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2.家庭教師

レティシアが12歳になった年だった。

もうすぐ7歳になるアリスとセシルに家庭教師がつけられることになった。


伯爵令嬢だった夫人が自分が7歳になる年に家庭教師をつけられた、

そのことを思い出したからだった。


だが、いつも子供たちの面倒を見ることが無い夫人は、

夫である伯爵に家庭教師を頼んだだけで、それっきりだ。


貧乏な伯爵家では家庭教師を一人しか呼べず、しかも短時間しか頼めなかった。


子爵家の出身のアンナ先生が週に一度来てくれることになったが、

まだアリスとセシルは字が読み書きできなかった。


本来なら家庭教師を呼ぶ前に字の読み書きができ、

絵本などで勉強しているのが普通だ。

一から教えなければいけないことにアンナ先生は驚いたが、

アリスとセシルに読み書きから教えることにした。


これまで自由に遊ぶだけだったアリスとセシルは、

最初は楽しそうにしていたが、すぐにあきてしまった。


何度言っても間違えるし、真面目にやる気もない。

先生がアリスに教えている間、セシルは逃げ出そうとするし、

セシルに教えている間、アリスはぼうっとしていて練習しようとしない。


ついには逃げ出そうとするアリスとセシルに、

先生だけではなくレティシアもつきっきりになって教える羽目になってしまった。


レティシアだけなら難しい教養本を使って授業をすることもできたのだが、

アンナ先生だけでアリスとセシルを見るのは難しかったのだ。



結局ここでもレティシアの勉強は後回しになってしまい、

気の毒に思ったアンナ先生はレティシアへ宿題を出すことにした。


レティシアが勉強できるのは双子が寝た後の時間で、

一人で夜遅くまで勉強していることに誰も気が付かなった。


アンナ先生はレティシアの優秀さは素晴らしいと思ったが、

双子を優先して思ったように教えてあげられないことを残念に思っていた。


レティシアだけに教えることができたなら、

どれだけ素晴らしい才能が開花するだろう。

伯爵家が財政難であることは知っていたので無理は言えなかったが、

せめてレティシアの才能だけは認めてほしいと願っていた。


アンナ先生から伯爵へとレティシアについての報告書が提出されていたが、

貧乏伯爵領を立て直そうと忙しい伯爵がその報告書を見ることは無かった。


アンナ先生は伯爵から何も返答がないことにがっかりしたが、

他家の令嬢の教育にこれ以上口出しすることはできずあきらめるしかなかった。




「お母様!見て!手紙が書けるようになったの!」


「あら、セシル。手紙が書けるようになったのね、アリスは?」


「アリスも書けた!」


「…レティシアは?」


「レティ?何も書いてないよ?」


「うん、レティは見てるだけ。」


「はぁぁ。またなの…本当にあの子は何もできないのね…。」






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