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アラサーがVTuberになった話。  作者: とくめい
1章(デビュー、1年目3月~5月)
18/280

13.5話 日は沈み、月は陰る

5月×日

 わたしの自慢の幼馴染。親友。いつもわたしを支えてくれる何より大事な存在。わたしのだいすきなあーちゃん。


「後ろ髪跳ねてる」

「うん」


 なすがまま親友がわたしの髪をどこからか取り出した櫛で梳く。跳ねた毛を直すだけでは飽き足らず、何故か三つ編みを左右で作りそれを後ろで結ぶ。器用だなぁ、わたしには無理だ。


「どう? これ可愛いでしょ」

「アニメで見たやつ!」


 彼女がスマホでパシャリと撮ってそれを見せてくれる。クラウンハーフアップとかいうやつだったっけ? とにかく可愛い奴。「自分の髪でやれないから」とよくわたしの髪を使って色々セットアップしてくれる。メイクだってわたしよりもずっとずっと詳しい。と言うか、わたしより可愛い。化粧とか滅茶苦茶薄いのに……ずるい。超ずるい。意図して可愛く見せないようにしている節まである。髪型とかもう少し御洒落に出来るセンスも知識もあるのに。


 でも、周りは自分ばかり手放しに褒め称えて彼女はそのオマケみたいな感じ。正直気分は良くない。いや、寧ろおこだよ、超おこだよ。げきおこぷんぷん。めっちゃ古いよね、これ。でも人付き合いって大切だからそんな考えは胸中に留めておく。強かな女の子がモテるって漫画で見たし。


 わたしよりもずっとずっと凄いのは彼女だ。いつからか彼女もそんな有象無象のどうでも良い連中の言うことを気にするようになったらしい。でも正直それで出来ちゃうあーちゃんもあーちゃんだよぉ。あーちゃんが超スペック高いから、わたしに要求されるラインまで引きあがる。悪循環。


「次体育かぁ……」

「わたしきらい~」


 知ってる。実は苦手だけど練習していることを。「そんなに頑張らなくて良い」って一言わたしが言えば終わるだけの話かもしれないけれど、もしそれであーちゃんが不機嫌になって不仲になってしまったら困る。というか生きていけない。オタク趣味の話とかする友達いないんだもん!


 言えない、男の人同士の絡みが大好きとかクラスメイトに言えない。声優のCDとかフィギュアとかVtuberに滅茶苦茶のめり込んでて、あろうことか自分もキャストだとか。


 ただわたしのせいで彼女が苦しんでいることも事実。いい加減どこかでしっかり話し合いしなくちゃならない。でもあーちゃんの優しさに付け込んで甘えてしまっている。本当に酷い。周りがもてはやすような子じゃない。わたしはもっと卑怯で、卑屈で、汚い女だ。


 あ、でも尻軽とかではないよ! ほんとだよ?!


5月×日

 おかしい、何故あーちゃんの数字が伸びない。わたしより可愛いのに。と言うか、SNSやコメントで何かにつけてわたしの名前出す奴らは何かわたしのアンチか? アンチなのか? ブロックしちゃうからね!?



5月×日

 最近あーちゃんの様子がおかしい。自分は上手い事隠しているつもりかもしれないけれども、長い事付き合いのあるわたしには分かる。


 ――どう声をかければ良い?


 どうしよう。いつも困ったことがあったらあーちゃんが助けてくれた。でも今は違う。あの子が困ってるんだ。わたしがどうにかしなくちゃ――


 ――でも、わたしに何が出来る?


 自分だけじゃなにもできない。いちばん大事な、大切な親友が困難に直面しているというのに……誰か頼れる人でもいれば――ふと、一人心に浮かんだが前に随分と迷惑をかけてしまった。今度もまた押し付けるなんて真似して良いの?



「どうしよう……」


 


 


 


5月×日



#ルナ・ブラン


☎ 神坂 怜が通話を開始しました。         




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― 新着の感想 ―
[一言] 頼もしいなさすが脱サラたのもしい 箱のメイン盾にかかれば親友間の声に出せない葛藤など 裏世界でひっそり幕を閉じるのは確定的に明らか
[一言] 主人公、ここでよく声かけられたよなぁ
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