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 ガキーーンッ!


 爬虫人とアクヤの間に、黄金に輝く光の壁が出現した。蛮刀がそれに触れた瞬間、爬虫人が後方へと吹き飛ばされる。


 それは、オニオーとの戦闘で繰り広げられた光景と、まんま、同じだった。


(やっぱり、蛮刀にはいざと言う時のために、自爆機能がついているんだわっ!!

 魔物たちも、心は歴戦の騎士なのねっ!! )


「ぅんなわけねーだろ……」


 一人感動するアクヤと、ボソッと呟くオニオー。


「ミズタン、糸弾発射っ!! 」


 相手がそこまで誇りを持って戦っているのだ。

 アクヤが手を抜く訳にはいかない。

 本気の追撃を開始した。

 指輪が丸く盛り上がり糸の玉が発射される。


「なっ!?」


 受け身を取って、こっちにくるっと向き直った爬虫人に糸弾が襲いかかる。


 あっという間に、蓑虫鰐のできあがりだった。





「貴方達、動いたらどうなるか、お分かりよね? 」


 (ボス)の危機に動こうとする爬虫兵をみて、アクヤがにっこりと微笑んだ。


 ブルブルと震えながら一斉に恭順の意を示し出しだす。


「おいっ!! てめぇーら巫山戯んじゃねー!! 」


 爬虫人の虚しい叫び声が、小鬼(ゴブリン)巣窟に響いたのだった。





「貴方は、まず、女王ノ巣窟(うち)で剣を抜いたことを、反省なさいっ! 」


 ミズタンチェアー(玉座)に腰掛けたアクヤが、言い放った。膝の上ではボスモフと漆黒狼(チビクロ)が、短い手足を広げながら縄張り争いを繰り広げている。

  ちょうどそれと向かい合うように、蓑虫鰐が座らされていた。


「ふんっ」


「あらっ? 貴方、まだ、自分の立場というものが分かっていないようね? 」


「けっ、てめぇが言ったんだろっ! 弱い奴は死ねってっ! それなら、さっさと殺しやがれっ! 」


「わかったわ。そこまで言うなら、生まれ変わりなさい」


 ぐるぐる巻きの糸が、黄金に輝いた。





「ぎゃはははははははははっ! 」


 長座の体制で座らされた蓑虫鰐が1人で笑っている。その足裏を、無数の糸がゾワゾワと蠢いていた。


「しぶといわね? 」


「……」


 優雅に紅茶を飲みながら、ボソッと呟くアクヤと、言葉を失うオニオー。ちなみに、紅茶はお婆ちゃまが、皆に入れてくれた。


 アクヤは、その昔、お兄様が教えてくれたことを思い出したのだ。

 魔物には足の裏を弱点とするのものがいて、たしか、二足歩行でかつ裸足で歩く、小型の魔物に多いと言っていた気がする。


その時アクヤ自身もお兄様に擽られたのだが、死ぬほど楽しくて、辛かった。アレならきっと、魔物にも効果絶大のはずだ。


 その想い出を基に、お仕置きに取り入れてみたにすぎない。


 一方、オニオーは心の中で、うち震えていた。

 魔衆は常に戦闘の世界に身を置いている。従って、ある程度の痛みには耐性があり、その過程で命を落とすのであれば、心の準備もできている。

 しかしながら、今正に、目の前で繰り広げられている光景は理解の範疇を超えていた。


 爬虫人(コボルト)は悦びながら、苦しんでいる。もし仮に、自分があんな目に合わされたら、早々に気が狂ってしまいそうだ。


「なっ!?」


 蓑虫鰐が再び黄金に輝きだした。体の形が変わってゆく。

 光が落ち着くと、異形の(ドラゴン)が姿を現した。

 顔面は今までより幾分凛々しく、その頭頂部には2本の立派な角が生えている。

 背中には、四枚の鮮やかな羽が生え、虹色に輝いていた。

 茶色の鱗に覆われていた体表は、銀白色に生まれ変わり、煌々と輝いている。


『 Yes, your Majesty! Yes, my Lord! 』


 やはり、新たな扉が開かれたようだ。


 ブルブルと震えるオニオーの隣で、満足そうにアクヤが微笑んだ。





 ─とあるS級冒険者の鑑定眼─



【名前】 蓑虫鰐 Lv1


【種族】 魔族爬虫(もく) 蓑虫鰐(コクーンダイル)

 

【ステータス】爬虫ノ王(コボルトキング)、特殊進化個体


【スキル】 威圧、話術、擽り耐性



【名前】 チョウさん Lv1


【種族】 魔族爬虫(もく) 蝶々竜(ドラゴンフライ)

 

【ステータス】爬虫ノ王(コボルトキング)、最終形態


【スキル】 威圧、話術、擽り耐性、門戸解放


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