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「箒部隊第一隊、第二隊! 縦1列に並びなさいっ! 」
アクヤの掛け声で、三体1組の二隊列が通路の両サイドに縦1列で並んだ。
「箒を逆さにもって、壁のホコリを落としていきますっ!よーいっ、始めっ! 」
魔政婦たちが、わちゃわちゃと動き始める。
「ちがーーうっ! 止まりなさいっ! 箒は後ろからは前に動かすのですっ! そして、淑女たるもの、掃除中でも優雅であることを心がけなさいっ!! はいっ、ワンッ! ツーッ! ワンッ! ツーッ! 」
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ
途端に魔政婦たちの動きが変わった。機敏に、そして、優雅に、進んでんいく。
「ほらっ、ここ。箒が届いてませんよっ! しっかり、箒の先端にまで、意識を集中しなさいっ! ワンッ! ツーッ! ワンッ! ツーっ!」
それは宛ら、ダンスレッスンのようであった。
「はいっ! 箒部隊第三隊、第四隊横一列に並びなさいっ! 貴女方は 第一隊、第二隊の後を追って、床を後ろからは前へ掃いていきます。それでは、はじめなさいっ!」
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ
「胸を張ってっ! 箒を動かす姿勢も気を抜いては行けませんっ!」
第三隊、第四隊も、機敏に美しく続いていく。
「最後に、雑巾部隊っ! 貴女方は素早く綺麗に、拭き残し無く行わなければなりませんっ! 私が中央を拭きますっ! 私について参りなさいっ! 」
アクヤを中心にした一筋の黄金に輝く軌跡が、床の上を駆け抜けて行った。
「おーーっ! すげーーっ!」
「きゃーーっ! 綺麗っ! 」
一通り通路の清掃が終わると、迷宮は迷宮らしからぬ白い輝きを放ち始めた。それを見たオニオーとアピスが歓声を上げる。
魔政婦たちは目をうっとりとさせ、すでに、アクヤを陶酔しきっていた。
「何をあなた方は、ぼーーっと突っ立っているのです? 今度は2人で仲良く、今の作業を行うのですっ! 」
「なっ!? 体が」
「ちょっ、どうなってるのっ!? 」
2人の体が黄金に輝き始める。
そして、箒を手に取ると行進を始めた。
「ほらっ、箒の持ち方がなっていませんっ!もっと、腰を入れて持つのですっ! 姿勢を正して、優雅に動かすっ! 」
魔政婦たちも集まってきて、厳しく目を光らせる。
「「ぎゃーーっ! ごめんなさいっ! ゆるしてくださーーーーいっ!」」
「「うふふふふふっ、あはははははっ」」
「あぴすーっ! 俺たちやれば、できるじゃないかっ!! 」
「うん、オニオーっ! やっぱり、あたし達、最高のパートナーだったのねっ! 」
「「うふふふふふっ、あはははははっ」」
二人の悲痛な絶叫は、いつしか、真っ白な床を背にクルクルと回る熱い友情に変わっていった……そうな?




