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転生者の贖罪  作者: 七篠
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本当に週一で大丈夫なのか

 こうして俺は自力で鍛える限界を感じ手を借りる事にした。

 と言っても週に1回だけであり、ぶっちゃけ真面目に鍛えると言うよりはクラブ活動か部活動のような感じがする。

 学業優先、職場優先と言うのはありがたい話でもあるが本当に強くなれるのかどうか結構不安でもある。

 妹にも仕事があるだろうし、俺達候補生にかまいっぱなしと言う訳にもいかないんだろうが……本当に週1で強くなれるのか?


 そう考えながらいつも通り放課後の自主練をしながら考えていた。


「ひぃ、ひぃ、はぁ……」

「カエラ~無理すんなよ~」

「カエラちゃん大丈夫?」


 そんな自主練に混じってきたのがカエラと桃華。筋トレや体感トレーニングに関しては見ているだけの2人だったが、最期のランニングには付いて来るようになった。

 桃華はただ見ているだけなのも暇だからっと言う理由だが、カエラは普通に体力作りをしたいそうだ。何でも人間の血が濃い事で体力や筋力などは人間とあまり変わらないらしい。

 それから戦闘中は魔力で様々な物を補っているのでその消費を少しでも少なく出来ればっと言う考えで参加した。

 だがその考えも浅はかだったのか、もう既に息切れを起こし肩で息をしている。

 その姿は普通に普段から運動をしていない人の動きであり、学校の戦闘科に所属しているとは思えないありさまだった。


 ちなみに桃華の方は普通に走れている。

 元々狗の妖怪なのでただ走るだけではそんなに疲れないし、体力だってかなりある。

 今は表状態でありながらこれだけの距離を息を切らさずに走っているのだから血統の良さと才能が見え隠れしている。まぁリルと大神遥を知っていればこれくらい普通に属するんだろうが。

 ちなみにペースメーカーはリルだ。

 俺の体力を強化できる速度で少し前を走っている。振り返る事なく俺の呼吸音や足音でどれくらい離れているのか分かっているので振り返る必要がないのだ。

 むしろカエラがヘロヘロになっているので俺に合わせるか、カエラに合わせるか迷っている様子を見せる。


「今日の所はカエラに合わせるか」


 俺がそう言うとリルは少しずつ速度を落としていき、ちょうど自販機の近くにあるベンチの前で止まった。

 俺は軽く出ている汗を腕で拭い、熱くなった体を襟元をパタパタさせて体を冷やそうとする。それに比べてリルと桃華はケロッとしているのだから基礎体力の差を見せつけられている。

 5分くらい遅れて俺達の元にやって来たカエラ。もう完全にヘロヘロでこれ以上走れそうにない。


「今日はここまでかな……歩いて学校まで戻るか?」

「…………いい。…………歩いて帰る……」


 完全にグロッキー状態のカエラにここまで体力がなかったかと俺は思う。

 狩りにも戦闘科に所属しているのだからこれくらいのランニングには付いてきてほしかったな。


「帰るってバックとか色々学校におきっぱだろ。それにほら、今だって制服じゃなくてジャージだし」

「………………仕方ないから学校による」


 本当に、心の底から仕方がなさそうに言う。

 本当は疲れてすぐに帰って寝たいとかそんな事を考えているんだろう。

 まだまだ余裕であるリルと桃華は物足りなさそうだ。


「カエラさん本当に体力がなかったんですね。大神家だったらもっときついですよ」

「きついって……どんな?」

「まず走るのは私有地である山の中です。当然舗装なんてされていませんし、雨でぬれていたり石や岩でかなり走りにくいですから。本当に山の中を突っ切るような事をして体力作りをしますから」


 桃華の説明にリルも吠えて同意する。

 あの山そういう目的で使われてたんだ。道理で獣道みたいなところが出来てたと思ったよ。あれ修行中の人達が使っている間に獣道みたいになってただけだったのね。


 そんな事を思い出しながら歩いて学校に戻る。

 カエラは完全にアウトで戦闘科なら誰でもいつでも使えるシャワー室で汗を流してから帰ると言っていたが、あまりにもフラフラだったので桃華がシャワーの面倒も見ると言っていたので俺とリルは先に帰る事にした。

 最近のリルは影から出て一緒に歩く事なども多くなり、護衛と言うよりは番犬の方が正しいような気がしてきた。

 前世むかしの記憶はないはずなのに本当に何でここまで懐いてくれているんだろうか。


 リル、これはあだ名だ。本名は大神(かおる)

 俺と出会ったばかりの時は精神的に不安定であり、誰にでも噛みつく狂犬だった。

 その理由はリルの血筋が問題だった。


 リルはいわゆるクォーターと言う奴で、祖父が外国人なのである。

 より正確に言うと海外の狼の魔物であり、種族名はかの有名なフェンリルの子孫。北欧で神様を食べる狼の子孫と日本にはびこる狗の血が混じって生まれたのがリルと大神遥、そして2人の母親だ。

 母親は狗神としての血が濃く、他の狗神と変わらなかったのだがリルはどういう訳かフェンリルとしての血が非常に濃く受け継がれてしまった。

 そのせいか群れを好むはずの狗なのに独りを好み、どこに行っても勝手に行動してしまう。

 俺と出会った時は立派な不良となってしまい手あたり次第強そうな奴と喧嘩する生活をおくっていた。


 最終的には俺と出会い、俺がリルの主になる事でリルは精神的に安定し格段に強くなった。

 何故精神的に不安定だったのかと言う説明についてだが、これもフェンリルの血がそうさせていた。

 フェンリルは元々神様、悪神ロキに手によって生み出された魔物だ。ロキの命に従うよう生み出した時から主従プログラムを組んでいたので主が居る事が前提だった。しかし狗神の社会では上下関係はあっても主従関係はない。

 最初から本能レベルでプログラムされていた主と言う存在がいない事で精神的に不安定になってしまっていた。


 だからリルにとって主は必要不可欠。前世の頃無理矢理、理事長に主の権限を渡したのはそのため。

 もし仮にリルにまた主がいない状態になってしまったらきっと喧嘩に明け暮れていたあの頃に戻ってしまっていた事だろう。

 俺が死んだあと主の部分が空白のままだったらと思うと非常に恐ろしい。


 いつもより早く帰って俺とリルは一緒に風呂に入って汗を流し、家族みんな揃って飯を食う。

 もうリルが居るのは当たり前になっており、妖怪である事も最初から説明しているから食う物も一緒。妖怪に玉ねぎだろうがカカオだろうが食べたって病気にはならない。

 後は歯を磨いて寝るときになると必ずと言っていいほどリルは俺の隣で長くなる。

 そんなリルを抱き枕のように抱きしめると尻尾が嬉しそうに揺れる。

 今度の日曜日はどうなるのか、少し考えながら静かに眠りに落ちた。

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