13
「下がりなさい、無礼者っ!
何人たりとも、私の大切な者共に危害を加えることは、許しませんっ!! 」
ガキーーーーン!
鬼大男とアクヤ達の間に、黄金に輝く光の壁が出現した。振り下ろされた蛮刀がそれに触れた瞬間、鬼大男が轟音と共に後方へと吹き飛ばされる。
(何が起こったの ? まさか、自爆!? )
ギャオーーーーン!
ゆらりと立ち上がった鬼大男は、一吠えで舞い上がっている土埃を吹き飛ばした。
蛮刀を拾い上げると、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
ギャオーン!
再び咆哮をあげる。誰かに命令を出しているようだった。
ギャオーーーーン!
さらに、苛立たしげに、より大きな咆哮をあげた。
「えっ!? 」
取り囲んでいた小鬼達が、アクヤ達の前に進み出た。
手にしている木製の棍棒のような武器を、鬼大男に向けている。中には、震えているものもいた。
どうやら、こちらに加勢してくれるようだ。
ギャオーーーーン!
鬼大男が目を血走らせ、突進して来る。
(私が、守ってみせる! )
「ミズタン、鬼大男の蛮刀に水飴攻撃をお願いっ!」
ビュッ
吐き出された水飴が、蛮刀を捉えた。鬼大男がそのまま蛮刀を振り下ろしてくる。
「全員、退避っ! 己の身の安全を第1に考えなさいっ! 」
アクヤの指示に、その場の全員が黄金に輝き出した。蛮刀が振り抜かれるよりも先に飛び上がる。
アクヤもミズタン抱えられ退避した。
ボフンッ!
シュタッ!
そのままミズタンベッドでバウンドし、地面に着地する。
鬼大男は、地面に張り付いた蛮刀を引き剥がそうと苦戦している。
「今ですっ! 小鬼さん達、ヤっちゃってしまいなさいっ!」
キョェェェェェエッ!
小鬼達が一斉に飛び上がり、鬼大男に体当たりした。
ギャーーーーッ!
回避が間に合わず、鬼大男が地面に突っ伏した。
「貴方の罪はこの程度では許せませんっ!
ボスモフ、ツボ押し攻撃よっ! 」
ボスモフを筆頭にデカモフモフが次々と幼獣へと戻り、鬼大男に襲いかかった。
黄金に輝やく無数肉球が、鬼大男を揉み下していく。
いだだだだだだぁぁぁぁあッ!
一段と大きな叫び声が辺り一帯に響き渡った。鬼大男は既に、戦闘不能だ。
「ミズタンっ! チビモフモフ魔法よっ! 」
ボフンッ!
鬼大男の頭上から、ミズタンベッドが襲いかかる。
ぐえっ。
鬼大男は小さくそう漏らすと、動かなくなった。
「貴方は弔い合戦を口実に、私の身柄を要求したのよね? その貴方が、守るべき仲間に刀を向けるとは言語道断っ!! 上に立つモノの風上にも置けないわっ!
罪の深さを、その身に刻み込みなさいっ!! 」
小さな岩に腰掛け、足を組みながらアクヤが言い放った。
キョェェェェーーェエっ!
頭上から『そうだそうだ』と言わんばかりの雄叫びが聞こえる。いつの間にか、いや、ずっとだったのかもしれないが、アクヤの肩にはベビリンが乗っかっていた。
目の前では、ミズタンにぐるぐる巻にされた鬼小男が正座している。ベビリンより小さいその男は、生気を失いブルブルと震えていた。
キョェェエーッ!!
小鬼達が歓声をあげた。
それに応えるようにアクヤがにっこりと微笑む。
「ちょっ、ちょっと!? 」
アクヤが焦り出す。
小鬼達が次々と、胸に手を当て片膝を付き始めたためだ。
(アクヤは女王として認められたようだ)
ボスモフの複雑そうな声が、脳内で再生された。
─とあるS級冒険者の鑑定眼─
【名前】 アクヤ・クレイ Lv.20
【種族】 人族
【ステータス】 高位貴族、小鬼ノ女王
【スキル】 王子妃の教養(免許皆伝)
回避、覇王の威圧、念話
子守唄、忍び足、調教、口撃
指輪ノ加護、神速、
貴属魔法(初級): 物理反射、采配
【名前】 ミズタン Lv.18
【種族】 魔族水操玉目 液晶水操玉
【ステータス】 覇王の眷属、水操玉の進化系
【スキル】 鉱石鑑定、二足歩行逃避
じゅうたん探索、消化・吸収
鉱石擬態、ナビゲート、聖水精製
ウーォターベッド、忍び足
保護水膜 、 魔素吸収、念話
状態異常還元、粘液玉
【名前】 ボスモフ Lv.15
【種族】 魔族魔狼目 水游狼
【ステータス】 群れの長、従魔
【スキル】 遠吠え、潜水、甘え上手、索敵
念話、指圧の極み
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