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調合と私にかけられた魔法の問題点と

 四日間、寝ずの作業になる覚悟はしていたけど、レド様がものすごく手伝ってくれることになった。


「夜は数時間は手伝う。その間に、少し睡眠時間をとっておくように。昼は誰かに手を貸してもらえ。眠らないようにな」


 レド様の有難い申し出に、私は笑顔になる。


「ありがとうございます!」


 するとレド様が照れたように頬をかく。


「まぁ、子供の姿の間は、体力も子供並みだからな。魔力も子供並みにはなるから、枯渇が早い。大人の時のようにはいかないから、休みが必要だろうしな……」


「あ」


 レド様の話に、引っかかる点があった。


「魔力が尽きるの、早い……んですね?」


「そうだ」


 確認すると、うなずいてくれる。


「……それについて、少し聞きたいことが」


「なんだ?」


「魔力が尽きそうになったら、この体が大人の姿に戻ったり……なんて現象、起きたりしますか?」


 尋ねた私を、レド様が目を丸くして見る。


「君、もう魔力が尽きそうになったことがあるのかい?」


「レド様がそう聞くってことは、やっぱりそういう現象が起きるんですね?」


 問い返すと、レド様がふぅとため息をついた。


「君の体の変化は、自身の魔力を使っている。その正体は、時間を戻す魔法だ」


「時間を……」


 まさか時間を操る魔法があるとは……。

 時間を操る魔法は、今まで誰も成功したことがなかったはず。

 時だけは戻せないから、と子供も大人も壊したり誰かに危害を加えたりしないようにという教訓を耳にして育つのに。


「レド様だけが、使えるのですか?」


 魔王だから、それが可能なのかもしれない。

 そう思って尋ねると、レド様がうなずいた。


「まぁ、そういうことだね。我だけが使える。ただ君にかけられた魔法で使っているのは、君の魔力なんだ。魔力が枯渇しかければ、さすがに命の危険があるので魔法は切れかかる」


 そうじゃないと、私は魔力を使い果たして眠ったまま死ぬ。

 死後、急に姿が元に戻り、目撃した人がびっくり仰天するという状況になるわけだ。


 見つけたのが、ディアーシュ様だけで良かったかもしれない……。

 そうじゃなかったら、今頃公爵邸内が大騒ぎになってる。

 いや、ディアーシュ様に見られたことも、けっこう大変なんだけど。


「でも、最初はそういうことはなかったようなんですが」


 私、アインヴェイル王国に来て早々に、石英で魔力石を作って倒れてる。その直後は、誰も何も言わなかった。

 アガサさんもちょくちょく様子を見に来てくれていたはずだし、ディアーシュ様は横で付き添いまでしていたのだ。


「もしかすると、我が君と接触することで、何かしら変化か魔法のゆるみが生じたのかもしれないな。我の血を用いた物だし、なにより開発途中だったからな」


 開発途中……。

 まさか後日、突然魔法が消えたりしないですよね?

 不安に思ったが、それについてはレド様もわからないらしい。重ねて魔法をかける方法を模索すると言ってくれた。


「とりあえず、わかりました。ありがとうございます」


 教えてくれたことにお礼を言う。


「では調合の続きだ」


「はい」


 私は液体に星の欠片を入れ、溶かしていく手順や状態の見方をレド様から習う。

 習得した後は、しばらく実践。

 そして一度就寝。

 次に起こされたのは、夜明けの少し前だった。


「起きたか?」


 隣の部屋のソファの上で休んでいた私は、作業場からどうにかしてやってきたレド様に、頬をぺちぺちされて起こされた。


「おはよ、ございま、ふぉぉぉ」


 あくびが止まらない。けっこう疲れているみたいだ。

 でも初日からこんなんではダメだろう。気合を入れるために頬を叩いた私は、レド様に最後の確認に付き合ってもらった。


「それでは、また夜に」


 レド様は煙になって、あの金属瓶に吸い込まれて姿を消した。


「よし」


 私は昼の調合を進める。窓際で調合していたので、光は入る。問題は、昼の強い光が入るまでは、星の欠片と一緒に、紅玉の粉も朝は使うことだ。


「星の欠片を溶かしきったから、次は紅玉の粉……溶けるまで、だいたい一時間」


 粉を入れたら、砂時計をひっくり返す。

 この砂時計は、最後まで砂が落ちると、最後に残った音硝子が落ちて、ピンと高い音が響いて教えてくれるのだ。


「これ、作っておいて良かった」


 じゃなかったら、砂が落ち切るまで時々確認しないといけない。一時間の間があっても、休むどころか落ち着かずに過ごすことになるのだ。

 朝、ナディアさんが食事や水、あとで食べられるお菓子を持ってきてくれた。


 四日も一人で調合する話はナディアさんにも届いていたようで、とても心配してくれた。

 でもちゃんと睡眠もとっているし、煮込み料理の見張りをするようなものだからと説明して、納得してもらう。

 そもそも魔力の加減があるから、他の人に頼めないし、やめるわけにはいかない。


 そうして昼を過ぎ、また夜にはレド様に来てもらう。

 調合品の確認をしてもらい、今度は少し長く眠らせてもらうことにした。

 レド様がものすごく勧めるので……。


「我は睡眠をとってもとらなくてもいいんだ。でも君はそういうわけにはいかないだろう?」


 魔王は、眠れるけど、別に眠らなくても平気らしい。

 不思議生物だな……と思いつつ、せっかくの申し出なので受け入れて眠った。

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