相談
外国暮らしが長い友人が久しぶりに帰国し我が家に立ち寄ってくれた。
大学時代なんやかんやと学業や私生活の事など色々彼に相談していた俺は、彼が立ち寄ってくれたのを良い機会だと思い今悩んでいる事を相談する。
「なあ、聞いてくれるか?
どう対応したら良いのか分からない悩み事があるのだが」
「僕で良ければ聞くよ」
「ありがたい。
実は俺には誰にも言ったことが無い趣味がある」
俺は趣味に関する悩み事を彼に語る。
この趣味にのめり込む事になったのは新宿に所有する賃貸しマンション、ここに設置されていた監視カメラに新宿ストーカーOL殺人事件の犯人が映し出されていた事が始まりだった。
この事件の1ヶ月後世田谷で起きた幼児誘拐事件の犯人が直ぐ捕まり幼児が無事に保護されたのも、所有する雑居ビルに設置されていた防犯カメラの映像が一役かっている。
事件が解決される度に警察から感謝状を頂いた。
感謝状を貰えたことに気を良くした俺は、所有する全てのマンションやビルに監視カメラや防犯カメラを設置する。
所有する全ての物件にカメラを設置したからといっても都合よく事件や事故が映る筈も無い。
そこで事件や事故が多発する周辺の物件を買い漁り、監視カメラや防犯カメラを設置した。
買い漁ったのは、飛び降り自殺で有名な団地、飛び込み自殺が多発する踏切、死亡事故は少ないが週に1~2回は事故が起きる交差点などの周辺、それに六本木や吉祥寺などの繁華街とその周辺の物件などだ。
その結果数日に1回以上事件や事故がカメラに映ることになり、その度に警察から感謝状を貰うようになる。
「良いことじゃないか」
「そう、ここまではね。
動機を除けば人に自慢できる趣味と言えるのだが、問題は、そう…………此処からなのだ」
モニタールームで膨大な数の映像を眺めている時だった。
次々と切り替わる映像の中に有名な女性アイドルグループのリーダーの女の子が映し出される。
彼女は連れの男性と抱き合い口づけを交わし、イチャイチャしながら私が所有するマンションに入っていった。
この時俺の頭に、彼女のプライベートを見てみたいという邪な欲望が沸き上がる。
その欲望を満たすために所有する全ての物件の内部、風呂やトイレを含むマンションの部屋やビルのオフィスにカメラを設置。
結果、私のコレクションは人が他人には決して見られたく無い、見せたく無い姿を映した映像で膨れ上がった。
この秘密のコレクションは私が死亡すると自動的に焼却されるようになっている。
「完全に焼却されるのだね?」
「ああ、それは大丈夫だ」
「だったら良いじゃないか、確かに誉められる趣味では無いけど」
「違うのだ! まだ続きがあるのだ」
手に持っているDVDを彼に見せながら話を続けた。
「このDVDに映っている物が相談事なのだ。
これに映っているのは2~30年程前から世間を騒がせている、連続猟奇殺人事件の犯人と犯行の一部始終が映っているのだよ。
俺は…………、俺はどう行動すれば良いと思う?
DVDをコレクションルームの奥深くに仕舞い込むべきなのか?
それとも警察に届けるべきなのか?
警察に此を渡せば、秘密の趣味が世間に知れ渡り俺は破滅する。
頼む! 君の意見を聞かせてくれ」