突然のこと
タイトルだけ思い付いて、なんとなくで始まったお話。
「もう、私達…別れましょう」
目の前に座っている彼女は、コーヒーを一口飲んでから落ち着いた声色で言った。
「な、なんで…」
僕の脳は、彼女の言葉を上手く飲み込む事が出来なかった。
「あなたも、気付いていたでしょう?私達、好みも性格も合わないということを」
彼女は、淡々と話す。
「でも、そんなのは付き合う前から分かっていた話じゃないか」
僕は、眼鏡をかけ直しながら言う。
「分かっていたわよ。でも、たまには貴方みたいな地味で暗い人と付き合っても面白いのかなと思っただけよ」
「そ、そんな…僕は、本当に君の事を好きになったのに」
「それも誤算よね…まさか、私の事を好きになるなんて…」
「だって、君の明るい所とか…笑顔が大好きなんだ…」
「…………」
彼女は、目を見開いたまま微動だにしなかった。
「貴方って、馬鹿な人ね…」
彼女は、コーヒーを飲み干し、立ち上がる。
「えっ…」
僕は、そんな彼女を見守る事しか出来なかった。
「本当に、馬鹿な人。私なんかを好きになるなんて…でも、そんな優しい貴方が私も好きだったわ…」
「えっ…何か言ったかい?」
彼女が何を言ったのか聞き取る事が出来なかった。
「じゃあ、さよなら…」
彼女は、僕の目を最後に見つめ、去っていった。
彼女の表情は、何かを我慢しているような…そんな表情だった。
「待って!!」
僕は、思わず彼女に手を伸ばした。
しかし、無情にも僕の手は空を裂いた。
残されたのは、僕と飲みかけのダージリンだけ。
そのダージリンもすっかり冷めてしまっていた。
いやー、まさかの連載。
多分、次話で終わります。