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05

「えっ!? 」


 ズキズキと痛む手に、ひんやりとしたモノがふれた。それは、まるで頬擦りするかのようにスリスリ動いている。


 手元に視線を向けると、件の水玉が動きを止め、首を傾げていた。


「きゃっ! 」


 思わず手を引っ込めた。

 頬擦りされた手を確認する。


 何ともなってい──た。


 指輪に嵌っているハズの宝石がなくなっている。


 まるで、お母様とアンの想いを、台無しにされたような気がした。





 バツっ。


 アクヤ中で何かがキレた。

 いや、逆に繋がったのかもしれない。


「控えなさいっ! 無礼者っ!

 いきなり飛びかかってくるとは、何事ですっ!! 」


 立ち上がり、叫んでいた。

 内側から力が湧いてくる。

 アクヤの体は黄金色に輝いていた。


 首をかしげたまま固まっていた水玉が、プルプルと震え始める。

 アクヤは、警戒を強めた。


 水玉は少しだけ上に伸びると、下半身がにゅーっと二股に割れた。

 そして、二足歩行で脱兎のごとく逃げていった。


 呆気にとられていたアクヤは、それを呆然と見送ることしかできなかった。





「あいたたたっ! 」


 長時間屈んでいたために、腰が悲鳴をあげた。

 岩陰から顔を覗かせていた水玉が引っ込む。


 アクヤは一度大きく伸びをすると、また、宝石探しを再開した。


 ソロソロと這い出てきた水玉が、アクヤ後ろでデローンと広がった。チラリと確認すると、水玉が少しだけ縮んだ。


 どうやら、捜索を手伝ってくれているようだ。


「あちらの端から順に、探してきてくださる? 」


 指示を出すアクヤに、一瞬ギョッとした様子で固まった水玉は、こくりと頷き端へと移動していった。


 女性の上に立つものとして、家事の分担指示はお手のものだった。女王陛下(おかあさま)直々の厳しい王子妃教育を、何年にも渡り熟してきた経歴(キャリア)は伊達ではない。


 アクヤも作業に戻るべく、四つん這いの体勢に戻った。


「きゃっ!! 」


 手と膝がヒンヤリとしたものに、ズブリと呑み込まれた。


 デローーン 、ニョローーン


 そんな音が聞こえてきそうなほど、水玉が緩み切り、岩と岩の間を埋めつくしていた。





「もういいわ」


 ぺこりと頭を下げる水玉に、アクヤはそう返した。結局、宝石は出てこなかった。


「貴方のお陰で効率よく宝石を探すことができたわ。ありがとう」


 最善を尽くしたのだ。お母様とアンは許してくれるだろう。むしろ、魔物? に襲われて無傷な上に、良好な関係を築けたのだから、泣いて喜んでくれるはずだ。

 水玉としては、アクヤではなく宝石が気に入っただけのようだが。


「はい、これ。御礼に貴方もどう? 」


 アクヤは水玉に干し芋を差し出した。

 器用に触手を伸ばして掴むと、口? に突き立てる。芋が体内に取り込まれた瞬間、水玉がふるふるっと揺れ、デローンと広がった。


 予想以上に美味しかったらしい。

 残りをするするするっと呑み込むと、アクヤに飛びかかってきた。





 バツっ。


「控えなさいっ! 無礼者っ! 」


 プルプルプルっ

 にゅーっ、パッカーン

 トテッ、トテッ、トテッ……


 ……。





 ─とあるS級冒険者の鑑定眼※─

 ※本人達も作者も、何も知りません。


【名前】 アクヤ・クレイ Lv.5


【種族】 人族


【ステータス】 高位貴族


【スキル】 王子妃の教養(免許皆伝)

  回避、覇王の威圧、意思疎通




【名前】 水玉(仮) Lv.2


【種族】 魔族水操玉(スライム)(もく) 水操玉(スライム)

 

【ステータス】 覇王の眷属


【スキル】 鉱石鑑定、二足歩行逃避

  じゅうたん探索、消化・吸収

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