森のバター
肩を寄せ合って並んでいる。遠くから眺めればまるでアリゲーター。黒くて艶々なブランド革製品は手が届かないけれど、お前なら買うことができるよ。
卵形のお前さん。とっても可愛い。仔細に目を凝らすと、色がそれぞれ違うんだ。
真っ黒くて豆腐に負けない柔らかな。
鮮やかな緑色の映える青い匂いの芳しき。
ほっそりカイマン。ぷっくりクロコダイル。でもやっぱり慣れた手つきでアリゲーターを求める。
たまにハズレることもある。それが愉しみのひとつとも言える。本当はたくさん欲しいのだけれど、一人だけを持ち帰る。
卵の長辺を包丁で結ぶ。無抵抗にもほどがある。厚さ数百ミクロン。つまりは数ミリ。薄い殻がほどけていく。
イッツアショータイム。魔法の時間が始まるよ。
パカッと真っ二つに割ってみよう。
黄身のところはあら不思議、茶色の種子にすりかわり。白身のところは黄色と緑のグラデーション。
これを口に入れようと思った初めての人は誰。
カリウムは神経に効く。良質な脂肪。
そんなことはどうでもいい。
スプーンを沈めていく感覚は、バターに埋めるそれに等しい。ねっとりと絡みついて離れない。心を惹き付けて放さない。
お前に恋をした。今宵も口づけを交わす。そして舌の上で転がして、ゆっくりと味わうのだ。
クリーミーなアボカドちゃん。至福のひととき。
醤油もいいね。ポン酢もどうぞ
ぬか漬けも機会があればお試しあれ




