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電脳勇者の廻界譚 RE!~最弱勇者と導きの妖精~    作者: お団子茶々丸
第2章・純白の騎士
24/111

第21話 灼熱のコロシアム

翌日・ビオニエの町・コロシアム



~観客席~


 トーナメント会場は多くの見物客で賑わい、一大コンサートのような大盛況ぶりを見せていた。もう少し会場に来るのが遅ければ、席を確保するのも難しかっただろう。


 押し寄せた観客の誰もがトーナメントの開幕を、今か今かと待ち続けている。


「うっわぁ、すっごい人だな‥‥ヘイゼル大丈夫かなこれ」


「トーナメントと言っても、参加者のレベルはそれほど高くはなさそうですし」

「ヘイゼルさんの腕なら余裕でしょう」


 売店で購入したお菓子をつまみながら、エイミーはのんきな様子で答える。僕とは違って、緊張している風にはとても見えなかった。


 というか、お菓子を買うお金はあるんだな‥‥。


「ご来場の皆様!!お待たせいたしました―――!!!」

「これより!第565回ビオニエ・トーナメントを開幕いたします!!!!!」


「!」


 奇抜な服装に身を包んだ男が、マイクのような物を片手にトーナメントの開幕を堂々と宣言する。

 司会者の呼びかけに反応し、会場は一層の盛り上がりを見せる―――!


「おお!血で血を洗う闘争が遂に始まりますよ、ジル様!」


「怖いこと言うなって」


 目をキラキラとさせながら、興奮のあまり羽をうるさくバタつかせるエイミー。メルヘンチックな妖精が、血で血を洗う闘争でテンション上がってんじゃねえよ‥‥。



「それでは早速、試合を始めていきましょう―――!!!」

「大注目の第一回戦!!出場する選手はこの二人だーーー!!!!!」


 司会者の掛け声と共に、二人の選手が入場する―――――。


「やっちまえーー!!ゾルグーー!!!」


「かっこいいぞ“聖都の騎士”!!」


「今回もぶっちぎりの優勝だーー!!」


 盛大な歓声を浴びながら、鎧姿の大男が姿を現した――――!


「西の方角!!エントリー№2!“血斧のゾルグ”!!」

「聖都でも名の通った騎士であり、その圧倒的な巨躯から繰り出される一撃は巨大な岩石をも砕くという、ケタ外れの威力!!!」


「前回の大会では全ての対戦相手を一撃で倒し、見事優勝を収めた選手でもあります!!」



「何か強そうなのが出て来たな‥‥」


「聖都の騎士ですからね、外征騎士の護衛を任されるレベル‥‥でしょうか」


 全然参加者のレベル低くないじゃん!普通に強敵だろそれは!


「ヘイゼルと当たらなきゃいいけど―――」



「東の方角!!!エントリー№30!!!本大会初出場!謎の美女ヘイゼル!!」

「魔法が使えるということ以外は全て謎の、命知らずのチャレンジャーです!」


「ええ!!?」


「なんとぉ!?」


 僕たちは思わず観客席から身を乗り出し、驚きを隠せないでいた。

 司会者のアナウンスと共に、東の入場口からヘイゼルが姿を現す――――。


「誰だあれ」

「いきなり前回優勝者と対戦とか…運がないな」


「五体満足で帰れるといいけど」


「結構かわいいな、彼女」


「ヘイゼルって‥‥あの忌み魔女?!」


 ゾルグの時とは真逆に‥‥ヘイゼルが入場した瞬間、会場は少しざわつき始めた。

 盛り上がっているというより、こそこそと犇めき合っている感じだ。


「エイミー!これやばくないか!?」


「そうですか?」


 そうですかって。


「どう見たってやばいだろ!前回優勝者だぞ!?」


 その上、聖都の騎士で血斧のゾルグとかいう肩書きまで持ってるし‥‥怪我させられる前に、早く棄権した方がいいに決まってる!


「もう!男の癖にみみっちいですね‥‥少しは彼女を信頼してあげたらどうです?」


「うっ」


 信頼。

 確かに仲間として彼女の力を信じてあげたいけど‥‥傷つく姿は見たくない。


「それにジル様が思ってるほど、ヘイゼルさんはやわじゃないと思いますけどね」


「?」



「前回優勝者相手に、新進気鋭のチャレンジャーはどう立ち向かうのか!!!」

「実力差がありすぎる組み合わせですが―――これもビオニエ・トーナメントの魅力の一つ!!」

「では!張り切って参りましょう!」


「試合開始―――――!!!!!!!」



「・・・ヘイゼル」


 始まった――――!




「―――ふん、実力差がありすぎる‥‥か」

「彼女の隠しきれない魔力から察するに、俺との実力差は間違いなく“互角”レベルだろう」


「全く‥‥他人の実力もロクに見定められぬ節穴どもばかりで嫌になる」

「貴公もそう思わないか」


 ヘイゼルを見下ろしながら、巨躯の騎士は尋ねる。


「御託は良いわ、さっさと始めて」


「‥‥ふ、ははははは!!!」

「面白い、そう来なくては!!」


 ゾルグは、自身の身の丈の倍以上もある巨大な戦斧を構え―――高々に宣言する。


「我が名はゾルグ、栄えある聖都グランエルディアの騎士!!」

「貴公を強者と見込んで、最初から全力で行かせてもらう!!」


「いざ――――!!!!!!」


 巨大な体からは想像もできないほど軽い身のこなしで、ゾルグは宙へと飛び上がった!



「おいおい!!アレをやる気か!!」

「相手が死んじまうぞ!!」


「勝負あったな、これ」


 観客がどよめている‥‥何か大技を放つつもりか?

 いや、それにしても―――。


「なんて脚力だ…!」


 あれだけ重厚な鎧を全身にまとって、あんなに高く飛翔するなんて―――!!


「おおーっと!!これはーーー!」

「いきなり奥義を繰り出す優勝者ゾルグ!!初出場の女の子を相手にこれは少し大人げないぞーーー!!!」



「一撃で決めさせてもらう‥‥!」

血斧斬(けっふざん)!!!」


 数十mの上空から、ゾルグは一直線にヘイゼルへと飛び掛かった――!!

 数々の冒険者を屠った数百キロの巨大な戦斧が、ゾルグの剛腕によって無慈悲に振るわれる!


「ヘイゼル‥‥!」


 あんな華奢な体で、2倍以上の体格を誇るゾルグの一撃を受けてしまっては―――命すら危うい。


 観客の誰もがヘイゼルの敗北を確信した。



「アグニーラ」


「!!!」



 しかし―――ゾルグの攻撃がヘイゼルに命中することは無かった。



「馬鹿な!」


 ヘイゼルが突如展開した巨大な炎の槍によって、必殺の一撃はいとも簡単に食い止められてしまったのだ。


「な、なんということだーー!!!」

「チャレンジャーがチャンピオンの一撃を、防ぎきってしまったーーー!!!!」


「嘘だろ!?」

「ありえない‥‥ゾルグの一撃を、あんなに容易く!」


「なにもんだよアイツ!!」


 ゾルグの実力を知る司会者や観客たちは予想外の展開に、困惑し、口々に騒ぎ合っていた。



「ッ―――」


「勘違いしていたみたいだけど、私とアンタの実力は互角じゃないわ」

「比べるのも馬鹿馬鹿しいくらい‥‥私の方が強い」


「他人の実力もロクに見抜けない節穴は、アンタも同じだったみたいね」


「おのれ‥‥!!」


「アグエル」


「ッ?!」


 ヘイゼルによって繰り出された、巨大な炎の柱がゾルグを襲う―――!


「ぐおおおおおお!!!!!」


 その場から一歩も動くことすらできず‥‥ゾルグは炎に呑まれ続けた。

 もはや彼に、一片の逆転の余地はない。



「勝負ありましたね」


 結果を見据えていたかのように、特に驚きもしない様子でエイミーは涼し気に言い放った。


「何か‥‥ヘイゼル強くね?」


 僕と戦った時も、あんなに強かったっけ‥‥?


「まぁ、200年を生きる魔女ですし」

「何せ<神刻>を発動したジル様相手に一歩も引けを取らなかったんですから‥‥相当な実力者ですよ、彼女」


「―――もしかしなくても、ヘイゼルって僕より強い?」


「当たり前でしょう!外征騎士が直接出向いてくるくらいのレベルって相当ですよ?」

「<神刻>無しなら100%勝ち目無かったですからね」


「―――」


 エイミーの魔法のお陰で運よく勝てたってことか。


 よし、これからはあまりヘイゼルに歯向かわないようにしよう。



「し、勝負ありーーーーーーー!!」

「血斧のゾルグ、ヘイゼルの強力な魔法の前に、為す術もなくダウンしてしまったーー!」



「ゾルグが負けた!?」


「すげぇ‥‥ナニモンだよあの嬢ちゃん!」



「なんという番狂わせ!!前回優勝者、初戦敗退です――!!!!!」

「勝ち上がったのは、無名の美女!!ヘイゼルです!!」


 思わぬ展開に、観客たちは大いに盛り上がる―――!

 しかし――そんな彼らの声など気にも留めずに、ヘイゼルはさっさと舞台から退場してしまった。



~選手控室~


 番狂わせの一戦を、舞台袖より熱心に見つめる影が一つあった。


「決勝で当たるのはゾルグさんだと思っていたけど、まさか初戦で敗退なんて‥‥」

「謎の美女ヘイゼル、か」


「どうやら決勝の相手は、彼女で決まりっぽいね」


 一筋縄でいく相手では無さそうだ。

 

 ―――ギルドの期待を裏切らない為にも、本気でいくとしよう。


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