表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/109

SS みんな気になる錬金術

コミック1巻発売で嬉しいので、SS書きました!

1巻あたりの、公爵家でリズが暮らすようになったばかりの頃のお話です

「ねぇねぇ、どうだった?」


 バスケットを抱えて本館に戻ったナディアは、二人のメイドに声をかけられる。

 階段の掃除をしていたようだったが、中断してナディアの元へ駆け寄ってきたのだ。


「どうだったっていうと?」

「あの子のほら、なんていったっけ?」

「なんか作るんでしょ? 魔力石!」


 ナディアと近い年齢の彼女達は、どうやらリズの技術に興味があるらしい。

 目をきらきらさせて尋ねてくる。


(魔法を使えなくなったせいで、困ったことばかり起きているんだから、当然よね)


 ナディアは納得する。


「どんな風に作るの? ていうか作れるのね、あれ」


「そうみたい。私も初めて知ったわ」


 ナディアの答えは本心からのものだ。

 魔力石というのは、人の手で作れるようなものではない。


 だからこそ貴重で、有限。

 どんなに今困ることが多くなっていても、魔物を退治する騎士達に優先して支給されるのは、そうでなければ死人が増えるからだ。

 そして支給される数も少ないから……彼らがどんなに努力しても、彼ら自身も、そして守ろうとした市民も命を失うことが多い。


 それでもないよりはいいから、少ないそれを大事に使いながら、魔物を倒す側に回った者達は足りない分を自分の命で代用する。


 だけど、もし作れたら……?


 希望を胸に迎えたのは、小さな幼い子どもだったけど、それでも藁にすがるような思いで、みんなリズを見ていたのだ。

 年齢なんて関係ない。

 少しでもこの国を救う力になってくれるのなら、それでいい。


 ただ、一体どうやって魔力石を作るのかは、全くわからなかった。

 これが老いた知識豊富そうな魔術師などが来たなら、魔法でどうにかするのだろうと思うのだが。


 そうして頼まれた材料は、宝飾品を作る工房かと思うような品が多かった。

 一体どうやってここから魔力石を作るのかと思ったが……。

 今日初めて目にしたナディアは、ふふっと笑う。


「なんだか、魔法みたいだったわ」


 感想を聞いたメイドたちは、顔を見合わせる。


「魔法を使うための魔力石を作るのに、魔法を使うの?」


 不思議に思うのも無理はなかった。ナディアも理由を全て知っているわけではない。

 ただ、魔法の一環なのだろうなと感じただけ。

 一度も見たことがないし、どうやっているのか全くわからないところが、自分が小さい頃に初めて大きな魔法を見た時の感動に似ていた。


「ほんのちょっとは魔力を使うらしいの。たぶん、暖炉に火をつけるぐらい」

「それで魔力石ができるなら、本当にすごいわね」


 ようやく想像ができるようになったのか、メイドたちは納得した顔になった。


「いっぱい作れないんだろうけど、これで王都ぐらいは魔物から守れるようになるかしらね?」

「そうだといいな……」


 メイドたちはこれからのことに思いをはせ始める。

 ナディアもそれにうなずきながら思う。


 リズがもう少し早くこの国に来てくれたなら、というない物ねだりをしそうになる。

 それは、何もできなかった自分自身への憤りがまだ心にあるからだろう。

 リズを守り協力することで、何もできなかったナディアも、今度は誰かを守る一助にはなれる。

 亡くした人は戻っては来ないけど、残された人を守ることができるのなら。


 そのためにもリズが体調を崩さないように気をつけたり、成長のためにも栄養をつけさせることをがんばろう、と思ったナディアだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 読了しました。完結お疲れ様です(*`・ω・)ゞ  アリアは地獄の最下層で永遠に責め苦を負わされるか、永劫無限に虫に転生(記憶あり)して欲しいですね。  あと、神殿は早く体質改善して欲しいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ