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 皆が寝静まった真夜中、作業部屋から漏れる明かりで、アクヤは目を覚ました。


 足を忍ばせ、そっと、伺う。


「あら、アクヤちゃん。ちょうど、よかった。お洋服が出来上がったわよ」


 アクヤに気づいたお婆ちゃまが、にっこりと微笑んだ。

 手には、真っ白な上下が握られている。


「本当は、可愛い色に染めてあげられるといいんだけどねぇ。着てみてくれるかい? 」


「まぁっ! 素敵! 」


 アクヤが、小さく叫んだ。


「折角ですから、身体を清めてから着てみたいです 」


 手渡された衣服を体に当てながら、アクヤがおずおずと申し出る。


「そうだねぇ。皆、寝ていることだし、ゆっくり温まっておいで」


 また、お婆ちゃまがにっこりと微笑んだ。




 ぴちゃ、ぱちゃ、ぴちゃん


(あー、しあわせー)


 久しぶりの入浴に、思わず心の声が漏れる。

 ちなみに、水はミズタンが、温めるのはシェフがやってくれた。とろりとした聖水が身体を包み込み、魔力による温もりがじんわりと身体を温めてくれる。


(そーいえば、ここにくるまでは、入浴もアンが手伝ってくれていたのよね)


 自ら肌を撫でながら、物思いにふける。短期間で色々なことが起こりすぎて、公爵家の長女だったことが夢のようだ。


「おい、ばばぁ! 何やってんだ? アクヤのこと……」


 そんなことを考えていると、オニオーがバスルームへとズカズカやってくる。


「きゃっ!! 」


「……。……///」


 慌てて胸に手を回し、バスタブにもぐり込むアクヤと、顔を真っ赤に染め絶句するオニオー。


 ぱーーーーーーんっ!!


「ふぎゃっ」


 ムクっ。テトテトテトテトテト……ぽちゃん。





「さいっっっってぇっ!! 」


 真新しいふわふわの衣服に身を包んだアクヤが叫んだ。

 上下ともに身体に程よくフィットし、とても動きやすい。


「だから、事故だって言ってんだろっ!」


 オニオーが負けじと反論する。

 その頬には水色の手形が浮かび、腫れ上がっていた。

 入浴中のアクヤを見て、赤面し固まるオニオーにミズタンビンタが炸裂したのだ。


「俺だって、お前の裸なんか見たかねーっ!!」


「なっ、なんですってーっ!!」


「それに、ベビリン(チビ)とは、一緒に入っていたじゃねーかっ!!」


「べっ、ベビリンはっ、まだっ、子供ですっ!


 アクヤの怒りに呼応し、指輪から巨大な掌が出現する。


 バタンっ!!


「なっ!? うぐっ!」


 オニオーが真上から地面に叩き潰された。


「……お、おれも、こ、ど……も、だ。……がはっ」




 地面にめり込んだオニオーを、ベビリンが心配そうにツンツンしていた。





「あらっ、お客さんが来たようだよ」


 翌日、皆でコーンポタージュを味わっていると、お婆ちゃまが声をかけてくれた。厳密にはコーンポタージュではなく、トトポタージュだ。


 この洞窟では、コーンは手に入らない。

 そのかわり、味の似たトトの実なるものが存在するらしい。紫色の瓜の中に、直径1cm程の黄色い実がビッシリと詰まっている。毒々しい見た目に相反し、味わいはコーンそのものだった。

 スープにすると、そのプツプツとした食感がなんとも面白かった。


 そんなことを考えていると、お婆ちゃまが客人を連れてきた。二人連れのようだ。


「あんたが、小鬼ノ女王(ゴブリンクイーン)ねっ! アタシ達困っているの。助けてちょーだい」


 アクヤを見るなり、巣窟へと入ってきた小柄な女の子がそう叫んだ。



 ─とあるS級冒険者の鑑定眼─


【名前】 アクヤ・クレイ Lv.………………ボンッ!




 S某「鑑定眼()がぁっ! 鑑定眼()がぁぁぁあっ! 」

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