ワンナイトの猛者
「あ、隣いいかな?」
「え?あ、はい…。」
今俺は合コンに来ている。
場所は学生の懐にも優しい大衆居酒屋。
同じ大学の友達が他の大学の女の子とバイトが一緒で仲良くなったという事で、今回の合コンがセッティングされた。
自己紹介と乾杯を済ませ、小一時間経過し、男連中は各々狙いを定め動き出した。
俺は高峰陽。二十歳の大学生だ。
高校時代は地味だったが、大学に入ってからは身嗜みにも気を使い、顔もまあまあ整っていたので、周りからはモテるタイプだと思われている。
実際は高校時代に彼女はいたものの、そんなに女性経験があるわけでもない。
念願の大学生活、楽しもうと思い、大学デビューに成功した。
合コンには何度も参加して、”お持ち帰り”も数えきれないほど成功している。
そんな俺の必勝法は、ズバリ!地味目の女の子を狙う、だ。
ぶっちゃけ、遊んでいる風の子は俺には敷居が高い。
俺だって経験豊富と言えるほどではないんだ。
だから、俺でもリード出来そうな子を狙う。
この子、男と付き合った事あんのかなー、って子だ。
そして今日はこの子。
確か、名前は秋月朋美、だったかな?
まあ、ワンナイトのつもりだから、名前なんてどうだっていいか。
合コンが始まってから、皆で盛り上がっていたが、この子だけ隅で大人しくしていた。
俺以外の男連中は、清楚系のかわいい子に殆どが夢中。
おいおい、いいのか?その子は俺の見立てだと、結構遊んでるぞ?
他にはちょっと遊んでるっぽいギャル系の子に一人が猛アタックを掛けている。
うん、お前はなかなか見る目があるな。
飲み会での動きを見ている限り、その子は当たりだ。
遊んでいる風ではあるが、多分男に尽くすタイプだぞ?
そして俺が狙っているのが、このボッチっぽい子。
俺以外の男は見向きもしない。
会話も殆どせずに、一人で隅っこで大人しくしている。
こういう子でいいんだよ!
地味ではあるが、顔はそう悪くない。
身体も服の上からではあるが、なかなかだと思う。
「朋美ちゃんは、彼氏いないの?」
「あ、えっと、い、いません。あの、高峰くんは?」
「ああ、いない、いない。俺ってモテなくってさー。」
嘘だ。大学内では結構モテるほうだ。
けど、特定の彼女作ったらメンドくさいだろ?
今はとにかく遊びたいんだ。
経験は大事だしね。
「えー?高峰君、モテそうなのに?」
「あ、嬉しいね!そう思ってくれてるんだ?」
「え、はい。そう見えますよ?」
「そう?全然そんなことないんだけどね?」
「そ、そうなんですか。」
「朋美ちゃんの方こそ、彼氏いないなんて信じられないなー。」
「え、そんなことないですよ、私なんか。」
「いやいや、俺はめっちゃ好みだけど。」
「う、嘘ばっかり!私なんかが好みなんて…。」
「いや、ホントだよ、俺、彼氏に立候補していい?」
まあ、彼氏になるつもりはないけどね。
「え、ほ、ホントに?」
「うん、どうかな?」
「そ、そんな急に…。」
「俺、この出会いは大事にしたいな。」
「…わ、私なんかでいいんですか?」
「私なんかなんて言わないでよ。朋美ちゃんがいいんだ。」
「ホントですか?」
よし、イケそうだな。
「ね、二人で抜けない?二人っきりで話したいんだ。」
「あ、は、はい…。」
よっしゃ!
幹事の友達に声を掛けて、二人で抜け出した。
「あ、あの、二人っきりで話すってどこで?」
歓楽街を歩いていると、朋美ちゃんが聞いてくる。
いいね、ラブホなら選び放題だね。
「朋美ちゃん、いい?」
肩を抱いて、朋美ちゃんの耳元で囁く。
緊張しているのか、俯いて頷く朋美ちゃん。
いいね!初々しくて!何でも言う事聞いてくれそうだ!
初めてだったりするんかな?
大丈夫!優しくするから!
ラブホ内に入る。
「朋美ちゃんはどの部屋が良い?」
「あ、あの、高峰君の好きなので…。」
「じゃあ、この部屋にしよっか。」
適当に選んだけど、正直俺は部屋なんかどうだっていいんだよね。
流石に俺もちょっとだけ緊張してきた。
しっかりリードしてあげないとな。
えーっと、ちゃんと雰囲気作って、前戯は長めに、ゆっくりと。
朋美ちゃんが不安にならないように、気を付けよう。
例えワンナイトだとしても、いい思い出にして欲しいしな。
女の子への気遣いは大事!
これがモテる男の条件だ!
あ、でも、初めてだったら付き合ってくれとか言われないかな…。
そうなったらメンドくさいな。
何て言って断ろうかなー。
付き合う振りだけしてセフレって手もあるか。
で、しばらくしたら他に好きな人が出来たとか言えばいいかな。
そうだ、そうしよう。
二人とも無言で部屋に向かう。
そして、朋美ちゃんの腰を抱いて部屋に入る。
いざ!
「あ、寒いからお風呂、お湯溜めるねー?」
え?あれ?
「どうするー?一緒に入るー?」
え?と、朋美ちゃん?
「あ、さ、先に入っていいよ?」
「そう?一緒じゃなくていいんだ?」
「え?あ、ああ。」
「お風呂溜まるまでお話する?」
「う、うん?」
「あれ?高峰君、こういうトコあんまり慣れてない?」
「え?いや、そんなことないと思うけど…。」
「だよねー、モテそうだもんねー?」
え?雰囲気違い過ぎじゃない?
「あ、お風呂入って来るねー?」
「あ、うん。」
「高峰君も我慢できなかったら入ってきてもいいよー?」
あれ?俺のリードは?
なんか朋美ちゃん、こなれてない?
これ、どう考えても初めてじゃないよな…。
思ってたのと違う…。
そして、事後。
全然リード出来ませんでした。
逆にいいようにされたような気が……。
「高峰君って結構、淡白?」
えっ?淡白って…?
「え、ど、どうなんだろう?」
「もっとがっついてくるのかと思ってた。」
「そ、そう?」
「うん。もうちょっと積極的でもいいと思うなー。」
「そ、そうなんだ……。」
「あ、でも、優しくしようとしてくれてたのは、嬉しかったかも!」
「あ、ありがとう…。」
前戯が足りなかったのか?
それとも早かったのか?
わからん、ぜんぜんわからん。
どうだった?とか怖くて聞けない。
なんなんだ、コレ。
「あ、あと私、彼氏いるからー。付き合うとかは無しでね?」
「あ、そ、そうなの?」
「うん。だから今日だけ、ね?ごめんね?」
「あ、はい。」
どうやって付き合うのを断ろうか考えてたのに…。
「どうする?もう一回する?」
「あ、お、俺明日早いから…。」
「じゃあ、もう帰る?」
「あ、はい。」
ホントになんなんだ、コレ。
なんだかわけのわからないまま、朋美ちゃんとは別れた。
「んー、見た目は75点ってところだけど、エッチは30点だったなー。まだまだですね、なんちゃってヤリチン君?」
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