表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】薬で幼くなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖女は錬金術師に戻ります―  作者: 奏多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/109

思いがけない話を聞きました

「ふふ、戯れだ。リズ自身も乗り気ではないようだしな」


 そう女王陛下が水を向けてくれたので、私は必死にうなずく。


 王妃なんてとんでもない。

 目立つとアリアが何をしてくるかわからないのに、未来の王妃になんて、恐ろしくて想像もできない。

 ほっとしていた私だったが、女王陛下はさらなる爆弾を落として来た。


「では、ディアーシュの婚約者などどうだ?」


「…………え?」


 素で驚いてしまう。

 そして、すぐに「そんなそんな」とあいまいに否定しておけばよかったのに、私は思わず想像してしまったのだ。


 婚約した自分とディアーシュ様の姿を。

 もちろん、想像図は十七歳の私なんだけど。それでもディアーシュ様は背丈が高くて見上げるんだろうなとか、婚約の発表をするなら盛装をするだろうけど、どんな服装も素晴らしく映えるのだろうなとか。色々考えてしまった。


 そして私は、どんな服装なら見劣りしすぎない状態になるのか、考えそうになってしまって……。


「年齢差がありすぎでは?」


 ディアーシュ様の言葉に、ハッと我に返った。

 次いで、猛烈に恥ずかしくなる。


(どうして私、婚約した状態を想像しちゃったんだろう)


 なんか、自分だけその気がある人みたいでいたたまれない。ディアーシュ様は考えもしなかっただろうに。


「あと五年もすれば、さしてひどい年齢差には見えないだろう?」


「婚約時点で幼いのでは、どう考えてもおかしいでしょうに」


 楽し気な女王陛下の言葉に、ディアーシュ様は渋い表情になる。


「しかし、どういう形ででも公爵家の縁とするか王家の縁にしなくては、どこかに取られてしまうやもしれんが?」


 ディアーシュ様は黙り込み、女王陛下が笑う。

 私は誰かにほいほいついて行く気はないし、恩を忘れてディアーシュ様達に不利なことはしないつもりだ。けど、女王陛下が言っているのは、そういうことじゃないんだろう。


 権力者との縁がないと、足元をすくわれるかもしれない、と心配しているのだ。

 そこで女王陛下が話を変えてくれた。


「さて流炎石か。ツォルンも度々我が国から取り寄せていた品ではある。量が確保できれば、十分に取引材料になるであろう。よくやった」


 褒めてもらえて、私も嬉しい。

 頑張った甲斐があった。


「これで取引をしたら、ラーフェン王国の方も我が国が窮しておると認識するだろう。その間に……」


「食料を問題なくひそかに生産し、各地に行き渡るようにしつつ、問題の聖女の力を削ぐ方法を模索します」


 ディアーシュ様の回答に、女王陛下は眉をひそめた。


「大丈夫なのか?」


 そう問いかけるのだから、女王陛下はディアーシュ様がどうやってアリアの持つ力を削ぐつもりなのか、わかっているのだと思う。

 心配するような、危険なやり方なのかな?


「できる限りのことをしなくては。さもなければ、いかに錬金術があったとしても、王国を維持し続けられるかわかりません」


 ディアーシュ様の懸念はわかる。


「水も風も、ゆっくりとですが精霊不在の影響を受けて、滞り、減ることが予想されています。影響を受けにくい鉱石は、それを目的とした他国からの侵略を招く可能性もあります。今年と来年を乗り越えられても、あの聖女以外にも国に害を成しそうな人間は多いのですから」


 そう。

 精霊の影響力は、植物が一番強く受けている。

 他の物は、アインヴェイル王国以外からの影響もあるので、精霊の援助を失ったとしても、一気に悪くなるものではないのだ。


(ディアーシュ様は、現状を維持できている間に、どうにかしたいんだと思う)


 ただ私には、どういう手段があるのかわからない。

 黙って聞いていると、女王陛下がため息をついた。


「そなたが言い出したということは、魔王が関係していると、そう思っているのだな?」


 私は目を見開いた。

 ――魔王!?

 ディアーシュ様はうなずく。


「唐突に、人に精霊を操れる力を与えられる存在など、魔王しかいません」


「……どうする気なのだ?」


 女王陛下ではなくとも、疑問に思うだろう。魔王が関与しているとして、どうやってそれを止めるのかなんて。


「交渉は試すつもりです」


(アインヴェイル王国にとって、魔王は交渉できる相手なのかしら?)


 レド様だって錬金術の師匠になってくれている。話を聞いてくれる人かもしれないけど。


(もしかしたら、アリアに騙されて力を与えてしまった可能性だってあるし……)


 人の良い(?)魔王だとしたら、お願いのしようもある。

 そう思い込もうとした私だったけれど、どこか不安のようなものが心の中に湧きあがって、王宮から帰るまでの間も消えてくれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 婚約話について王子様の時とディアーシュの時のリズの反応の違い、女王様は気付いているんじゃないかな?
[一言] >権力者との縁がないと、足元をすくわれるかもしれない、と心配しているのだ。 ✕足元をすくわれる 〇足をすくわれる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ