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「きゃっ!! 」
ミズタンがアクヤを庇うように飛び起きた。
体がスライムに包み込まれ、ちょうど、ミズタンの背中に負ぶわれる格好になっている。
どうやら、ミズタンは最初に吸収した骸骨戦士を骨格にして、人型になったようだ。スライムボディまで、甲冑のような造形へと変貌をとげている。
ビュンッ!!
死霊ノ王の六元刀が空を斬った。
カタカタカタカタカタカタ……
その風切り音に混じって、骨同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。
吹き飛ばされいた骸骨戦士が立ち上がり、ミズタンに向かってこようとしている。
「シェフッ! 小鬼と爬虫人をお願いっ!! 」
アクヤが叫んだ。
骸骨戦士の頭上を覆うように、小鬼と爬虫人が出現し、飛びかかる。
当然、糸玉体躯だ。
虚をつかれた骸骨戦士は為す術もなく地面に突っ伏していく。それを、小鬼が器用に縛り上げていくのが見えた。
ガキーーーーンッ!!
前方から凄まじい金属音が聞こえてきた。
慌てて振り向くと、ミズタンが構えている長剣が、叩き折られている。
武器の性能差がモロにでたようだ。
死霊ノ王の追撃を交わすべくミズタンが体を捻る。
が、間に合わず、左腕が切り落とされた。
とぷんっ。
その隙に、アクヤはミズタンにもぐり込む。
(復活なさいっ! )
長剣の柄に、両手を重ね念じた。
途端に、折れた長剣がミズタンの体より再生されていく。そして、それは宝石ような輝きを放ちはじめた。
ついでに、切り落とされた左腕まで、復元されている。
キンッ、キンッ、カキンッ!
ミズタンと死霊ノ王による熾烈な争いが再開した。
(とりあえず、六元刀と互角に渡り合えそうね)
アクヤは、邪魔にならぬよう、背中へと戻ることにした。
と、頭上から黄金の粉(りん粉? )が、降ってきた。見上げると、チョウさんが優雅にヒラヒラと舞っている。
カラ、コロ、カラン。
まるで、その舞の拍子をとるように、小気味の音をたてながら、捕えられていた骸骨戦士が崩れ落ちていく。
それに伴い、耳の奥でずっーと木霊していた怨念のような叫び声が小さくなっていった。
「ちょこまかと小癪なっ!! 」
死闘を繰り広げていた死霊ノ王が業を煮やしたように叫んだ。
その背後に、六つの黒い玉が浮かび上がり、そこから骸骨戦士が出現した。
数でねじ伏せる作戦のようだ。
「シェフッ! 近衛骸骨の出番ですっ!! 」
アクヤが、負けじと叫んだ。
敵骸骨戦士の頭上から、黄金に輝く 近衛骸骨が襲いかかる。
「なっ!? 」
死霊ノ王が慌てて、もう六体の骸骨戦士を、出現させようとする。
が、それを叩くようになだれ込む近衛骸骨。
「なぬっ!? 」
一瞬の隙をつきミズタンが斬り込んだ。
その頭上を近衛骸骨が埋めつくてしていく。
ドドドドドドドッ!
さらにさらに、捕らわれて崩れ落ち再復活まで果たした近衛骸骨が、戦闘に加わっていく。
ぐぁぁああああああああっ!!
『Yes, your highness! Yes, your Majesty! Yes, my Lord! Yes, your highness! Yes, your Majesty! Yes, my Lord! Yes, your highness!Yes, your Majesty! Yes, my Lord!Yes, your highness! Yes, your Majesty! Yes, my Lord!』
死霊ノ王から発せられた断末魔の呻き声は、女王担の狂気に充ちたの歓声により掻き消されていた。
「全員退避っ!! 」
頃合を見て、アクヤが叫ぶ。
ゴーロ、ゴロゴロ
ゴーロ、ゴロゴロ
ペシャッ!!
巨大な糸玉に乗ったベビリンにより、呆気なく、長きに渡る戦いの終止符が打たれた。
─とあるS級冒険者の鑑定眼─
【名前】 ミズタン Lv.25
【種族】 魔族スライム目 液晶スライム
【ステータス】 覇王の眷属
【スキル】 鉱石鑑定、二足歩行逃避
じゅうたん探索、消化・吸収
鉱石擬態、ナビゲート、聖水精製
ウーォターベッド、忍び足
保護水膜 、 魔素吸収、念話
状態異常魔法還元、粘液玉
死霊ノ戦士化、剣術




