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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
運命の収束点
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第99話

「ぐっ……」

「大丈夫なの!?」

「あぁ。雷魔法・ショック!」

身体中を抉るような痛みと共に電流が駆け巡る。まだ休めない。海上は危険と分かった以上、無理をしてでも倒れるわけにはいかない。それにリリスを不安にさせるわけにも……。

「きゃっ、大丈夫!? 今ビリってしたけど…」

「大丈夫だ。リリスこそ、怪我してないか?」

「う、うん。大丈夫だけど、リョウもういいの?」

「ここまでありがとう。今度は俺の番だろ?」

「…………」

電流のおかげで感覚が麻痺してるのか痛みを感じない。そして朦朧と仕掛けていた意識が回復していた。

「そこに座れ。痛かっただろ、ごめんな…」

ずぶ濡れのリリスの腕には海水と共に血が服を染めていた。まったく…。確かに俺も傷を負ったがリリスの方がダメージは大きい筈だ。

「………」

手に作り出す魔力の刃で肩から下の生地を切り裂きその深い傷が露となる。そして激しく体を動かしたこともあり片腕は既に血塗れだった。

「大丈夫か?」

「うん。大丈夫、」

「痛かったら言えよ。水魔法・洗水」

傷のついた二の腕へと掌を翳すと血を洗い流して傷口を確認できるようにする。

「っ…………」

「さっきは応急処置だったから確認出来なかったが……、深いな…」

魔物()が与えた傷は予想以上に深かったらしく、血が少しずつだが滲んできていた。

「リョウ、私は大丈夫。こんなの放置してたら治るよ!」

「ダメだ。雷魔法・神経乱断」

「ぃっ!」

「今日1日は手が上がらないだろう。我慢しろよ!」

「うん…」

「少し触るぞ。精霊魔法・集中蘇生」

傷口の少し上へそっと触れると魔力を傷へと集中させる。そしてゆっくりと魔法を発動させていく。

「そう言えばリョウ、痛みが消えちゃってる…」

「さっきの魔法だ。痛みは感じないだろうが腕も動かないだろ?」

「うん…」

精霊魔法はゆっくりと切り裂かれた傷を蘇生し滲み出る血を止めた。これ以上の蘇生は専門じゃない限り不可能なのだろう。

「ふぅ、一息……」

「大丈夫? 凄い汗だけど…」

「あぁ、大丈夫だ」

細かな魔力操作の連続と強力な電流によるダメージ。自分でやっているのだがそのダメージは相当なものだ。

「そう……。無理しないでね」

「分かってるって。あとは包帯だけだしいいだろ?」

傷は二の腕を真横に通っていて深さは1センチを越えていた。よく耐えたものだ。現代人なら気絶してても可笑しくなさそうなのに……。

「やっぱり優しいね」

「ん、急にどうした?」

「なんでもない。ありがと、」

「ん?」

巻き終わり手を離そうとしたところをリリスは片手を添えて俺に微笑み掛ける。その本意は計り知れないが俺は自然と笑みをもらしていた。

「ふふっ、終わり?」

「あとは安静にしとけ。氷の扉を抉じ開けるなんて…」

「あれくらい朝飯前よ!」

「………」

一瞥した扉はヒビが入っていて氷の破片が周囲に飛び散っていた。凍り付かせていた筈のドアノブも無理矢理突破されたようで壊れかけていた。

「さあ行きましょ!」

「なあ、俺の話を聞いてたか?」

「いいじゃない。どうせリョウは出ていくんでしょ?」

「………」

「連れてってくれないの?」

そんな顔をするなよ。

求めるような上目遣いの視線。断れるわけないじゃないか…。

「分かったよ。ただし、何もするなよ!」

「うん!」

絶対分かってない。その顔が全てを語っていた。けど1度許した以上引き返せない、と言うことで俺はリリスを連れて甲板へと戻った。

「リョウさん!」

「優司、心配かけたな」

「いえ、今回もお役にたてなくてすいません…」

「ふっ、役にたってくれたよ」

甲板の上には優司達2人、メガネ、兄ちゃん、そして少年とその友達の船員全員が集まっていた。

「君、今回は活躍したようだね。感謝するよ」

「メガネさん…」

「キサカです」

「キ、キサカさん……」

「おいお前、魔物はもう襲ってこないだろう。とは言えこの惨状はどう説明する?」

「………」

「私が港の職員と交渉しましょう」

「キサカさん、ありがとうございます!」

これで魔物襲撃の件は片付いた。いつの間にか陽も銚電へと達し、冬にも関わらず暑いと感じるようになっている。そして少し遠くに岸も見えてきていた。

「それでは1度解散しましょう」

「ん、」

「はい、」

「っ、」

結局数分もせずに解散。

俺達も2人部屋へ戻りベッドに腰を下ろした。

「それにしても寒いな。リリスは着替えなくていいのか?」

「着替えたいけど部屋着しか無くて……」

「そっか。『等価錬成』」

精製されたのは今リリスが着る服と寸分変わらぬ複製品。見た物知る物得た物、なんでも等価と交換で得られる万能スキル。

「ありがと。リョウ、着せてくれる?」

「甘えるなっ!」

「痛って!」

コツンと小突くと部屋を出て上着を脱ぎ捨てる。そしてこの寒い中、半裸になって甲板へと出た。

「風魔法・風巻」

俺を包む水達は寒い中を舞う風に吹き飛ばされ瞬く間に乾かされてしまう。

「ふぅ。寒かった、『等価錬成』」

何度この服をダメにしては作り出しただろうか。最近の常装となっている服装に着替えると俺は船首へ腰を下ろし大太刀を隣へと突き刺す。

《頑張ったね、》

《まあな。お前はもう大丈夫なのか?》

《当たり前。君こそ体は限界じゃないのかい?》

《あぁ。シアミドルに着いたらゆっくりと休むことにするよ、》

《ふふっ、それがいい。君が死ねば僕も必然的に消滅するからね》

《そうか……。そう言えば魔力はいいのか?》

《今日はね。まだ半分も貸してなかったから!》

《はっ!?》

《ん?》

今回の戦闘でも通常の5倍近い力だった。この力が全力じゃないとは。

《半分と言ったか!?》

《うん。僕が全開で力を貸すと今の君なら5分もたないよ!》

《マジか!》

《うん!》

《………》

《加減してくれて助かった…》

《ふふっ、どういたしまして》

今日は突然スッと消えて俺は甲板に1人取り残された。

「わっ!」

「っ!」

「驚いた?」

「あぁ。リリス、その服……」

「どう、可愛い?」

その服は俺の作った服じゃなくてどちらかと言うと戦闘には向かない服。真っ黒のコートに深紅の髪飾り。赤も似合うが黒も似合ってるな~。

「可愛い。似合ってるじゃないか!」

「ホ、ホント!」

「あぁ。意外と黒も似合ってる気がする!」

「ふふ、良かった!」

「一緒に行くか?」

「行くって?」

「少し()()()と思ってな!」

「いいの!?」

「当然だ!」

「ありがと!」

周囲を渦巻く魔力。それは大きな黒い翼として具現化すると俺達2人を包み込む。

「行くぞ!」

ボンッという羽ばたく音と共に俺達の体は空高くへと舞い上がった。そこからは沈み掛ける夕陽が見えた。

「綺麗…」

「だな。俺の手の中にはもっと綺麗な奴がいるよ」

「やっ、リョウったら!」

「なんだ?」

「ん~~~!」

「ふっ、そろそろ戻ろうか。見失ったら大変だ!」

「だね。早く戻らなきゃ!」

俺の翼が切る風達は鋭い音をたてる。そして船に戻った頃には既に岸が近かった。

「急ぐか、」

「うん!」

ガタンッ、

サッと魔力を解いて甲板の方向へと向かう。念のため裏側へ降りてよかった…。もう岸についたようだからな。

「リョウさん、どこいってたんですか?」

「少し軽いデートだ!」

「っ!」

「行こう、リリス!」

「うん!」

俺達は船から飛び降りると新しい大陸へと足を踏み入れた。

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