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転生者の贖罪  作者: 七篠
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腕試し

 リルが俺の護衛として一緒に居るようになったが俺の日常は変わらない。

 今日の放課後も変わらず古武術の型をしたり体感、筋力トレーニングを行いながら入院する前の状態にまでまず戻そうとしていた。

 その様子を見守るリルとカエラ。カエラは呆れたように言う。


「本当に生きてるとは思わなかった。あれだけの大きな穴を空けられて生きてるってどんな生命力してるの?」

「どんなって言われてもな。とりあえず生きてたことに喜んで欲しいかな」

「あんなヤバいもん見て素直に喜べないわよ。誰かの内臓が飛び出した状態なんて初めて見たわよ。おかげで少しの間お肉が食べれなかった」

「それは申し訳なかった」


 そう言いながら筋トレをして以前の筋力に戻そうとトレーニングを繰り返す。

 やっぱり入院してしばらく体を動かさなかっただけでちょっと筋力が落ちてる。退院した日から軽い筋トレからやり直していたがそうすぐには戻らない。

 この調子だと1週間ちょっとは時間がかかりそうだな……


「ところでその子は?ペットなんて飼ってたの?」

「その子はリル。理事長が俺に用意してくれた護衛だと」

「え、何で護衛なんて用意されたのよ」

「俺が何度も龍化の呪いにかかった人と戦ってるから念のためだと。また戦いそうだから心配なんだってさ」

「……ねぇなんか変じゃない」

「変って言うと?」

「だってわざわざ生徒1人のために護衛を用意するなんておかしな話でしょ。それだったら学校全体の防衛力を上げるとか、もっと他のやり方にするでしょ。それなのに君1人に護衛を付けるって明らかに変でしょ」


 カエラの言葉通りだ。

 おそらく理事長たちは裏で何を確信し、俺を見張る事も目的にしていると考えた方が自然だ。

 でもそんなリスクを負ってでも俺はリルと一緒に居なければならない。


「だとしても俺には選択肢がない。呪われた連中に対して俺はあまりにも無力だ。だから外部から力を借りれるのであれば助かるし、一緒に戦ってくれる奴がいれば心強い」

「まだ戦う気なの!死にかけたのに!?」

「襲われて逃げられそうになかったら戦うしかないだろ。俺だって平穏に生きられるのであれば生きていきたいと思ってる。でもそれを環境が許してくれなかった、ただそれだけだ」

「それは……そうかもしれないけど……」

「それにリルは強いぞ。最低でも俺と戦った呪われた連中と比べればかなり強い。今は組手も出来ないほど圧倒的に差があるがいつかは超す」

「それって何年くらいで?」

「…………爺さんになるまでには超えたいな」


 今の俺ではそれくらい時間を掛けなければ勝つことは出来ない。

 ただ前の時と同じように呪われてしまった人達に勝つと俺の力が増している。これはもう確定と言っていい。

 理屈や理論に関しては全く分からないが俺の場合呪われた人達に勝つと俺の力が上がる。

 その証拠として魔法を使う。


「アイスニードル」


 コマンドだけで魔法を使ったがその威力は普通だ。

 普通。ついこの間までは魔導書を用意したり色々小細工をしなければ通常の威力すら出せなかったのに、今では普通の事を普通に使う事が出来ている。

 原因を考えれば当然呪われてしまった人と戦った後なのだから何か関係あるのだろう。


「お。ようやくまともに魔法が使えるようになったんだ。ようやくずっと体内魔力を循環させてた成果が出たって所かな」

「多分な」


 カエラが勝手に納得してくれたのでそれに乗っかっておく。

 ただこう戦闘が多くなってくると自主練だけではなく対戦相手が欲しい。いわゆる組手の相手が欲しい所だ。

 だが俺にはそんな事に付き合ってくれる友達なんていないし、伝手もない。

 カエラなら協力してくれそうだが毎回マックを奢るのも金銭的につらい。

 そうなると……


「あそこまだ使えるかな?」


 前世の学生時代によく通っていたところはまだ使えるか確かめてみようと思った。


 ――


 土曜日の昼、軽い散歩と称して俺は家を出た。

 もちろんすぐ隣にはリルがおり、ある種いつも通りの光景だ。


 だが今日の目的地はいつもの本屋でもなくゲーム屋でもなく、とある裏路地だ。

 前世の頃本当に腐った連中がたまり場として使っていた不良達の巣窟は今も変わらないのかと様子を見に来た。

 人の姿は見えないが、周囲から視線を感じる。リルも好意的な視線ではないと分かっているからかかなり警戒している。

 そんな危険地帯に自分から入り込む俺は本当にバカな人間だろう。こういう裏路地にはただの不良が一番まともで、本当に悪い連中は姿を現すことなくこちらに危害をくわてくる。


 慣れた足取りで歩いていると、いかにも不良という感じの男達3名が俺に声をかけた。


「おいお前、見ない顔だな」

「こっから先に行きたかったら通行料置いてきな」

「じゃないと……分かってるよな」


 なんて言う3人につい笑みがこぼれてしまう。


「あ?何笑ってやがる」

「調子乗ってんじゃねぇぞこら」

「状況分かってまちゅか~」


 そう馬鹿にしたような言い方をしているが本当にバカにしているのは俺の方。

 この程度の雑魚相手ならリハビリにちょうどいい。


 俺は無言で目の前の奴の腹に思いっきり拳を叩き込んだ。

 腹を抑えて下がる男に仲間が助けようとした大きな隙を見て2人の後頭部を掴み、2人の頭を鼻からぶつかるよう調整しながらぐしゃりと挟んだ。

 2人の鼻は砕け、鼻血を出しながらよろめくがさらに2人の顔面に頭蓋骨を割る勢いで顔面に拳を一発ずつ入れるとあっという間に崩れ落ちた。


「……思っていたよりも質が良くなったか?それともまだまだ浅いからか?」


 前世の頃はこの辺でもかなり危険地帯であり、馬鹿でも腕っぷしには自信がある連中がいるはずだったのだが……やはり時代の流れで悪いこはそんなに多くなくなったのかもしれない。

 潰した3人から現金だけを奪い取り、残りは放置して次の相手を探す。

 リルは呆れながらも護衛と言う立場だから仕方がなさそうについてきており、テンションは明らかに低い。

 また分かりやすい不良5人組。鼻や耳にピアスを付けた馬鹿丸出しの連中を発見する事が出来た。


 日本語を言っているのは分かるが……巻き舌が凄すぎて何を言っているのかさっぱり分からない。

 でもデブが拳を振り降ろしてきたのでその腕をつかみ投げ飛ばし、転がって仰向けになったところで首を踏みつぶしダメージを与える。

 これくらいで泡を吹くデブを見下ろしていると他4人も武器を持って俺に襲い掛かる。


 全員そこら辺で拾ったと思われる鉄パイプを装備しており、同時に鉄パイプを振り下ろしたがここで使うのはデブガード。倒れたデブを無理矢理起こして盾にした。

 それにより3人が慌てて鉄パイプを振り下ろすのを止め、1人が勢いを止めきれず軽くデブに当たったが俺はこのデブガードを他ただ防御技で止めるつもりはない。

 デブをそのまま押してぶつけさせて倒れさせる。気絶した人間と言うのは意外と重いし、持ってみた感覚で100キロ以上あったデブの下敷きになれば脱出は難しい。


 このデブの下敷きになったのは一番近くにいたデブを殴った男であり、目論み通り下敷きになって1人動けなくなったところで残り3人の内真ん中に居た男の腹部に強い蹴りを食らわせた。

 そしてデブが用意していたと思われる鉄パイプを拾い残り2人の不良の顎を砕いた。だが気絶には至らず恐れた3人は逃げ出す。

 仕方ないと思いながらデブの下敷きになっていようやく這い出てきた男の顔面を膝蹴りしてとどめを刺した。


 やっぱり鼻の骨と言うのは脆い様で簡単に砕ける。

 鼻字を垂れ流しながら気絶した男とデブから金をいただき今日は帰るとしよう。


「リル。何食いたい?」


 ちょうどいい臨時収入が手に入った事からそう聞いたが、リルはそんな汚い金で物を食べたくないのか顔をそむけた。

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