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転生者の贖罪  作者: 七篠
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何故彼らは戦いを選んだのか

 授業の合間の休憩時間に俺はNCDのチャットサイトを眺めていた。

 書かれているのは基本的には普通の学生同士の会話のように見えるが、所々闇を感じた。

 何気ない会話の中で突如現れる現政府や世界への恨みのような言葉が現れる。監視されているのが嫌だ、自由がない、いつまでこんな生活を続けなければならないのか、と言う不平不満であふれている。

 そこからヒートアップして殺したいとか消したいとか物騒な言葉が飛び交う。


 俺はただ眺めているだけだがこのチャットに書き込んでいる人達はかなり年齢層がばらけているように感じる。

 学生から社会人まで幅広く、呪いにかかったせいで退職させられたと言う記述も残っていた。

 他にも施設から出るまでに何年も時間がかかり、同級生だった周りの人達がみな社会人になっていて驚いたと言う書き込みもある。


 呪いによって人生をめちゃくちゃにされた人達は俺が思っているよりも多いのかもしれない。

 そしてその怒りがさらに大きな呪いになりそうのなっているのか……


「何見てるの?」


 チャットを見ているとカエラが俺のスマホを覗いてきた。


「裏サイトだ。お前らの事をボコボコにしたNCDって連中のチャットサイト」

「え、それマジ?ちょっとサイト教えて」

「無理だぞ。これダークウェブ内だから入れるよう調整しないと見つけられない」

「うわ、危険な事してんじゃん。スマホハッキングされても知らないよ?」

「いくつかのパソコンを経由して覗いてるから大丈夫。あとファイヤーウォールもいくつか用意しておいたし」

「へ~、それって自作?」

「そんな訳ないだろ。普通に購入したファイヤーウォールだって」

「それもそうか。でも気を付けないとダメだよ。それにしてもダークウェブか。実際に繋がっているのも初めて見たし、使っている人を見るのも初めて」


 そう言って興味深そうに俺のスマホを覗く。


「それで、どんなこと書いてあるの?」

「基本的には龍化の呪い被害者たちによる不平不満大会。多分だけどチーム名はここからとったんじゃないか?」

「それじゃあいつらも呪いの被害者だったって事?」

「おそらく。だからと言って喧嘩売ってきたら普通に殴るけどな」


 被害者ぶるなら最後まで被害者のままでいて欲しい。

 被害者を名乗るのであれば最後まで怯えたふりでも何でもいいから弱者であり続ける方がよっぽど賢い。

 攻撃に出ればただの被害者のままではいられないのだから攻撃しない方が絶対良い。

 それなのに攻撃に出るという事はそれくらい怒っているという事か、あるいは不条理を訴えたいだけなのか、俺には全く分からない。

 だがあの時の奴は宣戦布告であると理事長に、最強の存在に喧嘩を売った。それだけ怒りが溜まっていたとみる方が良いのかもしれない。


「何か面白いこと投稿されてないの?」

「見る限りはない。でも本当にヤバい事をしようとしている連中がこんな分かりやすい所で情報のやり取りなんてしないだろ。最低でも自分達専用の情報のやり取りができるツールがあると思うべきじゃないか?」

「その場合絶対ただの不良グループじゃないでしょ」

「え?頭のいい奴が1人でもいればできるだろ?」


 最低でも前世で不良やってた時はそういう連中めっちゃ多かった。いわゆる知能担当、作戦参謀みたいな奴は最低でも1人はいた。

 あるいは様々なアイテムを作る事ができる奴がいるとかなり面倒になる。

 それがスマホのアプリとかになってると思うとやっぱり俺は年寄りになりそうだな。俺だったら既にあるものを利用するのではなく、新しい物を一から作らないといけないと考えただろう。


「どっちにしてもそれただの不良グループに収まらないから。自分で連絡用アプリの制作とか普通出来ないって」

「それに関しては同感。でもこっちもそろそろ動いた方がよさそうなんだよね」

「何で?」

「ほらこの投稿。多分俺達が相手した時の投稿だ」


 それはうちの学校にNCDの連中が攻撃してきた時の日にちに投稿されたものだ。

 内容は負けたと言う事実だけではなく、彼らを率いていたと思われる男を尊ぶ投稿と戦争の始まりだと投稿された文字。

 その後はまた通常の愚痴大会になっているがNCDの動きのような投稿は一切出てこなくなった。


「あの時の事思い出すと今もムカつく」

「それは油断してたお前達も悪い。まぁ流石に呪われた奴が出てきて負けるのは普通だと思うけどな」

「ヒド!!と言うかよくクラス内で言えたね」

「最低でも逃げだして捕まらないようにするべきだった。勝てないと一瞬でも思ったら逃げる方が賢いと俺は思ってる。捕まって人質にされるのは何が何でも避けるべきだったな。あれじゃ最低だ」


 俺がそうはっきりと言うとカエラはうわ~っと言う表情を作る。

 そりゃこんな発言をすればクラスのみんなを敵に回すし、言うとしても人目のない所で言うべきだ。


「流石に最低はないでしょ……」

「いや、はっきり言わせてもらうけど最低評価だ。人質に取られるって事は味方の動きをかなり制限させられる。それに魔法やら妙な術で操られるような事があれば戦場はさらに混乱するし、普通はあんな簡単に救出される事はない。今回お前達が助かった理由はあいつらが人質をどこかに隠したりせず堂々と先生達の前に連れてきたからだ。もし仮にお前達がどこかに隠されて、抵抗したら1人ずつ殺していくと言われたら理事長達だってあそこまで迅速に動くことは出来なかった。隠れている場合探し出し、どうやって救出するか考えるところから始めないといけない。だからあいつらはバカな行動をとった。いや、人質にする理由がないから助かったと言う言い方の方が良いか」


 俺がそう言うとカエラは何も言えなくなり悔しそうにする。

 でもそんなときに桃華は俺の机に座って言う。


「それは認めるけどさ、だからってここで言わなくてもいいじゃん。血の気の多い子は何人もいるんだよ」

「お前裏の方だな」

「そうだよ。これからは裏桃華とでも呼んで」


 軽い感じで言う裏桃華は質問を続ける。


「でも今の私なら呪い殺すことだってできると思うけど?」

「今は今、あの時はあの時だ。あの時本当に殺されそうになったら裏桃華だって出てきていた可能性は高い。死にたくないから他の奴を殺すってな」

「ヒラにとっては嫌?」

「全然。そんな行動今までどれだけの人達がやって来たと思う。殺される前に殺せなんて古臭くなるくらい使われてきた言葉だし、実際にその通りだ。殺す事をためらって殺されたらそれこそ無駄死にだ」

「だよね~。ヒラはそういうのにも理解があってよかったよ」


 平然と口に出された殺す殺されると言う言葉にカエラ達は若干引いていた。

 まぁこれだけ殺す殺されると言う物から遠い世界になりつつあるのだから、クラスメイト達の反応が現代らしいだろう。

 おそらく俺の前世の頃が最後の危険な物が混ざり合った時代だったのかもしれない。

 世界情勢としてはあまり変わっていないのかもしれないが、さすがにそればっかりは現在の俺では分からないし調べきれない。


 ヤドリギにも手伝させているが始めたばかりなのであまり重要と思る情報はない。

 なんて思っているとヤドリギからメッセージが送られてきた。

 それを見た俺はにやりと笑い、さっそく今夜行くかと決めた。

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