第②話
おはようございます。わたし、立花勇(社畜)です。
平日である今日、わたしは会社という魔王城(徒歩約30分。え、車?無いです。)へ歩いている最中です。
食うためには、戦わなければならない。
そう、戦いに行くのです。
勇者時代、わたしは何度も挫けそうになりました。
しかし、わたしは幸せ者だったのでしょう。
わたしのパーティーは四人。
わたしを入れ四人で、三人の仲間がわたしを支えてくれました。
わたしもわたしを支えてくれる仲間に報いるべく全力をだせた。
それ故に、ああ、この勇者達では魔王はおろかそこら辺にいる二足歩行巨大豚モンスターにすら勝てませんわ(笑)。とか言われた我々が魔王を倒すことになったのです。
しかし、今のわたしには仲間はいません。仲間であるはずの同僚は上司同様、無能と罵ってきます。わたしは、ソロプレイヤーとして頑張ります。
そんな事を考えながら、会社付近にあるコンビニ。椎名さんの待つ(待ってない)聖域へと入っていく。
コンビニの入店音がなり店内へと進む。まず行うことはあの聖女椎名様の確認です。レジをちらり。
レジの店員さんは、おばあちゃん、お兄さん.....そして、わたしの足元あたりの商品棚をがさごそ整理している女の店員さん。椎名さんではない。椎名さん、今日はいないのかな。
どうでも良いけど、この足元で作業してる店員さん中学生くらいに見えるんだけど?平日なのにコンビニで働いている、ということは中学生ではないのか。
ネームプレートを見ると初心者マークが。この店員さんも椎名さん同様、入りたてなのか。
名前は佐藤いおりと書いてあった。この子は髪型がショートボブで少し明るめの茶髪。左の目と耳の間に三つ編みが垂れ下がっている。
作業を終えると、佐藤さんは立ち上がった。
やっぱりすごい小柄だ。150無いんじゃないのか?
すると佐藤さんはこちらをみて、はっとした表情をしたのち、元気よく挨拶をした。
「おはようございますー!」
おお、なんて良いこなんだ!いらっしゃいませーとか、ありがとうございましたーとか店員として必要最低限の交流だけでなく、挨拶までするとは!わたしは
「お、おおおおは、おはっ.....
「おはようございますー!」
え?
後ろから佐藤さんへ挨拶が飛んできた。わたしは思った。あーやっちまったなー。と。
そうなんだね。佐藤さんわたしに挨拶したわけじゃないんだね。後ろの人に挨拶したんだね。
しかも、この柔くお綺麗な声は.....これは。振り返り確かめると、やはりそこには可愛い店員さん、椎名さんがいた。
椎名さんはきょとんとした表情で、首を傾げながらわたしの顔を覗きこむ。これ!これ可愛いんだよなあああああ。って、いまはそんなこと言ってる場合じゃない!どう切り抜ける!?
ちなみに椎名さんの身長は160とかそんくらいだと思う!あと私服が可愛いです!今、出社かな?とか高速で思考が巡る。
そして出した答えは.....
椎名さんにぺこりと会釈し
「おおーい!おはよー!」
遠くの方にいる知り合いに、手を振り挨拶をする風緊急脱出。
逃げようとするわたしに佐藤さんはくくっと笑った。
わたしの顔は、爆発する系岩モンスターのいままさに爆発する寸前のような赤い顔をしているに違いない。
爆発してコンビニごと消すか?いっそ何もかも.....近場の会社も吹き飛ばせればなお良し!
「あ、立花さん!」
「昨日は助けていただいて、ありがとうございました。怪我された所は大丈夫ですか?。」
椎名さんは心配そうに昨日のお礼、つまり(第①話)のことです。ごめんなさい読者さん。ここでまた昨日の説明いれると、ちょっと話のテンポが悪いんで、え?もう既に悪い?ご、ごめんなさい。
それにしてもやはり椎名さん可愛いな。これは、しっかりかまずに返事せねば。
「あ、はい.....大丈夫.....でしゅ。」
なんで?かまないようにゆっくり喋ったのに、なんでかむの?舌の病気とかじゃないよなこれ.....。
「ふふっ。見た感じ、腫れてもいないようですし、良かった。」
ああああああ、可愛いいいいい
「でも、心配なのでまたコンビニに来たときに、お顔みさせて下さいね。」
え、まじで?やったー!!!!
でも、昨日の椎名さんを連れていこうとしてた人って誰だったんだ。わたしはそっちのほうが心配なんだが.....。
しかし、あんまり踏み込んで聞くのも.....。
と、考え込むわたしを察したのか、笑った。
「昨日の事は大丈夫です。ボディーガードに弟がついていますので!しばらくは送迎してもらうことにしたので、大丈夫です。」
それをきいたわたしはホッとした。危なく会社やめてボディーガード(非公式)をしようかなと今思っていたところだったからだ。
椎名さんの安全とわたしの安全(職無し不審者=逮捕)、二つの意味で安心した。
ーーーーーー
椎名さんから幸福バフ(精神作用)をもらったわたしは、遅刻になるぎりぎりで出社した。あぶねー、なにやってんだわたしは。
以前一度遅刻したときがあったが、あれはヤバかったな。上司が同僚達がみてるなか、わたしに一時間近く説教をしたあとに、一時間無駄にしてんじゃねえ!仕事しろや!とわたしに言い放った。お前もなぁ!と言いたかったけど、飲み込んだ。
ちなみに二分の遅刻だったんだけど、ヤバない?わたしの上司。
ときに皆様は幻を見せる魔法をご存知か。これは空間に作用するもので、その空間に居るものにわたしのイメージした幻をみせることができる。
わたしは、その遅刻に関する説教が最初の五分で、ああ、これストレス解消したいだけなんだな、とわかった瞬間に自身の幻をつくりわたしは見えないように移動。自分の席に戻り、ソシャゲをしていた。
ちなみにその時引いたガチャ十連(十一連)は爆死でした。
仕事をこなし、お昼が近づいてきた。椎名さんに会えると思うとわくわくがとまらない。
そそくさと会社を出るわたし。さて、コンビニいこう。ネトゲのゲームカード買っとかないとなあ.....。
コンビニのトビラを引き店内へ。椎名さんはいるかなーっと。
パッと見いないように見える。もう勤務終わったのかな?と、ブラックコーヒーを求め飲料水の冷蔵庫へ。残り一本のコーヒーを手にとり、あと一本ないんかな?と、冷蔵庫を覗くとその向こう側から椎名さんがこちらを覗いていた。コーヒー補充しようとしたところに、入ってきたわたしの手が邪魔で入れられなかったのか。
奥から覗く椎名さんは目があった瞬間、くりくりの可愛い目を見開き、わたしを確認した後、満面の笑みになった。
だめだ、これは.....可愛すぎる。
椎名さんは手に持っていたコーヒーを冷蔵庫越しに渡してきた。わたしはそれを受け取りながら
「あ、ありがとう.....ございます。」
と頭を下げた。ちゃんと言えたじゃねえか。泣きそう。
にこにこしながら、手をヒラヒラとふる椎名さん。お仕事の邪魔はしてはいけないと思い、冷蔵庫のトビラをしめる。
レジへと進みお会計を済ませ、コンビニを出て会社へと戻る。
買ってきた物を整理し、手がとまる。
椎名さんが手渡してくれたコーヒーだ。
「.....」
わたしは頭に浮かんだ想いを振り払い、仕事に戻った。