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都合が良ければ全部アタリ

「お疲れ様でした。合わせて、3万フロスタになります」

「ああ、うん。まあ⋯⋯そんなもんか」


 僕らは無事森から帰ってきた。

 今は冒険者ギルドの中、今日も出勤していた受付嬢のクローディアとリッちゃんは報酬について話し合っている。


 僕はその話を聞きながら、討伐依頼の納品から報酬受け取りまでの流れを、頭の中のメモに書き込んでいる。


「はい、狼の皮の状態は3匹共良かったのですが、そのうち2匹の内臓がほぼ全て潰れていまして…… 錬金術の材料になるので、結構値が付く部位だったんです。よろしければオークションをご案内いたしましょうか? 二週間後の換金になりますが、もう少しは値が付くかもしれません。その逆もありえますが」


 オークションか。面白そうだけど、予約の都合もあるのか換金のタイミングが少し遅い。


「スーちゃんどうする? オークションだって」

「え? う〜ん、そうだね。あー、よく分からないかな。とりあえず今お金もらっちゃおうよ」

「確かにそうだな。じゃあ良いかこれで」


 僕は今金がない。ちょっとでも良いから金をくれ。


「じゃあ、それでお願いね」

「かしこまりました。またのご利用をお待ちしております。本日はお疲れ様でした」

「ありがとう。またよろしくね」

 

 リッちゃんは報酬を受け取った。

 何故か申し訳無さそうな表情をして、こっちに戻ってきた。


「スーちゃん今日はありがとう。報酬は半分こで良い?」

「いいの? ありがとう」

「報酬減らしちゃってごめんな。魔法強く使いすぎちまった」

「良いよ良いよ。僕のヘンテコ魔法じゃ狼三匹はきついし、昨日宿代もらったから気にしないで」

「スーちゃんは優しいなぁ」

「うん、僕程優しい男はいないから、覚えておくと良いよ」


 さあ、とっととタダ酒と飯だ。僕は腹が減った。


「リッちゃん早くパーティしようパーティ」

「おう、そうだな」

「すいませーん!」

「はーい! ご注文ですか?」




 喧騒の中、酒に溺れながら実にくだらない事を話して楽しんでいると、見知った顔がふらりとやってきた。


「あら。リッカさん、スミレさんお疲れ様です。」

「おつかれさん!」

「クローディアさんお疲れ様です。」

「あんたも一緒に飲む? 今日はギルド混んでたし疲れたでしょ?」

「えっと……では、はい。お言葉に甘えて。スミレさんもよろしいでしょうか?」

「いーすよ」


 クローディアは僕の横に腰掛け、謎酒と謎肉を頼んだ。

 ん? 謎肉ってなんだ⋯⋯???


「受付っていつもこの時間まで仕事あんのか?」

「そうですね。私は昼から23時くらいまでです」

「ヘェ〜大変だ。今日は私が奢るから、ゆっくり飲んでってよ」

「良いんですか? すみません」

「リッちゃんカッコいい〜!」


 リッちゃんはゴクゴクと謎酒をあおる。

 僕はもう結構酔ってきた。


「スミレさんは今日初依頼でしたけど、いかがでしたか?」

「リッちゃんがいたから割と楽でしたよ」

「それは良かったです」

「スーちゃんが干し肉くれてさぁ、殴ってて凄かったよ」

「それは良かったです」


 説明になっていない。リッちゃんもう酔ってきたな。クローディアは意外と飲むようで、この10分でもう3杯目だ。ストレスが多い職場なのかな?


「クローディアさんは受付以外の仕事もするんですか?」

「はい、事務仕事以外は、討伐や護衛をメインに活動してます。事務仕事は賃金が高いので、なるべく入っています」

「受付嬢ってなんか良い響きだよなぁ。資格とかいるのか?」

「そうですね、必要な資格は多い方かと」

 

 クローディア曰く、このギルドの受付嬢は雑務に加えて、冒険者との交渉も頻繁に行う大変な仕事らしい。


「そういやスミレは冒険者になっちまって良かったのか? 組合は一回入ると一年は変えられないぞ」


「ああ、うん、そうだねぇ。いいんじゃない?」

 

 いいんじゃないなんでも。一年の縛りについてはクローディアが説明してたような。あまり聞いてなかった。

 そんな事を考えながら時計を見ると23時59分。


「あっ、やばい」


 僕は急いでトイレに駆け込もうとしたが、間に合わなかった。別に腹が痛くなったわけじゃあない。目立つのが嫌だからだ。


 ——日が変わる時間が来た。


「うおっ、スーちゃん!? 髪真っ赤になった!」

「え? ああ……例の日替わりの」


 僕の髪と目の色が魔力の粒子と共に変わる。反応を見るに今日の色は赤みたい。

 

 日替わり魔法の日替わりタイムが来ちゃった。

 日を跨ぐタイミング、もしくは跨いだ日の起床した時間に訪れるそれは、人前で見せるには派手すぎる。


 辺りの酔っ払いがじろじろと視線をぶつけてくるけど、気付かないフリをして椅子に座り直した。


「赤も良いよな」

「はい、良いですね」

 

 そう言いながらクローディアは、僕の頭を真顔でぐりぐり撫で回す。


 脳内に毎日聞く声が響く。


 (っしゃあ!!!! 今日のカラーはレッドォ!!!!!

 魔法名はクリムゾンバァアアアアストォ!! 大当たりだ!!!! 今日もアゲアゲで行くぜオイィ!!! 超火力で敵を薙ぎ払え!!!!)


 久々の大当たりだ。でも今日はずっと寝て過ごす予定だから、ハズレかな。

お疲れ様です!

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