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魔力石のご注文

「一週間後までに、どれくらい作れる?」


 尋ねられた私は、少し考えて答えた。


「この方法だと、一日で最大50個でしょうか」


 なるべく有用な人間だと思ってほしくて、出来る限りの数を答えた。


「……かなりの量だな。一つあたりどれくらいの値が妥当なのだ?」


「値段は……材料費は提供していただいていますから、一つ銀貨5枚ほどかと」


 相場の五分の一を言ってみる。

 この魔力石の値段は、普通の鉱山から産出されるものと同じだ。おそらくアインヴェイル王国でも同じぐらいだと思うので、妥当じゃないかな。

 黙って考えたディアーシュ様は、やがて言った。


「一つ銀貨15枚でいいだろう」


「え、でもそんなことしたら、一日銀貨750枚で、金貨が15枚に……多すぎます!」


 思わず言ってしまう。

 一日金貨15枚を稼ぐだなんて、そんなにもらえるなんて想像もしなかった。


 だってこんなに作ったところで、全部お買い上げ、となるわけではない。

 そこそこのお値段はするし、普通は魔力石を必要とするほど頻繁に魔法を使うことはないからだ。

 なによりディアーシュ様達は数が必要だろうに、今後も同じ値段で買ったら資産が……。


「同じ作り方ができる人間はいないからな。そして鉱山で掘り起こすのも難しい。鉱山の周辺にだって魔物は出る。まだ報告は来ていないが、採掘できないという話が来るはずだ。魔力石を掘るのに魔力石を使うなど、本末転倒だろう」


 たしかにそうだけど。

 しかも効率悪いし。


「だから、お前の作る魔力石が唯一になる。この値段でも少ないかもしれないが……」


 そんな!

 とっさに言葉が出なくて、ぶんぶんと首を横に振った。


「ええと、衣食住の面倒をみていただいているので、十分です! 沢山あり過ぎても、使い道が思いつきません!」


 私の言葉に、ディアーシュ様が「え」とばかりに目を丸くした。

 あ、ディアーシュ様も驚いた顔ができるんですね。

 でもどこに衝撃を受けたのか、わからない。

 首をかしげると、はっと我に返ったようにディアーシュ様が平素の表情に戻った。


「使い道がわからないか……子供ならばたしかにな。だが、そのうち必要になることもあるだろう。貯めておくといい」


 そう言って、ディアーシュ様は立ち去った。

 とにかくディアーシュ様による錬金術の検分は成功したみたい。良かった。これで間違いなく職を手に入れた!

 密かに喜びに震えていると、ナディアさんが飛びついてきた。


「すごいわねぇリズ! あんな風に魔力石を作れるなんて!」


「いえ、私の唯一の特技で……」


「謙遜する必要ないわ! 職人だとは聞いてたけど、こんなに素晴らしい物を作れるなんて、自慢するべきよ! それに魔力石を公爵閣下が作らせるということは、魔法を使う時に役立つってことなのね?」


「はい、そうです」


 足りない魔力を補って、今までのように魔法が使えるようになる。そのために作っているのだから。


「なら、 これから死ぬかもしれない人たちを救える、素晴らしい道具だわ」


 そういったナディアさんの目の端に、涙が滲んでいた。


(あ……)


 もしかしてナディアさんは、魔法が使えなかったばかりに、近しい人を亡くしてしまったのかもしれない。


 きっとこの国では、アリアが精霊を追い出した直後から、そういった事件がたくさん起きたんだろうと思う。

 だからディアーシュ様は、金に糸目をつけずに魔力石を作らせたいと願ったし、ナディアさんはこんなにも喜んでくれるんだ。

 アガサさんも、ものすごく感謝してくれたその裏には、何かつらいことがあったんだ。


 私はますます、魔力石を作る意欲が湧いてきた。


「ナディアさん。私このままここで、魔力石を作ろうと思います。夕食の時間になったら、呼んでくれますか?」


「わかったわ。後で一息入れるためのお茶も持ってくるわね」


 と言ってナディアさんが建物から出て行き、私は再び作業台に向かった。


「さて、がんばらなくちゃ」


 久々の作業だけど、ちゃんと頭と手が覚えている。

 見栄を張っちゃったけど、きっとできるだろう。

 ……そう思った時もありました。

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[気になる点] その光にが移っていくように、水晶もふりかけた鉱石も光り始めた。 →その光が
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