第一話 『二人の能力の使用用途』
「――あれ? 私さっき、何の話をしてたっけ?」
「え、何か言ってた?」
「……?」
「ほらほら、早く行こ!」
そう言って、女性たちは何処かへ歩いて行った。
その一方の僕が記憶を消した女性の足取りは、記憶を消す前と比べるとかなり軽くなっているように見えた。
僕はいつもこうして、『人の記憶を消す』という能力を利用して、人の役に立つような事をするのを努力している。
僕の能力を知った人に、以前こんな事を言われたことがあった。
「自分にとって都合の悪いことは、全て消しているんじゃないの?」
「頼まれて警察の記憶とかを消して、犯罪に協力してるでしょ?」
確かに、やろうと思えば出来る話ではある。
でも、この能力をそんな酷いことに使ったり、使わせてあげようとは思わなかった。
だから僕はいつもこの能力を使った相手に対して、僕と出会った記憶も消すようにしている。
昔みたいに、僕自身が悪用されない為に。
「なぁなぁ、この前の動物園の遠足、楽しかったよなぁ!」
「うん! 雪男とか恐竜とか……、オレらの何倍もデカかった!」
男児二人は仲良さそうに、ありもしない遠足の思い出で盛り上がっていた。
俺は二人のバカみたいな話を聞いているのに飽きたから、すぐに傍を離れた。
俺はよく、『人の記憶を作る』という生まれ持ったこの能力を使って、人を嘲笑うのを楽しんでいる。
昔、俺の能力を知った人間が、俺に対してすげぇ訴えてきた事があった。
「折角そんな素敵な力を神様から受け取ったんだから、人が笑顔になるような使い方をしたらいいのに……」
「あなたの力は、きっと沢山の人を幸せにできるのに……。勿体ないわ……」
まぁ、俺もガキの頃はそんな事を思っていた。
でもな、この世界は狂っている。イカれた人間どもの溜まり場だ。
だから俺は能力を使うとき、マンガとかに出てくるような現実的じゃないものを埋め込んで、そいつらが盛り上がってんのを眺めてやるんだよ。
俺が、こいつらをバカにする為に。




