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転生者の贖罪  作者: 七篠
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武器を求めて発明科へ

 会長にぼっこぼこにされた次の日。俺は悩みながら廊下を歩いていた。

 これ以上人間の身体能力だけで戦っていくのは非常に難しい。かといって本当に悪魔や妖怪の体の一部パーツを奪って強化すると言うのはあまりにも難易度が高すぎる。

 どこかの戦隊物の合体ロボや、プラモをごちゃまぜにしてオリジナルロボを作る訳ではないのだからそう簡単にはいかない。

 どうても骨格や筋肉など自分が使いたいと思えるパーツに巡り合えることが非常に難しいし、他のパーツを組み合わせるとなるとさらに難易度は上がる。どこかの動物を好きに改造するキメラ研究とは違うのだ。俺自身が使う新しい体の制作なのだから俺好みでなければただの巨大な生ごみを作るだけになってしまう。


 それに単純にパーツをどこから入手するのか、手に入れたパーツをどうやってくっつけるのか、課題は大きく問題は多い。

 仮にドナーの様に手足をくっつける事が出来たとしてもその先になる新しいパーツを動かすためのリハビリなどに時間を使い、逆に弱体化するリスクだって存在する。

 そしてその手足をくっつけてくれる医者に心当たりなんてない。

 前世の頃にだってそんなマッドサイエンティストの知り合いはいなかったし、出会っていたとしてもそれは本当に倫理観だか道徳をどこかで頭のネジと一緒に落っことしてしまったような連中だけだ。


 そんな連中とどうコンタクトを取れと言うのか。

 前世の頃なら裏側の連中にもそれなりに顔がきいたが、現在はその伝も使えない。


 そうなると次に考えるべきは武装化。つまり俺の武器をどこかで調達するしかない。

 どこかから体のパーツを集めて来るよりもかなり真っ当な考えであり、リスクもだいぶ減る。

 しかし俺が前世の頃に世話になった連中も伝手がないし、それ以上に一癖も二癖もある様なキャラの濃い職人気質ばかり。今の俺が武器を作ってくれと頼みに行ったところで門前払いを食らうのは目に見えている。


 となると……魔導書同様に自作するか?

 いや、そうなると本当に面倒くさい。

 様々な武器を使えるように訓練して来たし、その整備の仕方も知っている。しかし一から武器を製作するとなると話は全然変わってくる。

 素材の調達、武器を作るための道具、その道具を配置するための部屋などなど、必要な物を上げて行ったら切りがない。


 そもそもそれらを作るための資金だって必要だ。

 アルバイトもしていないお小遣いを持っている高校生にそこまでの財力はない。あとついでに母親はアルバイトに賛成していないのでアルバイトをすると言うのはほぼ無理である可能性が高い。

 それにアルバイトを始めるとなると鍛える時間も少なくなってしまう。

 それだけはどうしても避けたいが……そうなるとやっぱりアルバイトをする余裕がない。


 まぁこの事はもっと幼い頃から分かっていた問題ではある。

 人間と言う弱い種が生き残れたのは道具や武器と言う物を作り出す事が出来たからだ。

 寒い地域では動物の毛皮をはぎ取り体に巻き、熱ければ木の皮や葉を使って服を作る。そんな感じで環境に適応していき、効率的に狩りが出来る用武器も作ってきたからこそ強者達に食いつく事が出来てきたことは歴史が証明している。


 自力で調達できないとなると、やはり学校にある質の悪い刀をいただくか、あるいはその辺で買った金属製のバットなどにオーラを纏わせて使用するのが現実的だろう。

 学校の備品を手に入れるのは最終手段として、とりあえずスポーツ用品店で金属バットを買って武器にしてみるか。それともゴルフクラブの方が攻撃力あるのかな~?柄が細い分耐久力は低いかも?


 なんて考えていると小柄な女子生徒が何か張り紙を張ろうとしていた。

 目立つようにボードの真ん中に張ろうとしているようだが苦戦している。ただ単に背が低くてなかなか目立つところに張る事ができないみたいだ。


「代わりに張ってやろうか?」


 俺がそう聞くと女子生徒がびくっと肩を震わせて驚きながら俺を見上げた。


「え、あ、お願いします……」


 彼女はそう言って紙を俺に渡した。

 受け取ってボードの中心に張り付けてから張り紙の内容を見る。


『アルバイト募集中。内容、発明科ロマングループが作ったアイテムの実用実験。報酬は要相談』


 これまだやってたのか?


 発明科、この学校内にあるいくつかある特殊な科であり主に物づくりを得意としている。物作りの幅はもの凄く広く、美術、芸術も含まれているし、アプリ開発なども行っている。

 その中でも最も多いのはロマン武器だ。

 実用性を無視したアニメに出てくる武器をそのまま再現してみましたっとでも言いたそうな武器ばかり作っているグループもあったくらいだ。もちろんそんな趣味前回のグループだけではなく、普通に生活を向上するための日用品開発だったり、真っ当な武器を作るために活動しているグループだってある。


 そしてなぜアルバイトと言う形で張り紙を出しているかと言えば、研究する事は得意でも武器を上手に扱えるわけではない者の方が圧倒的に多いからだ。

 ぶっちゃけそれはそうだろうとしか言いようがない。

 鍛冶ができるからと言って刀を使って何かを斬る事が得意とは限らない。銃を作るのが得意だからと言ってその反動に耐えられるとは限らない。

 そんな感じなので武器の扱いが出来る戦闘科に武器のテストや実験をアルバイトとして頼む事が前世の頃からあったのだ。


「この作ったアイテムってのは具体的になんなんだ?」

「あ、えっと、ロマングループが作った新型の武器です。主に銃とかが多くて、あとは機械を利用したものも多くてかっこいいのが多いです!」

「ふ~ん。近接武器は?」

「もちろんご用意しています!その……もしかしてロマングループのこと知らないんですか?」

「知らないな。有名なグループなのか?」

「そ、そんなに有名なグループじゃないですよ~。なのであまり応募してくれる人はいなくて、良かったら協力してもらえませんか?」


 そう懇願こんがんしてくるので俺は頷いた。


「バイト代欲しいからな。ちゃんと現金で出るんだろうな?」

「お金に関しては問題ありません。満額現金でお支払いいたします」

「それならいいや」


 俺はそう言って彼女の後ろをついていく。


 ちなみに発明科は戦闘科よりも遠い所に校舎が建てられている。

 単に製造するための機械を置くためとか、危険な素材を扱う事もあるのでそう言った素材や危険な実験を行っても問題ないように離れたところに校舎を作り、新しい武器の開発をしたり練習を重ねている。

 そんな離れた校舎の中でも特に遠い校舎の端っこに案内された。


「先輩!!アルバイトの方連れてきましたよ!!」

「ほう。それは行幸。では早速実験を始めようではないか!!」


 安っぽい回転イスに座っていた人がそんな事を言いながら立ち上がった。

 声から察するに女性だとは思うが研究開発の邪魔にならないためか髪は短め、白衣を着てサングラスのような物を身に付けているので性別がいまいちわからない。

 多分女だと思うが……機械油か薬品か、様々な臭いが混じっていてうまく特定できない。


「あんたがロマングループの人?」

「その通り!私は発明科3年のDr.ロマン!!専攻は空想科学!!どうだい!!これで君も自由に空を飛び、恐ろしい相手と戦ってみたくはないかね!?」


 そう言ってボタンを押して現れたのは某アメコミヒーローのスーツだった。


「いやアイアンマンかよ。実験に付き合う代わりにバイト代の交渉に来たんだが?」

「それもそうだね。まずは報酬と今回実験に使用してほしいベイビーたちについて説明しないといけないな」


 何だから随分とキャラの濃そうな奴と知り合ってしまった。

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