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シャッ、シャッ、シャッ、シャッ
ズン、ズン、ズン、ズン
びゅーーーーーーん!
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ
ズン、ズン、ズン、ズン
びゅーーーーーーん!
アクヤ、アピス、オニオーを先頭としたお掃除部隊は、いつしか、大群に膨れ上がっていた。
そして、その行軍が通り過ぎた後は、そこかしこが真っ白に輝やいていた。
「……行き止まりね」
案内役の魔政婦が立ち止まり、振り返った。どうやら、ゴブリン巣窟の様に、解除呪文が必要なようだ。
「オニオー、ヤってしまいなさい」
「俺かよっ! 」
アクヤの指名に、オニオーがブツクサ言いながら前に進み出た。そして、白い壁を拳で叩き始める。
トン、ト、ト、トン、トン
何も起こらない。
後ろでは、魔政婦達が両手を広げ、首を振っている。
それから、何度となくオニオーが挑戦するが、白壁はうんともすんとも言わなかった。
「しゃらくせーっ!! 開きヤがれつってんだよっ!! 」
到頭、オニオーがキレた。白壁に頭突きを食らわせる。
ゴッ !?
「おおっ! 」
黄金に輝くオニオーをみて、アクヤは歓声をあげた。皆が、扉が開くのだと期待した。
「オガッ!? 」
──だがしかし、変な声とともに真後ろへと吹き飛ばされたのは、オニオーの方だった。
……。
そして、何も起こらない。
「まだまだ、修行が足りないわね。見ていなさいっ!! 」
腕を組んだアクヤが呆れたように言う。
そして、白壁を指差し叫んだ。
「控えなさい、無礼者っ!
女王たるこの私を阻むとは何事ですっ!
さっさと、開きなさいっ! 」
ゴゴゴゴゴゴーーーーっ!
凄まじい轟音と共に白壁が真ん中からパックリと割れ、細長い通路が現れた。
(初めっから、お前がヤレよ……)
小さく呟やいたオニオーは、パタりと倒れたのだった。
通路を抜けた先には、ただっ広い空間が広がっていた。場違いにもキレイに磨かれた丸テーブルが並べられている。
その最奥に、執事服に身を包んだ若い端正な顔立ちの男が、樹木の蔦で身体を拘束された少女を背に、佇んでいた。
何故だか、ワンイグラスをリネンで磨き上げている。
背後にいる黄色と黒のショートドレスに身を包んだ金髪ツインテールの少女は、目を閉じたまま項垂れていた。その風貌から、アピス達の姉で間違いないだろう。
「……異物が迷い込んでしまったようですね」
たぶん、魔執事であろう男が、目を閉じたまま呟いた。
「ここは、あなた方の様な下賎な輩が訪れていい場所ではありませんっ!! 」
グラスをそっと置いた魔執事が叫んだ。そして、真っ赤に輝く目を見開くと、懐に手を差し込み何某かを放った。激しい身のこなしにも関わらず、セットされた黒髪や衣服に一切の乱れがない。
その早業に、シェフもスケさんも全く反応できなかった。放たれたソレは、二人の頬を掠めアクヤへと一直線に吸い寄せられていく。
「あっ、 あぶねえっ!! 」
オニオーは、その一言を叫ぶのでやっとだった。




