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「下がりなさい、無礼者っ!

 何人たりとも、私の大切な者共に危害を加えることは、許しませんっ!! 」


 ガキーーーーン!


 鬼大男とアクヤ達の間に、黄金に輝く光の壁が出現した。振り下ろされた蛮刀がそれに触れた瞬間、鬼大男が轟音と共に後方へと吹き飛ばされる。


(何が起こったの ? まさか、自爆!? )


 ギャオーーーーン!


 ゆらりと立ち上がった鬼大男は、一吠えで舞い上がっている土埃を吹き飛ばした。


 蛮刀を拾い上げると、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


 ギャオーン!


 再び咆哮をあげる。誰かに命令を出しているようだった。


 ギャオーーーーン!


 さらに、苛立たしげに、より大きな咆哮をあげた。





「えっ!? 」


 取り囲んでいた小鬼達が、アクヤ達の前に進み出た。

 手にしている木製の棍棒のような武器を、鬼大男に向けている。中には、震えているものもいた。

 どうやら、こちらに加勢してくれるようだ。





 ギャオーーーーン!


 鬼大男が目を血走らせ、突進して来る。





(私が、守ってみせる! )


「ミズタン、鬼大男の蛮刀に水飴攻撃をお願いっ!」


 ビュッ


 吐き出された水飴が、蛮刀を捉えた。鬼大男がそのまま蛮刀を振り下ろしてくる。


「全員、退避っ! 己の身の安全を第1に考えなさいっ! 」


 アクヤの指示に、その場の全員が黄金に輝き出した。蛮刀が振り抜かれるよりも先に飛び上がる。


 アクヤもミズタン抱えられ退避した。


 ボフンッ!


 シュタッ!


 そのままミズタンベッドでバウンドし、地面に着地する。


 鬼大男は、地面に張り付いた蛮刀を引き剥がそうと苦戦している。


「今ですっ! 小鬼さん達、ヤっちゃってしまいなさいっ!」


 キョェェェェェエッ!


 小鬼達が一斉に飛び上がり、鬼大男に体当たりした。


 ギャーーーーッ!


 回避が間に合わず、鬼大男が地面に突っ伏した。


「貴方の罪はこの程度では許せませんっ!

 ボスモフ、ツボ押し攻撃よっ! 」


 ボスモフを筆頭にデカモフモフが次々と幼獣へと戻り、鬼大男に襲いかかった。

 黄金に輝やく無数肉球が、鬼大男を揉み下していく。


 いだだだだだだぁぁぁぁあッ!


 一段と大きな叫び声が辺り一帯に響き渡った。鬼大男は既に、戦闘不能だ。


「ミズタンっ! チビモフモフ魔法よっ! 」


 ボフンッ!


 鬼大男の頭上から、ミズタンベッドが襲いかかる。


 ぐえっ。


 鬼大男は小さくそう漏らすと、動かなくなった。





「貴方は弔い合戦を口実に、私の身柄を要求したのよね? その貴方が、守るべき仲間に刀を向けるとは言語道断っ!! 上に立つモノの風上にも置けないわっ!

 罪の深さを、その身に刻み込みなさいっ!! 」


 小さな岩に腰掛け、足を組みながらアクヤが言い放った。


 キョェェェェーーェエっ!


 頭上から『そうだそうだ』と言わんばかりの雄叫びが聞こえる。いつの間にか、いや、ずっとだったのかもしれないが、アクヤの肩にはベビリンが乗っかっていた。


 目の前では、ミズタンにぐるぐる巻にされた鬼小男が正座している。ベビリンより小さいその男は、生気を失いブルブルと震えていた。





 キョェェエーッ!!


 小鬼達が歓声をあげた。

 それに応えるようにアクヤがにっこりと微笑む。





「ちょっ、ちょっと!? 」


 アクヤが焦り出す。

 小鬼達が次々と、胸に手を当て片膝を付き始めたためだ。


(アクヤは女王として認められたようだ)


 ボスモフの複雑そうな声が、脳内で再生された。

 



 ─とあるS級冒険者の鑑定眼─



【名前】 アクヤ・クレイ Lv.20


【種族】 人族


【ステータス】 高位貴族、小鬼ノ女王(ゴブリンクイーン)


【スキル】 王子妃の教養(免許皆伝)

  回避、覇王の威圧、念話

  子守唄、忍び足、調教、口撃(マシンガン)

  指輪ノ加護(ウォーターリング)、神速、

  貴属魔法(初級): 物理反射、采配



【名前】 ミズタン Lv.18


【種族】 魔族水操玉(スライム)(もく) 液晶(えきしょう)水操玉(スライム)

 

【ステータス】 覇王の眷属、水操玉(スライム)の進化系


【スキル】 鉱石鑑定、二足歩行逃避

  じゅうたん探索、消化・吸収

  鉱石擬態、ナビゲート、聖水精製

  ウーォターベッド、忍び足

  保護水膜 、 魔素吸収、念話

  状態異常還元、粘液玉



【名前】 ボスモフ Lv.15


【種族】 魔族魔狼(もく) 水游狼(アクアファング)

 

【ステータス】 群れの長、従魔


【スキル】 遠吠え、潜水、甘え上手、索敵

  念話、指圧の極み


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