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転生者の贖罪  作者: 七篠
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試合のルール

 翌日、ロマンが言っていた通り近日中に私立リリンとの交流会がある事が朝のホームルームで報告された。そして各学年から1人ずつ交流会で戦う生徒を1人決める事となった。

 前世の頃なら血に家の多い奴がこぞって参加したがっただろうが、今は時代が違う。

 どちらかと言うとあまり歓迎されておらず、カエラなんて絶対に参加したくないと言う表情だ。


「どうしたカエラ?顔色悪いぞ」

「当たり前でしょ。もしそんなもんに参加してみてよ!私みたいな下級悪魔が上級悪魔に喧嘩売るなんてその後の未来真っ暗よ!!」


 ちなみに上級悪魔とは貴族の位がある悪魔達の総称だ。


「私みたいな一応悪魔の血を引いてるだけの小悪魔が上級悪魔に喧嘩吹っ掛けたらありとあらゆる攻撃仕掛けてくるわよ。経済制裁とか、不幸の手紙とか!!」

「悪魔から送られてくる不幸の手紙とかマジで呪われてそうだな」

「だから私は絶対にパス。絶対に出たくない」


 強い拒否反応にそれはそれで仕方ないかと俺は思った。

 悪魔の上下関係、貴族社会は絶対だ。平民が貴族に反抗するなんて自殺行為でしかない。


 人間社会の様に指導する者達がそのまま支配階級になったのではなく、初代魔王達が厳選した結果が名のある悪魔達なのだから貴族に対して反逆するとは魔王が決めたルールに違反すると言う意味でもある。

 そんな事をすればはぐれ悪魔として殺されるのは目に見えている。

 さらに言えば寿命がない悪魔だからそのルールを決めた初代達もまだ生きていたりするのでそいつらが気に入らない、と言えば全ての悪魔がその命により全力で殺しに来るだろう。


 そんな悪魔の面倒臭い所を知っているからか、誰も率先して手を上げたりしない。

 言ってしまえば貧乏くじを自分から引きに行くバカはいない。

 でもいつまでもこんな空気でいる訳にもいかないので俺は手を上げた。


「誰もやりたがらないみたいなので俺がやります」

「良いのですか?相手は悪魔ですよ」

「俺は特に勝っても負けても失う物はありませんから」


 ため息をつきながら大神遥に言った。

 大神遥も誰も手を上げたくないこの状況を見て仕方がないと思ったのか、そのまま俺が1年生戦闘科の代表として決定された。

 昼になるとカエラと桃華が言う。


「あんた本当にバカね。誰も手を上げたがらない貧乏くじを自分から引きに行くなんて、本当のバカよ」

「でもそのおかげですんなり終わったのだからまだいい方ですよ。でも本当にごめんなさい柊さん。押し付けてしまうような形になってしまって」

「別にいいよ。今の俺が今どこまで戦えるのかの基準作りにはなるし」


 平凡な人間の肉体として既にこれ以上鍛えても意味はない。

 無駄に筋肉を増やしても重いだけだし、筋力が上がってパワーが増したからと言ってそれ強いと言う基準にはならない。

 それに元々俺の理想の戦闘スタイルはどんな状況にも対応できるバランス型。ゲームのステータスの様にどこかに極振りして強みを出すよりも、生き残れる可能性が高い方を選ぶ。

 この辺は一回の戦いだけを見るか、継続して永遠と戦い続けるかどうかを見る視点の違いでしかないかもしれないが。


「ホント戦闘科の中では1番弱いはずなのに向上心は高いわよね。それだけは評価してあげる」

「そうですよね。みなさん強いのに柊さんは一切臆することなく戦いに向かっていますから本当に凄いですよ」

「別に。もっとヤバい連中を知ってるからそれよりマシなだけ」


 前世の頃は本当に化け物でチートな奴らばっかりいたからな……あの時に比べれば100%マシ。

 それに今の悪魔がどんな感じなのかも知っておきたい。前世の時と変わらないのか、それとも変わっているのか実感してみたいと言う気持ちもある。

 それにロマンから戦闘データが欲しいって言われてるし、良いデータ収集になるだろう。


「ところで交流試合のルールって何かあるのか?」

「あるわよ。と言うか知らずに手を上げたの?」

「あるだろうとは思ってたけどどんなルールなのかは知らん」

「それじゃ教えるけど、このルールは絶対守ってよね」


 カエラからそう念を押されてからルール説明をされる。


 使い魔の使用は禁止。

 気絶、あるいは戦闘不能による敗北。

 持ち込める武器は2種類まで。

 対戦相手を殺してはいけない。

 禁呪の使用は禁止とする。


「簡単にまとめるとこんな感じね。あとで大神先生から詳しいルールに関する資料とかもらうかもしれないけど、今はこれだけ覚えておけば大丈夫でしょ」

「解説ありがとさん。ところで禁呪に関する質問だが、天使式の魔術はどうなんだ?」

「多分使用しても問題ないはず。でも一応大神先生に来は聞いておいた方がいいわね。と言うか使う気?」

「当然。悪魔に天使式の術式は効果が高いからな。相手の弱点知っておきながら使わないほど俺は良い子じゃない」

「戦闘と言う状況で考えれば当然と言えますが……堂々と言う物なんですね」


 桃華は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 相手の弱点を突くのは大昔からの培われてきた技術であり、当然の戦法だ。

 しかし俺にとって気になるのは持ち込める武器は2種類までと言う点である。


「この持ち込める武器2種類ってのは魔導書も含まれるのか?」

「当然でしょ。魔導書は含まれませんだったらそれだけ大量に持ち込まれるじゃない。それに魔導書を使うのは人間だけじゃないわよ」

「え、まさか今どきの悪魔は魔導書使うのか?」

「使うわよ、特にお貴族様達は。金に物を言わせて買った自分じゃ使えない上級魔法や特級魔法が使える魔導書を持ち込んだ戦闘もあったらしいから。でも特級となると1冊につき2つか3つの特級魔法しか描かれてないと思いたいけど」

「うっわ。金持ちのボンボン攻撃かよ。悪魔の魔法へのプライドはどこやった」

「魔法と言っても悪魔の場合は魔術じゃなくて魔力を利用したイメージを反映させた攻撃の方がメインだから、魔導書とは少し違う気もするけど」

「確かに細かい部分は違うが……それでもそんな事してくる奴じゃないと良いな~」


 流石に上級の上、特級を受けきる自信はない。

 いや、呪いの力を使えば一発くらいは耐えきれるかもしれないが、それでもその魔法の性質しだいとしか言いようがない。仮に消失魔法だった場合は絶対に死ぬ。

 あ、でも消失魔法は禁呪だから使えないのか。俺も。


 そうなると幻術メインで補助に普通の魔法を使えるよう魔導書を製作するべきか?

 いや、とりあえず銃は装備したいからもう1つ装備するとすれば近距離用武器の方がいいような……


「あ~、意外と武器選びで悩みそう」

「それはそうですよ。柊さんは強いですが、武器の選択は重要です。これと言った理想があるのであればそうすべきですが……ない場合はどうしましょう?」

「それからそこにいる桃華の叔母さんも使えないからね。多分使い魔扱いされるだろうから、戦闘中に召喚したら即敗北決定ね」

「それくらいは言われなくても分かってる。でもそうなると合体魔法も使えないもんな……このルール俺に厳しくないか?」

「それでも手を上げたのはあなたでしょ。頑張りなさい」

「……他人事だと思いやがって」

「だったらあの時手を上げずにやり過ごせばよかったのよ。どうせ無理やりにでも決めないといけないんだから、先生の中で1番強いと思う生徒を推薦するか、くじ引きで決めるかだったでしょうね。手を上げなければ」


 へいへい。そうでございますか。

 とりあえずそう思いながら何を武器にするか考えるのだった。

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