「北の現役・廃駅舎探訪の旅」第1頁
この日本で北の大地と言われたら読者の皆さんはどこを思い浮かべるであろうか。多くの人は「北海道」と答えるであろう。「ほっかいどうはでっかいどう」と言われるだけあって,面積はかなり広い。故に,私のように長年住んでいる者でさえ,その一部分しかわからないのである(旅人は除く)。ただ,この地に住みこの地を愛する人の多くは,1度でいいからこの北海道の全市町村を巡る旅をしてみたいと少なくとも1回は考えたことがあるだろう。本書ではその願いを叶えられるような物語を掲載する。この北の大地に少しでも魅かれた方は是非読んでみてほしい。きっと願いは叶うだろう。
私は先日,知り合いのじいさんが亡くなったという知らせを耳にした。高齢だったせいもあるだろうが,彼は長年肺が悪かったらしい。肺炎で亡くなったそうだ。流行り病のものではなかったようだが。
私自身はそのじいさんと比べればまだ若いほうなのだが,世間一般でいえばもう高齢者の部類だ。高齢だからいうわけだけではないが,いつどうなって死ぬかわからない年齢にはなってきたようだ。悔いのない余生を過ごしたいものだ。この知らせを受けて私はあることを思った。大学入学時に越してきてからずっと,人生の中で故郷よりも長く過ごしてきたこの北国の地のまだ見ぬすべてを残りの時間で見てみたいと。まずは,私の好きな駅舎からだ。廃れてしまった駅舎を訪ねることでかつて栄えた町の風景も観て,知ることができるだろう。そして,自然に還ってゆく様子も観られるに違いない。そう考えた。




