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転生者の贖罪  作者: 七篠
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つながりが強まった

 授業中板書しながら昨日の契によって得られた感覚を確かめていた。

 契によって得られた理事長、リル、リーパとの繋がりは交わった事により強力な物へと進化している。

 契約だけではない魂同士の繋がり、これにより相手が今現在どのような状態で状況なのかある程度把握できる。

 どうやら三人とも起きたばっかりでようやく活動し始めたようだ。

 そのため今日の護衛は琥珀だけだが、たまにはこんな日があってもいいだろう。


 そして今日の実戦授業で少しだけ確かめてみる。


「ヒラ!行くぞ!!」

「おう。頼む」


 裏桃華との組手、ここで俺はリルの力を魂の繋がりを利用して疑似的な纏を発動する。

 俺のオーラはリルと似た感じだが、キチンと合体した状態よりもオーラが狼っぽい感じで炎のように揺らめいている。

 それでもリルの爪を再現した攻撃はほとんどの物をあっさりと切り裂く。


「あっぶな!ヒラ!!ちょっと危なすぎないか?」

「ああすまん。ちょっと確かめてみたいからもう少しだけ避けてくれ」

「全く。全然本気じゃないからいいけど、結界も斬られて被害を出さないようにしろよ!」


 授業ように張られている結界も紙を切るようにあっさりと突破してしまう。

 だがその結界の切り口も少し不格好でギザギザしている感じで、スパッと切った感じがしない。

 やはり俺の力だけではまだ不完全である事が証明された。

 俺の中にあるリルの力をもっと引き出せば完全な纏の状態と変わらないレベルにまで引き上げられると思うが……授業でそこまでする必要もないだろう。


 そしてリーパの力も借りてみたいが……強力な分俺への反動が激しいんだよな……

 学校の授業レベルで見せる必要もないから今度の仕事の時にでも確認してみよう。


 そして理事長の力だが……これも使ったらどうなるか分からない。

 前世の頃は肉体的にもかなり特殊だったため、無限の力を宿してもある程度活動する事が出来たが今は普通の人間の身体。下手をすれば無限の力を使用した瞬間爆散してしまうかもしれない。

 有限の肉体に無限の力を注ぎ込むとはそういう事だ。

 だから無限の力を使いこなせるようになるとすれば、ウロボロスの眷属になる事が最も現実的だが、その場合理事長や涙に絶対服従となり逆らう事は絶対に出来なくなる。

 他にも理論上無限の魔力保有量を持っていたり、肉体を保持する事ができれば可能と言われているが……神でも一瞬程度の時間しか保持できないと聞くと本当に机上の空論である事が分かる。


 それにしてもリルの力に関してはかなり効率が上がっている。

 正確に言うと電波の回線がよくなった感じと言うか、伝導率がよくなったというか、今までよりも力の調整がよりスムーズに行えるようになった。

 とりあえず最小限の力だけでどこまで戦えるか確かめてみるか。


「ヒラ!そうやって人の力ばっかり借りるのはズルくないか!?」

「弱っちい人間なんだからこれくらい許してくれよ」

「弱っちい人間が狗神に張り合えないって!!」


 何て言い合うが裏桃華の呪い付きの攻撃は相変わらずキツイ。

 そして出力を最小限にしているから爪で当たったところでないと切れないし、身体能力も普通の人間並み。

 ワンコを相手に体力勝負で勝てるわけがない。


「そこまで」


 大神遥の言葉により組手は終わった。

 俺は大きく息を吐き出しながら呼吸を落ち着かせていると裏桃華が近づいてきた。


「なんか今日は全然力出さないな。何でだ??」

「ちょっと確かめてみたい事があっただけ。最小限の出力をどれくらい維持できるのか実験してみたかったんだよ」

「そういうのって普通全力の状態でやるんじゃないのか?あたしはそう教わったぞ」

「それはどう強くなるかの基準によって変わるな。俺の場合戦えなくなったら本当に殺される可能性が高いから少しでも魔力を維持できるように省エネでやりたいわけ。多分そのやり方を教えてくれた人は自分が勝負を決める事を考えていったんじゃないか」

「ふ~ん。よく分かんないけどおばちゃんはどこ行った?」

「リルなら今日寝坊したから置いて行った。今俺の護衛は一応妖狐だけ」

「随分珍しいんだな。いつもはおばちゃんがずっと張り付いてるのに」

「そんなときもあるさ」


 あいまいに返しながらそう答えるしかなかった。

 馬鹿正直にエロい事して寝かせなかったなんて言えるか。


 そんな感じで午前中の授業が終わり、今日は弁当持ってこなかったから購買で買おうと思っていると、リルが弁当の入った袋を加えて姿を現した。


「リル。その弁当どうした?」

『ご主人様のお母さんが持って行ってって渡してくれた』

「そうか。ちなみにリーパは」

『まだ眠いから寝てるって』

「あいつらしい。ありがとうなリル」


 そう言っていつも通り撫でたはずだが、リルは一度大きく身体を震わせたかと思うと身をよじらせる。


「どうした?」

『あ、いや、その。昨日の事思い出しちゃって……』


 恥ずかしそうに言うリルに対してこの場では何とも言えなかった。

 ここは学校で誰がどんな風に聞いているか分からない。だから具体的な事は口に出さない方が絶対に良い。


「そうか。それじゃ一緒に食おう」

『あ、私朝ごはん遅かったからみんなで食べて。私は影の中に居るから』


 そう言ってリルは俺の影の中に潜り込んでいく。

 寝起きだからか、それとも昨日のが原因で体調を崩したのか、どちらなのか分からないが無理に起こす必要はないだろう。

 リーパのようにまだ眠いだけかもしれないし。

 そう思いながら昼飯で金を使わなくてよかったと思いながら席に戻って弁当を開ける。

 そこに自然とカエラと桃華が机をくっつける。


「私達も一緒でいいでしょ?」

「構いませんよね?」

「あ、ああ。何も問題ない」


 何故か二人から妙な圧を感じる。

 好奇心と言うか、強い興味を引いたというか、とにかく今の俺は狙われた獲物のように意識を集中されている。

 何でだろうと考えながらも弁当を食べる。

 そしてカエラは俺の事をじ~っと見てから言う。


「何と言うか……何かあった?」

「何かってなんだよ」

「いやなんとなく。リルさんと雰囲気が良いな~っと思ったから聞いてみただけ」

「良い雰囲気って前から仲良くしてただろ」

「でも今日は特に距離が近いというか、何と言うかね」

「そうか?」


 あまりにも抽象的な話しなのでよく分からない。

 多分俺達が一線を越えた事でそんな風に見えるようになったと予想は出来るが、あの少しの時間でそれを感じるほどの雰囲気を出していただろうか。

 そう思っていると桃華も迷いながら言う。


「その……大叔母様から、その……」

「その?」

「……その、匂いが……」

「匂い?匂いがどうしたのよ??」


 あ~……多分リルから俺の匂いがするって言いたいんだな。

 普段から一緒に居るからと言えばそれまでだが、今まで以上に俺の匂いがリルに染みついていたんだろう。

 多分風呂にも入っただろうが……それでは落ち切らなかったのかもしれない。


「……匂いが、濃くって……」


 その言葉にベレトが俺の事を更にじっと見る。

 そして桃華が顔を真っ赤にしている事からベレトも顔を真っ赤にした。


「まさかあんた……」

「エロい事を予想しているんだろうがそんな事はないぞ。ただ寝汗のせいで匂いがいつもより染みこんだだけだろ」

「それ本当?昨日そんなに熱くなかったと思うんだけど……」

「昨日は本契約で色々忙しくてさ、そのせいですぐに寝付けなくてゴロゴロしてたのが原因だと思う」

「それだけで桃華が赤面するようなこと言う?」

「ぬいぐるみ感覚でずっと抱きしめてたんだよ。すっげー気持ちいいから」


 少々強引かとも思ったが、納得はしていないけれどその言葉を信じるという感じで渋々引いた。

 その話を聞いただけでも桃華は顔を真っ赤にしているから元々ピュアなんだろう。

 こうなるとエロい事をするのは本当にたまにくらいがいいのかもしれない。

 羽目を外し過ぎないように気を付けないと。

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