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転生者の贖罪  作者: 七篠
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魔導書製作

 魔法を使う練習をしていたがやっぱり今の俺ではろくに扱えない物なので少し道具に頼る事にした。

 転生したとはいえ知識や記憶は何故か引き継がれているのでこういった力が足りない時の方法は自力で確保する事ができる。

 と言っても現在の俺は大した事がないので道具を作ると言ってもたいそれた物は作れない。


 授業の合間である休憩時間や家に帰った後に俺は1冊の無地のノートに、どこでもある消えるボールペンで様々な魔法を書き込んでいた。

 今俺が作っているのは魔導書だ。

 本来魔導書と言うのはいわば研究資料や論文のような物で、自分の考えた最強の魔法の使い方及び発動方法、もしくは魔法を使って生み出す事ができるレシピ集のような物。かなり簡単に言うとこんな感じ。


 でも戦闘用限定で言うと少しだけ変わってくる。

 言ってしまえば自分の使いたい魔法を先に紙に書いておくことで詠唱しなくてもそのノートに書かれた魔法陣と反応して魔法を使う事が出来るという感じ。

 無理矢理ではあるがパソコンなどで使われるプログラミングと同じだ。

 あらかじめプログラミングしておいた道具にどのように使いたいのかをあらかじめインプットしておけば、後は電源を入れてそれを選択するだけで魔法を使う事ができる。

 その電源が魔力であり、選択するのは俺の脳みそだ。


 だが簡単な魔法と言っても魔法陣に書き込む際にはいくつかの注意点がある。

 魔方陣を描く際にプログラミングがきちんとしていないと発動しなように、魔法陣を正確に描かないと発動する事すらできない。プログラミングが間違っていてエラーを起こすのと変わらない。

 だから魔方陣を描く際にはインクで汚してしまったり、濡れてしまうと使えなくなってしまう。

 道具だからこその弱点だ。


 それに今魔導書として創り上げようとしているのはただのノート、100均で売っているやっすいノート。

 もし魔導書が完成したとしても濡れたり破れたりすれば当然故障となり使うことは出来なくなる。

 真っ当な魔法使いが作るとすれば最新科学で作られた濡れてもインクが滲まない紙とか、壊れにくい紙を使用するだろう。古くからの方法を使うのであればそれこそ魔導書に壊れないよう魔法をかけると言う方法だって存在する。

 でも俺にはそんな特別な紙を買う金がなければ魔法も使えない。

 物が壊れなくするための方法や呪文は覚えているが、破壊不可の魔法は魔力の消費も激しく、今の俺には使えない。

 だから普通のノートに書き込むしかないのだ。


 この作業が面倒くさくて、今の俺には魔力量も少ないから普通の魔方陣を描くわけにもいかず、消費魔力を少なくするために魔法陣に色々書き込んだりするために余計に時間がかかっている。

 しかも簡単な魔法だけなので基本的にまっすぐ飛ぶような攻撃魔法しか書き込めず、回復魔法なんかは書き込む余白がない。

 全部で48ページあるので48種類の魔法を書き込もうと思えばできるが……バランスがな……難しいんだよな……


 俺の知識に残っている魔法は1万を超えている。

 その中から現在の俺の魔力量で使える物はほとんどないが、それでも100を超えているし、攻撃魔法ではないけど使えると便利な魔法だってある。

 その中から48種類を厳選するのはぶっちゃけ難しい。


「な、なぁ」


 どんな魔法を使えるようにするか考えていると誰かに声をかけられた。

 誰だろうと思って振り返ると、この間龍化の呪いで暴走してしまったクラスメイトだ。


「お、無事に復帰できたんだ。おめでとさん」

「あ、ありがとう?それからその……」

「?」

「ごめん。襲っちゃったみたいで……」


 ああ、その事を気にかけていたのか。

 だがそんなどうしようもない事を咎めるほど俺は理不尽ではない。


「別にいいよ。お前は悪くないんだから」

「いやでも……」

「それじゃお前は病気にかかった誰かが迷惑をかけたとして、それを責められるか?誰も病気に自分からかかりたい奴なんていないんだ。それと同じ。だから気にするな」

「……分かった。でありがとうな。止めてくれて」

「ちゃんと止めたのは戦闘科の生徒達だ。俺はただ逃げ回ってただけだよ」


 そんな話をすると彼は他のクラスメイトのところに行った。

 でも未だに謎なのは呪われた彼が何故執拗に俺ばかり狙ってきたのか、まだ謎は多い。

 それよりも魔導書を完成させてさらに魔法を使えるようにするのが先か。

 とりあえず必要だと感じた基礎魔法から描き込んでいくとしよう。


 放課後になりいつもの場所で魔法の効果を確かめてみると、やっぱり便利だ。

 身体強化の魔法でただの垂直跳びで3メートルくらい跳べたり、100メートル走を11秒くらいで走りぬく事ができる。

 これなら多少戦闘能力も上がったと言えるが、結局道具だからこその問題は存在する。

 いくら48ページしかないノートを元に作ったとはいえ基本的に身に付けていないと魔法を使う事が出来ない。手から離れたら拾いに行かなければ魔法はキャンセルされるし、もちろん使えない。

 そうなるとどれだけこの魔導書を肌身離さず身に付ける事が出来るとかと言う問題が出てくるわけだが……背中にでも挟んでおくか?

 いや見た目は普通のノートなのだから持ち運ぶことに関しては特に問題はない。本来魔導書を持ち込むのは戦闘科の生徒くらいだろうからバレる事はないだろう。

 でも一応武器として扱われているので見つかったら注意くらいはされるかもしれない。


「この間はしょうもない魔法1つ使えなかったのに身体強化魔法なんてよく使えたね」


 魔法の動作確認をしているとカエラが姿を現した。


「基礎魔法の1つのはずだ。使えたって不思議じゃないだろ」

「でもこの間の氷の魔法1つであんな爪楊枝みたいな最低レベルの魔法しか使えなかったのにどうやってそこまで強化したの?」

「俺は人間だ。人間らしく道具に頼るしかないだろ」

「え、まさか初級魔法の魔導書でも買った?あれほとんど詐欺みたいなものだよ。それに無駄に高い。あれ1冊で携帯ゲーム機の中古くらいなら買えるくらいの値段だったよね」

「でもその代わりにこうして魔法が使えるのなら安い買い物だ」


 魔導書と言う点は正解だが購入したとは言ってない。つまりこれはカエラが勝手に勘違いした事になる。

 それを聞いたカエラは本当にドン引きしていた。


「うわ~。勿体ない事するね。あんなの詠唱すれば簡単に使えるじゃん。わざわざ無詠唱に拘る必要もないと思うけど」

「得意じゃないんだよ。詠唱」

「それは人によるだろうけどね。それにしてもいけないんだ~、普通科の生徒か魔導書を学校に持ってくるなんて。い~けないんだいけないんだ。せーんせーに言ってやろ」

「小学生か。それに契約したわけじゃないんだから問題ない」

「それじゃ明日先生に言ってみようかな~?」

「別に言ってもいいぞ。明日俺が魔導書を持っているとは限らないけどな」

「ちぇ。ハンバーガーをたかるチャンスだと思ったのに」

「またそれか。どんだけジャンクフードが好きなんだよ」

「ジャンクフードって言うよりは脂っこいのが好き。戦闘科に居るとやっぱりお腹が減るんだよ。なのにうちのバカ両親はご飯も節約してろくに食べさせてくれないんだから」

「それはキツイな」

「おかげで何だっけ?身長の割に痩せ気味判定食らったよ」

「それは……もう少し食ってもよさそうだな」


 学校の健康診断の結果か。

 普通科や他の科はともかく戦闘科の健康診断は大人が受ける健康診断よりも精密に検査される。戦闘に必要な魔力量や魔力回路の強度なども調べられたはずだ。


「それって体重だけか?他に問題は?」

「やっぱり魔力回路が少し傷んでるって評価された。もっとご飯食べろって」

「親は当然知ってるんだろうな?」

「知ってて放置。私の体よりも家の外見を維持する方が大切みたい」


 貴族の血がかなり薄まっているとしても貴族の血筋と言うブランドは守りたいわけだ。

 だからそんな貴族もどきはさっさと消えろと言いたくなる。


「……買い食い行こうや。今日はケンタのチキンが食いたい気分だ」

「あ、私そこのバーガー食べた事ない。美味しいの?」

「……そういや俺も食った事ないや。チキンばっかり頼んでたから」

「それじゃ今日はチキン屋のバーガーがどれくらい美味いか確かめてみよう!」

「先に言っとくが奢らないからな」

「やっぱダメか~」


 そう残念がるカエラだが素直にバーガーを食べる事には積極的である。

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