プロローグ 『記憶を操る大学生』
「――でさ……、私ホントに恥ずかしい思いをして……」
「まぁまぁ、もう過ぎたことは仕方ないよね~」
「あぁもう……、『この記憶、消したい』んだけど……」
『記憶を消したい』
そんな言葉が聞こえたとき、僕はその女性の元へ向かった。
「……ちょっとすいません」
「え……? 何ですか……?」
「今、『記憶を消したい』と仰いましたよね?」
「あぁ……、まぁ確かに……。で、それが何ですか?」
女性は怪訝な顔をしながら僕を見た。
僕はそんな状況を気にせず、リュックからスケッチブックと画材を取り出して言った。
「あなたのその記憶、僕が消してあげますよ」
「はぁ……、行きたかったな……」
「ね……。何でよりによって、遠足の日に雨なんだろ……」
「なんかさ……、遠足に行ったー的な、『記憶を作り出す』ことって出来ないのかな……。」
『記憶を作りたい』
そんな言葉が俺の耳に届いたとき、俺は二人の男児の元へ歩いた。
「おいそこのチビ」
「え……、何……」
「てか、オレたちチビじゃねぇし……」
「んな事いいから。さっきさ、『記憶を作りたい』って言ったよな?」
「ま、まあ……」
「言ったけど……」
男児たちはイタい視線を俺に向けた。
俺はそんな事を気にせず、ショルダーバッグからタブレットとタッチペンを取り出して言った。
「お前らの作りたいって言った記憶、作ってやんよ」