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「ああ、  作者: 宮田カヨ
9/10

その9

 絵の具で汚れた机に、床に散らばっている絵の具。壁に立てかけている大小様々なサイズの木製パネル(水貼りが終わったものもあれば、紙を切り取ったばかりのものもある)。

 あのあと、風と朝陽が一通り話し終えてから友哉と風は家へと帰った。泊まっていけばいい、と朝陽は言ってくれたが子供の頃のように連日泊まるわけにもいかないし、虎之助が寂しいと言っていたから。邪魔をしたら悪い。

 友哉は床に座りながら、パネルに筆を滑らせていた。隣に置いてある携帯電話からは、次々と声が出てくる。

「でさ、兄貴が元カノにこの前なんて言われて振られたと思う? 『そんなにバイクが好きならバイクと付き合え』って言われて引っ叩かれて振られててさ。まあデートの時毎回バイク店ばっか連れてく兄貴が悪いよなー」

「お前……ほんとよくしゃべんな」

 風が電話をかけてきたのはつい三十分ほど前。部屋で何の気なしに筆を滑らせていた時に電話がかかってきた。最初は時仁からかかってきたのかと思った。自分の電話番号を知っているのは限られた人間で、この時間帯に電話をしてくるのは時仁が多い。風は早い時間に電話をかけてきて、一度電話を切って諸々の所用を済ませた友哉から折り返しの電話をする、というのが常になっている。遅い時間にかけてくるなんて、どうしたのだろうか。

「あ、なあ鯛釣」

「なんよ」

「今度の休みさ、山蛍さんも一緒になんだけど、三人でどっかに遊びに行かない?」

 友哉は筆を止めた。こういった遊びの誘いを、時仁は何度も断っていた。

「……明日、誘ってみるわ」

「いいね。俺さ、遊園地行きたいんだ。チケット三枚あるしちょうど良くね?」

「何でお前三枚も持ってるん?」

「この前、兄貴の元カノが兄貴に叩きつけてたのと俺が福引で当てた」

「……それ、使っていいん?」

「いいんじゃね? パクっても何も言わねえし」

「いやなんか言えよ」

 風も絵を描いているのか。黒だの白だの、何か言っている。

「……なあ、俺さ」

「ん? なんね?」

「お前らや朝陽さんたちが何か考えてっかわかんねえけどさ。俺、お前らのこと友達だと思ってっから」

 友哉は筆を止めた。

お久しぶりです

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