表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳勇者の廻界譚 RE!~最弱勇者と導きの妖精~    作者: お団子茶々丸
第1章・旅の始まり
21/111

幕間の話 巨悪

 時は少し遡る。


 ジル達がソルシエを倒し、ベローに別れを告げた頃‥‥とある地にて。




「おっ!?」


「おおおっ!?」


 何か面白いものを見つけたかのように、“怪物”は声を上げた。


 鋭い目を大きく開き、天を仰ぐように空を見上げている。


「どうしました、バルトガピオス様」


「いや‥‥いま、何か凄くビビーっと来た!!」

「ゲラルフちゃんは何も感じなかった?!」


「特に何も」


 バルトガピオスの従者、ゲラルフと呼ばれた魔物は‥‥まるで興味がないように吐き捨てた。


「そっかぁ‥‥ま、ゲラルフちゃんはマグロだし、仕方ないか!!」


「―――はぁ」


「ぐぼぉっ!?」


 禁句に触れたバルトガピオスを諫めるように、ゲラルフは手に持った巨大な斧で彼女の首を切り落とした。

 

 どす黒い鮮血が溢れ、身体から噴水のように吹き出している。


「失礼、手が滑りました」


「あっはははは!もう!ひどいなぁゲラルフちゃんは」


 バルトガピオスは切り落とされた自らの首を拾い上げると、何事もなかったかのように胴体へと接着した。


「冗談が過ぎるからです」


「ごめんごめん」

「でも、ビビッと感じたのは冗談じゃない」


「魔王様の目覚めも近そうだし‥‥そろそろ、あちら側も目覚めだす頃かもしれないからね」


「なッ!」

「まさか、勇者が!?」


 血の気が引いたように、ゲラルフはバルトガピオスへと問い返す。さっきまでの冷静さは、今の彼女からは見る影もなく消え失せていた。


「まだ憶測の域を出ないけど、確率は結構高いと思うよ~」

「あれ?もしかしてゲラルフちゃん、ちょっとビビってる?」


「当たり前でしょう!」

「勇者に対抗できるのは魔王様だけ、その魔王様が不在な今、あちらに先手を打たれてしまっては‥‥」


 外征騎士だけでも厄介なのに、その上勇者まで‥‥!


「まぁまぁ落ち着きなよ」

「少なくとも勇者はまだ、完全に目覚めてはいない―――羽化する前の不完全な状態さ」


「それに、先の大戦の影響で外征騎士達は勇者という存在を信用してはいないし、奴らが手を組むことはないだろうねぇ~」


 不安を募らせるゲラルフとは対照的に、バルトガピオは物怖じすることなく、楽観的に笑い飛ばした。


「先の大戦‥‥魔王ルドニールが起こした聖都との戦争ですか」


「そ」

「うちの魔王様が眠ってる間に好き勝手やってくれたみたいだけど、結局当時の外征騎士たちにやられちゃったみたいだね」


「ははっ、ルドニールのヤツの死に顔、本当に滑稽だったなぁ!」

「ぶふっ!駄目だ‥‥今思い出しただけでも笑いが――ぷぷっ!」


 思い出し笑いをかみ殺しながら、彼女は不気味に体をうねらせる。


「―――本当に、趣味が悪いですね」


 ありたっけの侮蔑の視線を、バルトガピオスへ向けるゲラルフ。上司とはいえ、彼女の性癖にはほとほと寒気がする。


「ぷぷっ‥‥ふぅ」

「さて、じゃあ行ってくるわ!」


 ようやく笑いが収まったのか、彼女は落ち着きを取り戻した力強い声色で言い放った。


「どちらへ?」


「勇者の所に決まってるじゃん!暇つぶしがてら、ちょっと探してくる!」

「芽を出す前に摘んでおけば、これから安心してユフテルを攻略できるしね~」


 怪物は何か言いたげなゲラルフなど気にも留めず、超常的なスピードで一瞬にして姿を消した。


「ふふふっ!!勇者の脳みそってどんな味がするのかなぁ!」

「本当に、楽しみだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ