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やっぱり犯罪者じゃないか⋯⋯

「ところで……今日泊まっていっても良いかしら?」

「僕男だけど、気にしないならいいよ。」

「え?」


 こんばんは。

 色々彼女から事情を聞き、事件解決を手伝うことになったのは良いけど、この女なんか変な事を言い始めた。


「ほ、ほんとなの? ごめんなさい、私てっきり……」

「僕の名前はスミレ。今後ともよろしく。」

「ス、スミレ……えぇ……その、よろしくね?」


 何か言いたげだけど、知ったことではない。

 

「ねぇ、本当に男の人なの? ちょっと手の傷舐めさせてくれない?」

「えぇ……まあ良いけど。」

 

 狼を殴った時についたのだろうか、かすり傷を彼女はペロっと舐めた。


「わぁ! すごく美味しいわね! ⋯⋯本当に男の人なのね」


 血を舐めるだけで男女が判別できるのはすごいね!


「で、なんで泊まりたいの?」

「えっと、今まで姿隠しを使い続けてたのだけれど、そろそろ魔力が切れそうで困ってて……本当疲れてるの」

「家とか泊まるとことかないの?」

「私もこの国の人間ではないの。そんなものないわ」


 え、コイツ泊まるとこもねーの? つら。


「まあ、僕に危害を加えないなら泊まっていっても良いけど」

「いいの? 本当に助かるわ」

「しょうがないね」


 コイツに家がない事はウケるけど、僕もいつまでこの宿暮らしを続けるのか。


 この国にノリで来て、それっぽい仕事ができそうな環境になった。

 飯も美味しいし、楽そうな仕事が何件かあるし、考えるのも面倒だからこの国に住もうかな……


「ねぇ、スミレって呼んで良いかしら?」


 クローディアと飲んでいる時に再び規約を聞いたら、冒険者ギルドに入った事で身分が保障されるらしく、この国の市民と同じような扱いを受けるらしい。

 楽して暮らす為、安住の地を求めて色々な国を渡り歩いてきた僕だけど、この国は悪くない。


「ねぇ、聞いてる? スミレ? スミレって呼ぶわよ? 良いのね?」

「うん、なんでも良いよ」

「よろしくね! スミレ」

「美味しいね、スープ」


 とりあえずボロ屋でも良いから探そうかな。コイツが50万くれるらしいし。

 50万の家なんて相当ボロいだろうけど、それはそれで楽しそうだ。修繕は僕の趣味だ。


「あ、私の名前もいい加減伝えておくわ。協力してくれるなら、名前くらい教えないとね」

「うん、なんでも良いよ」

「なんでも良い……? と、とにかく。私の名前はロザリアよ! 覚えておいてね」

 

 50万はいくらボロ屋でもきついだろうか?土地代とかがかかると最低300万はいるかもしれない。


 流石に一から家は建てられないし、とりあえず朝になったらギルドで聞いてみよう。

 ちょっと酔ってるし忘れないようにメモしなくちゃ。


「うん、よろしくねロザリン」

「おしい! おしいわ! ロザリアよ!」

「ロザリア? 良い名前だね。よろしく」

「ええ⋯⋯よろしく」


 僕は朝になったらやる事リストを作った。ロザリアがリストを覗き込んでくる。

 

「やる事をメモしてるの? 私の手伝いの事も書いてよ。忘れない?」

「メモ落としたり、誰かに見られた時まずいでしょ」

「あ、それもそうね」

「ところで前金はどうやって用意するの?」

「……とある場所で、私の持ってる宝石を売るわ」

「やっぱ犯罪者だなオメー」


 彼女が宝石を売る場所、というのは恐らく盗賊ギルドのことだ。

 盗品や違法な物品の売買、闇系のお仕事の斡旋をしている組織。僕の故郷にも盗賊ギルドは存在している。というより盗賊ギルド発祥の地でバリバリ国を牛耳っている。


 ギルド使用の際に、ギルド内の情報をどのような表現でも伝える事を禁止する制約魔法をかけられる為、彼女は何も言えないんだと思う。


「仕方ないじゃない! ムグムグ、ムグ、あそこしかないもの。ムグムグ、なの。あーもう!! 制約魔法め!!」

「じゃあ、しょうがないね」


 盗賊ギルドかぁ、懐かしいね。ギルドはテネブロ、ぼくの故郷に行って加入する必要がある。

 一度入ったら世界各国の盗賊ギルドが使用できるようになる為、便利なギルドではある。


 この魔女、もとい吸血鬼は長い? 人生のどこかで僕の故郷に行ったんだろう。


「とにかく、僕は気にしないよ。」

「そ、そう? なら良いわ」


 僕は食べ終わって空になった食器や籠を片付け始める。


「夕飯どうだった?」

「とても美味しかったわ。ありがとう」


 僕がテーブルを片付け終わった後、ロザリンは気まずそうに言った。

 

「で、あの……ベッド一つよね? どうやって寝ようかしら?? 一緒は気まずいわよね? あなたは気にするかしら?」


 吸血鬼は夜行性じゃないのかな? それとも疲れが溜まってるからなのかな?

 僕はベッドに寝そべった。飲んだし食べたし、僕も疲れたなぁ。とても眠い。

 

「おやすみロザリン。そこは綺麗だから。僕の服かけて寝て良いよ」

「——え、私床で寝るの?」

「うん、そうだよ」

「ええ、どうしてもダメ? 絨毯も敷いてないし寒いわよ……」


 めんどくせぇなコイツ。僕は早く寝たいんだ。

 

「お、お願い」

「しょうがないなぁ」

「助かるわ! 最近ずっと寒くて……」

「おやすみロザリン。噛まないでね」

「噛まないわよ! あと名前が…… おやすみなさい、スミレ」


 おやすみロザリー。

今日も一日お疲れ様です!

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