くまで0.00何秒かかったのか全く分からない。

 相変わらずの早撃ちだ。


「っぶね~」


 今の一瞬で本当の死を目撃した。

 ほんの数ミリの鉄の礫が俺の目に当たり、そのまま脳を貫通する幻覚を見た。


 その一発を受け止めるだけで全身から汗が滝のように流れ、肩で息をし、床に両手をついた。

 その様子を見た子狐は俺の顔色を覗き込み、リルは抗議するように妙に向かって唸り声をあげる。

 だが妙は意外そうな表情でただ俺の事を見ていた。


「あれ?死んでない」

「妙!!あんた何したか分かってるの!?」

「この気に入らない奴を試した。大丈夫、一応体のどこかに当たったら消えるように調整しておいたから」

「そういう事を言ってるんじゃないの!!子供に銃を向ける大人がいちゃいけないでしょ!!」

「ここで修行してるんならこれくらいはしてもらわないと。ね、新人君」


 こいつ……本当に俺の記憶ないんだよな?俺がバカやってた時と変わらない早撃ちだぞ。


 これが俺がこいつを恐れている理由。

 こいつは気に入らない相手に対して本当に軽く引き金を引く。


 しかもこいつが持っている銃がもっと厄介だ。

 妙が持っている銃は『必中の魔弾(フライクーゲル)』。

 名前はとあるオペラの題材からとられたもので、必ず当たる銃を使った者達の物語を題材としている。

 それになぞられて銃に付与されている効果は『必中』と『貫通』。マジでこの組み合わせが凶悪だ。


 必中の条件は自分の目で実際に相手を見た事が条件。つまり一度見た相手だったら地球の裏側に居たとして弾丸が必ず狙った場所に当たる。

 貫通はそのままの意味。どこかの壁に隠れようが、結界を張ろうが貫通して相手を撃ち抜くまで永遠に動き続ける。

 唯一の弱点はジャイロ回転する銃弾を受け止めて運動を止める事。

 つまり銃弾を指で挟むなり、俺がやったように手で挟んで止めれば一応動かなくなる。


 これ言ってる時点で無茶ぶりだと分かるだろう。

 そもそも肉眼で銃弾を捕らえろと言う時点で頭おかしいし、さらにそれを挟むように止めないと撃ち抜かれて死ぬと言う理不尽。

 しかも一度相手の顔を肉眼で捉えればどこにいようが撃ち抜ける。

 しかもあらゆる壁や結界の中にいようとも関係ない。

 チートである。


 だからこいつにだけは正直会いたくなかった。

 俺の顔を見られたという事はいつでもこいつに殺される可能性をちらつかせられるという事。

 はっきり言うと生死与奪の権利を与えてしまった事になる。


 しかもこのフライクーゲル。状況に応じて変形する。

 今は重心の短いリボルバーの状態だが、状況に応じてマシンガンになったり、ショットガンに姿を変える。

 すると一度に発射される弾数が変わったり、連射される速度が変わる訳だ。

 何度でも言おう。


 理不尽すぎる。


 一応相手の強さや居場所によって消費魔力が変わるらしいが、ある程度近付いてたったの一回だけ引き金を引けば勝利する事が出来るだなんてチート過ぎる性能だ。


「で、本当にこいつ何なの?気持ち悪い」

「妙!!」

「正直な感想でしょ。変な事したらすぐに射殺してあげるから覚悟しておいて」


 そう言って妙は俺達の隣を歩いてどこかに行ってしまった。

 クッソ、あいつ本当に記憶ないんだろうな。記憶があったらマジで撃ち殺されてる。


「本当にごめんなさい!うちの妹がいきなりあんなことを……」

「え、ああ。別にいいですよ。色々驚きましたけど、タマ先生が謝る事ではないので」

「それでも姉として、一人の大人として子供に銃を向けた瞬間に叩き落としておくべきだった。まさか引き金を引くなんて……」

「それに関してはマジで驚きました。俺どこかで会って怒らせましたっけ?」

「いいえ、初対面のはずよ。あの子普段はテロリスト退治やら何やらでずっと前線にいるから会う事なんてないはずよ」


 そんな事してたのかあいつは……

 いい加減落ち着けばいいのに。

 でもその方があいつの性に合っているのも分かる。


「もう疲れた。分かんないこと考えるの疲れた。タマ先生はとりあえず妹さんに引き金を引かないよう言っておいてもらえませんか?こうして離れている時に引き金を引かれたら絶対に死ぬんで」

「それはもう二度とさせないから。次ぎやったら本気で説教するから」


 とりあえず今はこれでいいだろう。

 まぁ誰も見ていないところから狙撃されたらどうしようもないが、実の姉が注意するだけでも一定の効果があると思いたい。

 思いたい…………んだよな…………


 あいつ昔っから自分は理性的だ~って言いながらどっちかって言うと感情的に動くんだよね。

 最初に怒りや憎しみが来て、その後に理論武装してくるというか。まず自分が思った事を先頭に持って行くから過激な事をするときはマジで過激なんだよ。

 だからこそ超長距離からの攻撃だって平気でするし、ぶっちゃけあの銃で暗殺し放題だからこっちは止めようがない。

 寝てる間に撃たれて朝死んでましたなんて本当に笑えないぞ。


「遥。申し訳ないけどしばらくは彼のそばにいてあげて。リルもいるけど銃弾を止めるとなると手の動くあなたの方が適任だと思うから」

「分かりました。それでは彼の隣の部屋をお借りしますがよろしいですね」

「それくらい大丈夫。それから2人は先に修行に戻って。休んだ後は遥と組手をしながら今後の課題を洗い出してもらって。私は妙に説教してくるから」

「い、いってらっしゃ~……い……」

「…………」

「それでは道場に向かいましょう。休憩後に組手です」


 越して俺はいま最も会いたくない相手と出会ってしまったのだった。

 暗殺されないように気を張っておかないとな。

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