第98話
「リョウさん、さっきのタコが…」
「また来たのか?」
「いえ、魔物をもっと連れてきちゃって…」
「くそ。やはりアイツがボスか!」
「ちょ、リョウさん~」
「お前達2人でアイツらは倒してくれ。俺はボスを殺す!」
「っ!」
殺気を込めた言葉に優司はビクッとすると後退り剣を落とす。俺の中に渦巻くのは怒り。自然に具現化していた翼は深い黒色を誇っていた。
「!!!!!!」
「よくも俺達を狙ったな!」
「!!!!!」
「うるさい!」
伸びてくる触手を全力の魔力と力で断ち斬ると、斬った触手へと飛び乗り本体へと走っていく。
「!!!!!」
「お前の連れはリリスを害した『雷鳴ノ瞬撃』!」
日緋色の刃がタコの右目を切り裂く。それに逆上したタコは触手を振り回すがそんなもので落とされてたまるか!
「!!!!!!」
「なにっ!」
俺の立つ触手の表面に亀裂が入るとまたもさっきの粘液が俺を包む。
「!!!!!」
その瞬間、他の所を蠢いていた触手達が俺の周囲へと集まり逃げられないようにと取り囲んでいく。
「くっ、再生してるな……」
さっき切り落とした筈の触手は既に綺麗サッパリと回復していた。ならば遠慮はいらないな。
「!!!!!!」
「意気がるなよ。堕炎魔法・堕炎ノ操鎧」
手中から湧き出した真っ黒の炎は俺を中心に渦巻いたかと思うと晴れた時には鋼鉄の鎧のように硬化して俺を包んでいた。
「!!!!!」
「殺してやる!」
警戒して離れる魔物を追撃。
一番逃げ遅れていた触手を掴むと煙をたてながら触手は焦げて堕炎が燃え移る。余談だが暗黒炎との違いはその純度。暗黒炎は炎が主となるが、堕炎は闇が主となる。
「!!!!!!!」
「なんだ、回復が効かなくて驚いているのか?」
炎の特性を借りて宿る闇は燃える触手を回復させることはない。何故なら相手の魔力で永久にダメージを与え侵食し続けるのだから。
「!!!!!!」
「驚くのは早いぞ。あれは魔法の一部だ、『雷鳴ノ瞬撃』」
瞬時に魔物の目の前へと移動すると堕炎をのせた大太刀を眼球と眼球の間へと射し込む。タコはここが急所らしいからな。
「!!!!!!」
「なにっ!」
束の間の油断がこれを招いたのかもしれない。なんと魔物はその攻撃になんの反応も見せることなく余る触手で俺を拘束した。そして瞬時に口元へ持っていくと鋭い牙を俺に向ける。
「!!!!!」
「なるほど。けど、この魔法はまだ解いてないんだぞ!」
注ぎ込む魔力量を増やすと比例して堕炎の鎧からはドス黒い炎が吹き出し触手と共に魔物本人を焦がす。
「!!!!」
「ふははは、1度出直すといい!」
今度は油断しない。体全体へ回していた堕炎への魔力を全て手中へ集めるとその分の堕炎球を作り出す。
「!!!!!」
「死ね!」
勢いよく飛んでいく堕炎は水面の水を蒸発させながら魔物自身を燃やし遠くへと吹き飛ばした。
「これならまだいける。魔物共、いくらでもかかってこい!」
「!!!!!」
水中から跳び跳ねた魔物は翼目掛けて突進してくる。まあ、獲物の翼自体を狙うことは確かにいいと思う。しかしだ。警戒してないわけないだろ。
「堕炎、使えるな?」
船の周囲を飛び回りながら襲ってくる魔物達を堕炎に焦がす。その頃には船上の魔物の数も少なくなってきていた。
「あ、リョウさん!」
船に降り立つと真っ先に駆け寄ってきたのは優司。その後に藍夏、そして兄ちゃんもゆっくりと歩いてくる。
「さっきの奴は仕留めた、と思う。後は残る雑魚だけだ、」
「あと一息ですね!」
起き上がる蟹型を踏み潰しながら頷くと、甲板の先へと移動する。魔眼に翼にと今日は俺の全てをさらけ出してる気がする……。
「さあ、そろそろ消えてくれ。風魔法・乱嵐刃」
吹き荒れる刃は水の中などお構いなしに暴れて水中の生き物達を次々と殺していく。死体は水面へ浮かんできた。
「終わりましたね、」
振り返ると船上の魔物は綺麗サッパリ片付けられ、血塗れの剣を持った優司達2人が話し掛けてきていた。
「そうだな。お前達怪我はないか?」
「はい。藍夏ちゃんは大丈夫?」
「うん。大丈夫。リョウさん、私達は大丈夫ですよ」
「そうか。なによりだ…」
「それよりもリリスさんは?」
「負傷したから部屋の中に閉じ込めてきた。危ないからな、」
「そうですか…」
その時、バサッという水音と共に俺は横へ突き飛ばされた。咄嗟に自分のいた場所を見ると触手が誰かを掴み引きづりこもうとしていた。
「リリス!」
「リョ…」
俺の伸ばした手は届かず触手は無情にも海の中へ引き込んでいってしまった。
「おい2人共、俺は少しの間開ける。そして戦いの余波で死なないように気を付けろよ、」
「は、はい!」
俺の手には勝手に発動したスキルによる絶炎が宿り体全体を包んでいく。許さん!
ドボンッ!
「~~~~~!」
水の中へ入ったがその瞬間周囲の水が蒸発していって、役にたたない。そんな物、気にしない!
「どこだ!」
絶炎はやがて収縮し、鎧の形へと整った。そしてそれと共に無用な熱は放たれなくなり、水の蒸発も止まった。
「見付けた!」
深い所に必死で触手に抗うリリスとそのリリスへ牙を向ける魔物。隻眼であることからさっき殺し損ねた奴だな。
「炎弾!」
人差し指を魔物の胴体へと狙いを定めると膨大な熱量を持った絶炎の弾丸が水を蒸発させながら獲物へと迫る。
ドンッ!
弾がぶつかったことから魔力が散って周囲を大きな水蒸気爆発が襲った。触手により拘束されていたリリスはその触手によりゼロダメージで、吹き飛ばされたのは魔物だけだった。
「~~~~!?」
拘束する触手を燃やし尽くしてから鎧を解除するとリリスをしっかりと抱き寄せ、海面へと移動する。
「ぷはっ! リョウ~~~」
「な、引っ付くなって。飛べないだろ、」
「で~も~」
「仕方ないな。風魔法・乗竜巻」
水を吹き飛ばし俺達を乗せた竜巻は船まで俺達を乗せた飛ばす。半身が動かせない今、翼は使えない……。
「ふぅ。どっと疲れた……」
甲板に降り立つと体全体を脱力感が襲い膝から崩れ落ちそうになった。まだダメだ。残っている…。
「大丈夫?」
隣で俺に肩を貸してくれてたリリスは異変に気付いたようで心配してくれる。自分の方がよっぽど痛いくせに……。
「大丈夫だ。リリスこそ、痛いだろ?」
さっきの傷もそうだがあの魔物の力は相当なものだった。と言うことは体も無事な筈がない。
「だ、大丈夫。私は落っこちちゃっただけだから!」
「ほーう、」
なら試してやろう。隣に位置するリリスの腕ををチョンと触る。
「ぃって!」
「ほら、大丈夫な筈ないだろ。早く部屋まで戻るぞ!」
「…………」
無言になったリリスへ今度は俺が肩を貸すと部屋まで戻ろうとドアノブに手を掛けたその時、
「!!!!!!」
「リョ、リョウ。戻れないんじゃない?」
さっきの凶悪な魔物が計6匹。
甲板へしっかり触手を伸ばし、残っている人々にその手を伸ばし始めた。
「なんなんだよお前達は。雷魔法・雷轟!」
出せるだけの魔力を乗せた魔法は周囲の天気までも変化させて黒い暗雲が空を覆う。
「!!!!!」
「墜ちろ!」
ゴロゴロとした大きな音と共にビリっと一瞬光ったかと思うと船にしがみつく魔物達は絶命し海へ落ちていった。
「だ、大丈夫?」
「はあ、はあ、大丈夫だ。魔物を回収してくる、」
ふらつく意識のままリリスをその場へ残し海の中へ飛び込む。そして見付けた魔物を片っ端から回収すると船へ戻った。
「おいお前、大丈夫か!?」
「は、はい。部屋へ、戻ります」
「そ、そうか……」
優司や藍夏、兄ちゃんやメガネがいる中を俺は扉の前へ来るとリリスに肩を貸してもらいながら自室へと帰った。




