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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
運命の収束点
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第94話

そして今夜。ユラユラと揺れる船内で、俺とリリスは蝋燭の火1つで藍夏を待っていた。

「ねえリョウ、隣の人ってどうなったの?」

「死ぬ寸前まで殴りつけてから、魔法で同じようにして放置!」

「やりすぎじゃない?」

「大丈夫。あの短剣は俺に向けてじゃなくリリスに向けた攻撃だった。それだけで万死に値する!」

「リョウって私のことになると目つきが変わるね~」

「そうか? まあ、旅仲間の、それも恋人が狙われたんだ。怒るのは当然だろ?」

「んっ!」

横で微笑むリリスを抱き締めるとベッドへと倒れこむ。特に意味はないがこの雰囲気で目を合わせる自信はない。

「ふぅぅ。まだかな?」

「いいじゃない…」

蝋燭の朧光が部屋の中を照らす中、俺の手を枕にリリスは目を瞑っている。寝ていないのは分かる。

「リリス…」

「リョウ…」

「………」

「………」

コンコンッ、

沈黙と云う名の穏やかさが部屋の中を満たす中、その沈黙はノックの音で新しい雰囲気を運んできた。

「リョウさん、藍夏です」

「入っていいぞ、」

部屋の中はあらかじめある程度整理してゆっくりと会話できる場所にしている。落ち着かない状況での相談なんてただの雑談に過ぎないから。

「失礼します、」

「こっちだ。適当に空いてる所に座ってくれ、」

ベッドからリリスを抱き起こすと、机周辺の椅子へと移動する。このままじゃ暗いな。蝋燭の光を増やして明るくするかな…?

「失礼します…」

「そう緊張するなよ。久しぶりだから驚いたぞ!」

前相談を聞いたのは湖の時。それ以来一切無かったのでもう来ないかと思っていたのだがな…。

「私が藍夏ちゃんの相談を聞くのは初めてだね。リョウには敵わないと思うけど頼ってね!」

「はい!」

「と言うことで進めたいと思わなくもないのだが先に、『等価錬成』」

何も置いていない机の上へ手を翳すとスキルを使い適当な量のお菓子と酒、お茶を作る。完全に日本のお茶タイムだな。

「これ…、全部日本のですか!?」

「あぁ。俺のスキルだ。ハッキリ言って無料だから遠慮しなくていいぞ!」

「は、はい…」

「けどリョウ、お酒まで必要?」

「いいだろ。酒を飲んでたほうが話も進む。それに藍夏の場合、酒なんて飲んだことないだろ?」

「はい…」

「この世界じゃ酒なんて飲んで当然って感じだからな、1度くらい口をつけておけよ」

「はい!」

と言うことで全員へ深色の赤ワインを注いでいく。まあ、俺は飲まないけど……。

「これってワイン?」

「あぁ。まあ、お茶も用意してるし飲めなければそっちを飲めばいい。強制じゃないからな!」

「ありがとうございます…」

なんとも今日は勢いがない。まあ、こんな藍夏の酒を飲んだときの様子を見てみたいってのもある。吉と転べばいいが凶だけは嫌だな。

「と言うことでまず一杯だ。飲み干してしまえ!」

わざとお茶と酒のコップは同じ見た目にしてある。中の飲み物が上から見ない限り分からないように。

「んぅぅっ! リョウこれ強いね!」

「初めてです…」

「ふっ、俺の飲んだ中でキツい方だからな!」

と言ってもこのワインは家にあったいつのものかも分からないのを味見した時のものだ。正直、この他のワインなんて飲んだことない。

「こんなのすぐに酔っちゃうよ。リョウ~」

「リョウさん、これ、熱いです…」

「2人共、お茶でも飲めよ。酒の濃度が高ければ酔いやすいからな、」

当然俺は飲んでいない。酒で成功したこともあるし失敗したこともよくある。それに俺は悲しみを酒に逃げてしまった。自分がそうならないと確信が持てるまで俺はもう飲まない。

「ふぅぅ。お菓子食べていいかな?」

「あぁ。その為に作ったんだからな。藍夏も遠慮するなよ!」

「はい…」

と言いながら俺は1人、酒に当てられた2人を眺めながら小さな洋菓子を口へ運ぶ。名前は知らない。

「んで、今日はどんな相談なんだ?」

「はい。実は最近、進展が無くって……」

「ほぅ……」

奥手に戻ったか。いやそうじゃない。アイツは今でも努力してるように見えるし、時々普通に聞いてきたりする時もあるので言って悪いが藍夏よりも積極的だ。

「私、どうすればいいか分からなくて、何もしてあげられてないんです…」

いつもより感情がこもってるな。やはり酒は強い。思考能力を曖昧にしている。

「で、進展が欲しいと?」

「はい。こないだまで分からなかったけど、もう私は優司が好きで仕方ないんです。もし優司に嫌われたら、私、私…」

涙目になってまで言われては俺も中途半端なことは言えない。とは言えそこは難しいところだよな。

「そうか。なら1つ1つ解いていこう」

「はい…」

いつの間にかリリスは藍夏の後ろへ周り泣きかけている藍夏を慰めている。本当に凄い奴だよ。

「まず初めに、進展が欲しいと云う点だが、そこに関しては気にする必要は無いと思う。そもそも俺達2人をベースにするべきじゃないぞ。ゆっくりと進めていけばいいんだ、」

「………」

「まあ、そこに関して言えるのはそれくらいだ!」

「はい、」

「そして次に、どうすればいいか分からないってのは優司のアプローチに対してか? それとも自分の感情に対してか?」

「………。どっちもです、」

「ふっ、優司のアプローチに対しては思ったことを口にしてやれ。自分って型じゃなくて、ありのままに思ったことをだ!」

「ありのまま、ですか…」

「そうだ。下手に飾るよりも率直な気持ちの方が届くからな!」

「はい、」

「そして次に自分の感情、今まで経験したことのない感情だろうな?」

「はい。誰かをこんなにも切なく思うなんて…」

「ふっ、誰しもにあることだ。深く考えない方がいい!」

「そうよ。大好きな人には好きなように甘えればいいんだしね!」

「………」

「リリス…、お前みたいに率直に伝えられる人ばかりじゃないんだぞ?」

「それをリョウが言うかな~?」

「………」

「やっぱり仲が良いですね」

「こうなるかは藍夏、お前の努力次第だぞ!」

隣に座るリリスに視線を向けるとニコッと微笑みをくれた。こっちから仕掛けようと思っていたのに先手を打たれてしまう。それにしても可愛いよな~。

「頑張ります!」

「ふふっ、意気込み過ぎんなよっ!」

気合いを入れる藍夏の目の前へ歩み寄るとそこで1度止まり、ポンポンと頭を手をのせると扉へと移動する。

「リリス、俺は少し開けるわ!」

「うん!」

「………」

複雑そうな藍夏をよそ目に扉を開くと甲板へと移動する。正直、恋愛相談が苦手なわけじゃないが得意でもないんだ。まあ、面白いからいいんだが……。

「ん?」

そこには釘付きバットを甲板に突き立てる兄ちゃんがビール片手にモドキを眺めていた。

「…………」

「どうしたんですか?」

三日月の下の甲板は明るく照らされていた。そこに当たる人影は船の揺れもありユラユラと揺れている。

「あぁっ! て、お前か…」

「昼間は失礼しました、」

「お、おぅ!」

「何をしてらっしゃたのですか?」

「ミキと、嫁と話してたんだよ…」

「………」

その姿は悲しみと云う名の影に包まれていた。その目尻には煌めく滴が見える。

「そう言うお前は何しに来たんだよっ!」

「息抜きですよ。少し連れの相談にのってたんです」

「大事にしろよ…」

深い喪失と悲壮を込めた声に俺の胸の中では色々な物が渦巻く。大事にしてるつもり、守っているつもり、けれどそれも全て完璧ではないのかもしれない。この兄ちゃんの言葉は俺に対しての忠告に聞こえた…。

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