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「ああ、  作者: 宮田カヨ
3/10

その3

満潮時に怒涛のように現れるオオモノシャケ嫌い

 時仁のことを知らない女の子(またはおこぼれに預かろうとする男の子)は、顔につられて寄って来ては、最初こそ時仁と親密な関係になろうとする。けれど、時仁のことを知ると、すぐに離れていき、掌を返すかのように罵詈雑言を吐く。友哉も言われたことがあった。

 なんでこいつと関わっているんだ、あんなやつほっとけばいいだろ。確かにそうかも知れない。だが、友哉はそうできなかった。

 友哉は日の光を反射している河川を見つめる。

「……とも」

「ん、何?」

「……夏休み、どこ行ってたの?」

 疑いながら、どこか縋るように時仁が問う。

「……ばあちゃんと、じいちゃんの家に行ってた」

 友哉は言葉をつまらせながら、そう答えた。やましいことなんて何もないのに、それなのに、なぜ思うように言葉が出てこないのだろう。

「……ほんと?」

「ほんとだって! 逆に聞くけど、何しに行ったと思ったん?」

 時仁は河川に視線を移す。

「……俺、ともが、どっか行っちゃうんじゃないかって」

 何ばかなこと考えてるの、行くわけないでしょ。泣きそうな声と顔の時仁に、そう言ってやれたらどれほど良かっただろう。

 友哉は棒を噛むのをやめて、時仁を呼んだ。

「……何?」

 食べ進められていなかった時仁のアイスは溶けて、雑草だらけの土手の上に落ちる。

「その……俺らさ」

 友哉は重い口を開く。

「俺らって友達、だよな?」

 こんなことを言いたかったわけじゃないのに。ちゃんと言わないといけないことがあるのに。いざ言おうとしたら、どうして言えなくなってしまうのだろか。

 友哉の心中を知らず、時仁はなぜか安堵したような顔を見せる。

「……うん。俺らは友達だよ」

 時仁は少しだけ笑った。

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