表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者の贖罪  作者: 七篠
172/210

仲間がいるって素晴らしい

 正直言ってかなりキツい。

 今の俺ではこいつらを一気に相手にして勝てるほどの力はない。

 というか前世の頃だって複数人対個人の場合、相手を切り離して個人対個人を連続で戦う様にしてきたため一度に複数人と戦った事がない。


 前世の頃のこの戦い方も強かったからこそできたのだと今は理解できる。

 こうして複数人に囲まれると一対一に持ち込む事すら難しい。

 それに地下駐車場という狭い空間である事も難易度を上げる原因だ。

 狭いと一度逃げて一対一を作り出す事ができないし、どうしても回り込まれる可能性が高い。


 もしそれがダメとなると……仲間が来てくれるまで耐え続けるしかない。

 他のみんなは……まだ他の悪霊退治に夢中か。リルだったら駆けつけてくれるかもしれないが状況が分からん、

 ツーはこの地下全体を見張っている感じだから手助けしてくれるかどうか分からない。


 まぁ声をかければリルもツーも俺を優先してくれるだろうが、それで他のメンバーの生存確率を低下させてしまっては元も子もない。

 俺だけが生き残ってはダメだ。

 もしそれなら単独で動く方がよっぽど効率がいい。

 俺とリルとツーの三人で組んでいる方が他に気にしなくて済む。


 どうしたものかと考えながら結局俺は耐えるしか選択肢がない。

 悪霊達の攻撃をシロガネでいなして一撃で倒せそうなら倒すくらいの気持ちでやる。

 もし隙がなさそうなら隠れて守って逃げるしかない。


 そう思っている間に悪霊達は俺を取り囲んで攻撃してくる。

 ラスボスの攻撃が当たるように他の悪霊達が逃げられないよう拳を振り下ろす。

 その隙間を縫いながら逃げて避けて守って時間を稼ぐ。誰かが助けてくれることを願って!!


 いや~本当に情けないよね。今の状況。

 ガブリエルが個人の実力を見たいとか言われてなくてもこんな感じになっていたんじゃないだろうか?

 みんななんだかんだで血の気多いしな……


 何て考えながら動いているがさすがにそろそろ逃げるのも限界だ。

 そう思っている間に背中に柱が当たった。


「ヤベ!」


 そう声を上げている時にはすでにラスボスが拳を振り下ろしていた。

 シロガネを盾にし、オーラを纏ったがそれでも柱とシロガネに挟まれる形で潰され、柱はその衝撃に耐えきれず破壊される。

 そのおかげでぺしゃんこに潰される事はなかったが、ダメージは大きい。


 特にヤバいのは背中だ。

 背中を強くぶつけたせいで痛みが全身に広がっているし、柱の破片が浅く刺さっている。

 破片ははらえば済むがこの痛みは少し不味い。ひびが入ったりはしていないが全身が動かし辛い。

 特に腰から当たってしまったのか両足ガクガクだ。

 逃げの態勢でいた今の俺には致命傷だな……


 そんな俺の状態を知ってか知らずか、ラスボスは大きく拳を振り上げ、勢い良く振り下ろす。

 シロガネを砲台モードにして撃つか?ダメだ溜めが出来ない――!!


 そう思った瞬間に浮遊感が俺を襲う。

 何だと思えばリルが巨大化して俺を咥えてくれていた。


「リル!!マジ助かった!!」


 少し離れた所に俺を放すと、リルはブチギレていた。

 あ、これマジでヤバい奴。

 でもなぜか悪霊には攻撃せず俺の前に立って悪霊達を威嚇するだけにとどまる。

 ちょっと意外な姿に疑問を持っていると銀毛が叫んでいた。


「ちょっと!!あんた強いんだから何でその程度の奴に負けてんのよ!!」

「うるせぇ!!強い奴一体ならともかく、昔っから複数戦は苦手何だよ!!」

「それならそれでもっと先に話しなさいよ!!でもテロリストたちが襲ってきた時は普通に対応してなかった?」

「呪い使えば屁でもねぇよ!!」

「なら使いなさいよ!!」

「嫌な感じがするから使いたくねぇんだよ!!」

「喧嘩してないで倒すよ!!」


 俺達の話涙が割り込んで止める。

 まだ体は痛むがそうも言ってられないか。

 もう既にシスターがメリケンサック装備で殴りかかっているし、涙も悪霊を殴って倒している。

 まだ少し体が痛むがシロガネを杖代わりにして立ち上がる。

 リルは心配そうに俺の事を見ているが、一対一の状況に持ち込む事が出来れば勝てる。


 あれ?でもうちのメンバー四人だから結局一人足りなくね?

 え、リル手伝ってくれるの?それなら大丈夫だわ。

 そして示し合わせたように俺がラスボス担当か。


「ま、それくらいの汚名返上は必要か」


 取り巻きを抑えてくれているみんなに感謝しながらシロガネを構えた。

 ラスボスは何も考えず、ただ俺の前に飛び出してくる。

 さっきまでズタボロになっていた奴に警戒するって事はそりゃないわな。


 だが取り巻きがおらず、たった一人に集中できるというだけで戦いやすさが段違いに跳ね上がる。

 シロガネを担いで息を整えて飛び出す。


 ラスボスが繰り出した拳にシロガネを振り下ろす。

 激しい金属音に近い硬い者同士がぶつかった音が駐車場を響かせる。

 対格差のせいで少し押され気味だが問題ない。

 一撃で終わらなかった事に意外だったのかラスボスは次々と拳を繰り出してきた。


 それに対抗して付与魔法で身体強化と五感を強化し動きを読む。

 ラスボスの動きそのものは非常に単調でただの喧嘩戦法。特別な技術などは一切ない。

 言い方を変えればガムシャラでほとんど同じ動きの繰り返し。

 だから隙も出来る。


 ラスボスの方の方の腕が伸び切り、もう片方の腕は大きく引いている瞬間ラスボスの懐に飛び込んだ。

 醜いラスボスの顔が驚いているがこのくらい何てことでもない。攻撃準備中に相手に攻撃するのは普通の事だ。


「剣技、『流星』」


 技名はかっこいいがただの高速の突き。

 ラスボスの胸に突き刺さるがまだ浅い事を手の感覚が教えてくれる。

 思っていたよりもラスボスの筋肉にあたる部分は肩かったらしい。

 それならと思いながらさらにオーラを集めて攻撃する。


「『大車輪』」


 その場で高速回転をしてラスボスの命に届くまで攻撃し続ける。

 そんな攻撃にラスボスは俺の横から拳を繰り出してきたが、その拳にわざと斬れないように骨にシロガネを当てて天井ギリギリまで跳ね上がる。

 あとは自由落下プラス魔法による自重の増加、そしてシロガネの重さと剣技を合わせて一撃で仕留める。


「剣技、『兜割り』!!」


 相手の頭を兜ごと叩き割るために編み出された剣技。

 それは単純に頭蓋骨が硬い相手や、頭を保護する何かを持っている相手に対して非常に有効だ。


 先ほどよりも大きな金属同士がぶつかるような音が駐車場を響かせると、ラスボスは仰向けに倒れた。

 そして瘴気として空気中に霧散された後、すぐにシスターが浄化してくれた。

 他の取り巻き達もみんなによって討伐完了。


 今日のお仕事終了だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ