雲の落ちる町
昔々ある町があった。その町は昔からよく濃霧に悩まされていた。濃霧が出ると農作業や家畜の世話ができなくなるため、村人たちは困り果て隣町―山を二つ越えたところにある―のどんな悩み事も解決してくれるという占い師にどうすればよいか尋ねに使いを送った。占い師は悩みを聞くと、水晶玉を覗きこんでこう言った。
「霧は山に住む魔女の仕業だ。魔女は町を恨んでいる。だから、生贄として町一番の美女を森の中の古城に置いてくるんだ。そうすれば、霧は晴れるだろう。」
使いが町に帰り、さっそく町の人たちに伝えると、町の人たちは村で一番の美人のメリアに頼もうとした。しかし、メリアは嫌がり代わりにメリアの妹を指名した。メリアの妹はメリアと同じくらい綺麗だが目が見えず、町の人たちも丁度いいと妹の方を古城に送ることにした。彼女を古城に送ってからその町に濃霧がくることはなくなった。彼女は『霧姫』と呼ばれ、今も町にこのような話になり残っている。
学校の教室で本を読みながら長い昼休みをつぶしていると、後ろから大きな声がした。
「おい!メガネ!まーたそんな本読んでんのか?」
「僕はそんな名前じゃない。マサキだ。」
「あっそ。まぁ、そんなこったぁどうでもいいんだよ!俺ら今から森の幽霊が出るって噂の古城に行くんだけどよ!お前も一緒に行こうぜ!」
ニヤニヤと悪い笑顔をわかりやすく出しているこいつら。多分、古城についたら僕を置いて帰る気なんだろ。わかりやすすぎで面白みの欠けらも無い。もっと上手く騙せよ。騙せないならするなとっとと家帰って空っぽの頭に勉強でも入れとけよ。でも、どうせ今日は暇だし、古城で本をゆっくり読むのもありだな。
「分かった。今からってことは授業は?」
どうせしないんだろ。
「学校抜け出すんだよ!授業なんて聞いてられねぇよw」
やっぱり。まぁ僕はしなくても予習はしてるからもう知ってるし、テストの点も取れる。
「なるほど。じゃあ行くか。」
「おう!話が早くていいぜ〜!」
お気に入りの本を1冊隠し持って不良たちについて行った。
学校を上手く抜け出し、森についた。
「ひぇ〜相変わらずくれぇ〜森だなぁ〜w」
「それなw」
「なんかちょっと肌寒くない?w」
会話文が小学生並みすぎてついていけないんだけど。まぁ、こいつらの後をついて行って古城に取り残されて有意義に読書を楽しむ。これが今の目的だ。
森に入って30分ほど歩いていく。すると石造りの大きな建造物が目の前に現れた。
「おーあったあった!」
「でけぇな!」
「すげぇ〜!」
また小学生並み…しかも、最後の奴、どこがすごいのか聞きたい。これよりすごい建物ならこの町にもいくつかあるだろ。
「中に早く入ろう。」
「お、おう!わかってらぁ!」
あっその言い方ちょっとビビってない?えっ?もしかして怖いの?えっ?中学生のくせに?なんだったら君ら昨日「幽霊とか出会ったらボコボコにしてやんよ!www」とか言ってたくせに?ひとつだけ言わせてくれ今すっげぇだせぇぞお前ら。
「うーわっくっらw」
「めっちゃさみーな〜」
「わかる〜」
なんか、こいつらといると語彙力下がりそう。早めにどっか良さそうな場所見つけて単独行動しよう。ちょうど一番後ろだし。こいつらも一番後ろのやつがいなくなったらビビって帰るだろ。
良さそうな場所を探しながら3人について行く。木のアンティーク調の家具が多く置いてある。壁には絵画がいくつも飾られている。下は赤い絨毯がシワなくピシッとのびている。よく見ると、蜘蛛の巣やホコリがない。3日に1回くらいのペースで掃除しているような奇妙な綺麗さだった。まぁ、誰かが定期的に掃除しているんだろうと考えていい場所がないか探す。
3人が前で「やばいわぁ…」「それな〜」という単語だけの会話をしている中、マサキはある扉に目を惹かれた。
その扉は他の扉より少し明るい色の木で作られているのか雰囲気が少し違った。足を止め、3人にバレないようにその扉に入る。扉を開けた先は大きなベットがある部屋だった。貴族が寝るようなカーテンがついたベット、化粧台などを見る限り女性がいたような雰囲気が残っていた。ここも埃一つ落ちていない。ベットの掛け布団もシワなく伸ばされている。
「やっぱり、掃除する人が定期的に来てるんだろうか。」
電気はないので持っていたロウソクの火を部屋のロウソクに移す。部屋は明るくなった。これなら本を読める。布団で寝っ転がって読むのもいいがその前に化粧台がとても気になった。父子家庭の僕には全く無縁な化粧台に興味があった。
「少しだけ…失礼します!」
化粧台についている引き出しを開ける。
「これは…本?いや、Diaryって書いてあるから日記か。」
人の日記なんて読んでは行けないとわかってはいるが見つけてしまったものは気になる。心の中で「少しだけ読ませてください!すみません!」と言って読み始めた。
日記の内容は、ここに住んでいた女性の日々だった。女性はとても視力が悪く、歩くと壁にぶつかるような人だったらしくとても苦労していたようだ。だが、途中からカルハという男がここを出入りするようになり一気に少し暗い文体だった日記が明るく活気に溢れた文体に変わったのだ。この女性にとってカルハはとても大切な人だったのだろう。どんどん読み進めて行った。最後まで読み終わると女性の悲惨な死を遂げたことを知ってしまった。簡単に言うと女性はお嬢様で膨大な資産を持っていた。このカルハという男はその資産目当てで女性と結婚し、結婚後にお金を全て持って行方をくらましたのだとか。女性は目が悪くちゃんとカルハの顔を見た事がない自分の無力さに嘆きこの古城の屋上から身を投げた。というものだ。実際に日記には飛び降りる寸前に書いた1ページを最後に白紙しかなかった。
「『真実の愛とは本当にあるの?』か…」
震えた文字で書かれた最後の言葉だった。
「カルハってやつ最低だな…この人は本当に愛していたのに…」
「そうでしょう?酷い人でしょ?」
「えっ!?」
独り言として呟いた一言に後ろから冷たい声で返事が来たことに驚き後ろを振り返る。そこに立っていたのは赤いドレスを身にまとったとても綺麗な女性だった。
「あ、あなたは…?」
「申し遅れましたわ。ジュリー、その日記を書いたものです。」
「ゆ、幽霊?」
「まぁ、そういうことになりますわね。」
「ぼ、僕をどうするの?」
「どうもしませんわ。ただ私と今日だけ一緒にいて欲しいのです。ただそれだけ。」
「そ、それだけ?」
「ええ」
「それだけなら…いいよ。今晩だけ君の隣で居よう。」
「まぁ!本当ですの!嬉しいですわ!」
ジュリーはマサキに抱きつこうとしてすり抜けた。
「嬉しいのはわかったから、隣でいればいいんだろ?」
「はい!」
「じゃあ布団で隣でいればいい。」
「いい考えですわね!」
マサキの隣に座るジュリー。幽霊のはずなのにとても綺麗で可愛い。真珠のように白い肌と真っ赤なバラのようなドレスがとても相まっていて綺麗だ。そのまま、マサキは眠りについてしまった。その後、マサキが目覚めることは無かった。
次の日。マサキは安らかに眠るように死んでいるのが発見された。その近くにはこう書いたメモが落ちていたそうだ。「魔女なんていなかった。ここに居るのは村の人に生贄にされ、心から愛した人に裏切られ自殺した女性の霊がいる。僕は彼女を1人にできない。カルハお父さん、ひとりぼっちにしてごめんなさい。マサキ」
はじめは童話風に可愛らしい世界観でハッピーなエンドにする予定だったんです。でも、いつの間にかこのエンドに…いや〜本当お話書くのって難しいですね笑




