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転生者の贖罪  作者: 七篠
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涙の卒業パーティー

 ちまちまと悪魔社会に入り込んでいるドーピング剤を燃やすアルバイトをしながら結構な額の小遣いをもらいながら2月になった。

 今日も地下でトレーニングしてあいつを殺すための力をより高めないといけないと考えていた放課後、理事長から電話が来た。


「はい佐藤です」

『柊さん。すみません雫です。少々お時間をいただきたいので理事長室に来てもらってもいいでしょうか』


 という事で理事長室に行くと、理事長だけではなくタマやサマエルも真剣な表情をして悩んでいる。

 一体なんだろうと思っていると理事長が俺に声をかけた。


「すみません柊さん。これからトレーニングなどがあるのに来てもらって」

「いえ、特に問題はありませんが、みなさんどうしたんです?」

「それについて一緒に説明します。柊さん」

「はい」

「娘の、涙の卒業パーティーに来ていただけませんか」


 …………卒業パーティー?


「え、いや、はい。それは構いませんが……」

「良かった~。涙も柊君に来てくれることに必ず喜んでくれます」

「そうじゃなくて、もしかしてそれを伝えるためだけにこんな重い空気出してたんですか?卒業祝いのために??」


 何やら真剣な表情で、しかも重苦しい雰囲気を出しているから何事かと思った。

 だが俺が思っている以上に二人にとっては重要な事らしく、思い悩んでいた。


「私達毎回卒業と入学に祝いにプレゼントとか送ってるんだけど、涙にあげるプレゼントのネタが尽きた!!」

「愛されてんな~涙の奴。もしかしてサマエルさんも?」

「はい。私も今年はどんな物が欲しいのか分からず、かと言って無難な物を選ぶのもプライドが許さず、悩んでいたところです」

「……いっその事欲しい物を聞くとかダメなんです?毎回あげてるなら涙も分かってますよね?聞いてもいいような……」

「そう言った事は雫が用意してるの。この辺は親に譲るって感じで。それに毎年誕生日にプレゼントとかも送ってるからネタが……」

「本当に愛されるな。それで俺もプレゼントを用意した方が良いと」


 そう確認するとみんな頷いた。

 となると何を送るべきか……

 ぶっちゃけ最近の女の子が喜ぶものは何かと聞かれるとさっぱり分からない。

 やっぱり無難なのはアクセサリーやファッション系。でも服とかになるとサイズを知らないと分からない。せっかくプレゼントしてもサイズが合わなかったら意味がない。

 アクセサリーに関しては……単純に好みの問題も出てくるからある程度のリサーチが必要だ。

 種類はピアスや指輪がいいのか?でも指輪とは少し重いだろうからもう少し気軽に渡しやすくて涙も重いと感じないようなちょうどいい物……


「…………考えても分からん。いつも通りでいいか」

「いつも通りって何?何を送るの??」


 俺のつぶやきに反応した理事長。

 特に隠すような物でもないので素直に言う。


「ドリームキャッチャーっていうお守りを手作りして涙に渡そうかと」

「ああ、お手製のお守りですか。それならちょうどいいかもしれませんね」


 納得したように言うサマエルだが、理事長は何故か考える。

 お手製と言う所が嫌なんだろうか?いやでもその場合普通は見ず知らずの相手から受け取るのが嫌で、知り合いからなら問題ないと思う。

 俺が涙に変な事をするとは思っていないはずなのでそんなに警戒するだろうか。

 何て考えていると理事長は確認するように聞いてきた。


「ちなみに、そのドリームキャッチャーって他の人にも作ってあげたことある?」

「ええ、ありますよ」

「その中に……悪魔の貴族は居る?」

「います。前にミルディン・グレモリーに製作依頼を受けていたのでそういうときに作りました」


 連絡がないという事はまだ壊れていないって事なんだろうな~っと思い出しながら伝える。


「そう……あれを作ったのがあなただったのね」

「もしかして知っててたんですか?」

「知ってるというよりは自慢してた。これでようやく安眠できるようになったって、そしてその人の事が凄いってずっと言ってた」

「言ってたのは分かったんですけど……何でそんなに疲れた感じで?」

「そりゃずっと話を聞いてたら疲れちゃうわよ。しかもただの自慢と言うよりはのろけ?みたいな感じでずっと柊君の事を褒めていたんだから。まぁ製作者が君だって今分かったんだけど」


 ミルディンの奴そんな事してたのか。

 別に俺が作ったドリーム・キャッチャーはただ悪夢を見なくなるだけってだけで大したものじゃないし、作るための材料を用意したのは向こうだ。

 だから俺が凄いという自覚はない。


「でも俺大した事はしてませんよ?」

「材料はグレモリー家持ちだったとしてもミルディン・グレモリーの予知夢を一時的にシャットアウトするなんて同じ素材を使ったとしてもそう簡単に出来るものじゃない。あなた自身の技術が無ければ成功しなかった。それを涙に作ってくれるの?」

「作ると言ってもミルディン・グレモリーに作ってあげた時と違って素材は手芸店とか百均で買う安物ですよ?なのでそんなに効果のある物は出来ませんって」

「むしろその方が良いわ。あんな凄い効果のお守りをもらってもこっちが大変だから」


 まぁそれでも最大限の努力はするけどね。

 娘の誕生日に少しでもいい物を送りたいというのは本当だ。

 そういえば。


「ところで卒業パーティーっていつやるんです?」

「卒業式の次の日ね。日曜日だから大丈夫だと思うけど……」


 卒業式の次の日。

 …………あまり時間がないな。


「分かりました。涙のプレゼントを作りたいので今日はトレーニング休みますね」

「そう?珍しいわね。てっきりトレーニングを優先するかと思った」

「流石に娘のプレゼントの方が優先度上ですよ。これから制作作業に入るんでちょっとトレーニングの時間減らします。でも仕事は普通にやるんでご安心ください」

「休まなくていいの?」

「これくらい大丈夫ですよ。それじゃリル、ちょっと買い物行こうか」


 俺がそうリルに言うとリルは鳴いて後ろをついてくる。

 さて、どんなの作ろうかな。

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