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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
二人の旅路
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第90話

「と言って帰ってきたわけだが、部屋はどうするか?」

俺とリリス、優司と藍夏、このメンバーで部屋を取ったのはいい。しかし当然ながらエリの部屋はない。なので俺達か優司達の部屋となるわけなのだが……。

「んーー、」

「んーー、」

「んーー、」

やはり俺達ではどちらとも決められない。と言うことはやはり本人に聞くべきだよな。

「エリはどっちがいい? 俺達と寝るか、優司達と寝るか?」

「お兄さん達と!」

「決まりだな。優司と藍夏は向こうでいいよな?」

「はい。荷物も向こうですもんね!」

「あっ、そうか。なら決まりじゃないか…」

「忘れてたんですか?」

「悪いか?」

「悪くないですけど……」

「冗談だ。2人共、今夜はまだ羽目を外しすぎるなよ?」

『っ!』

「ふっ、意外と船旅はキツイからな。体力を削った状態なんて最悪だからな!」

「………」

「僕、部屋に戻ってても良いですか?」

「あぁ、良いぞ。藍夏はどうする?」

「私も戻ります……」

「おやすみ2人共、また明日な!」

と言うことで2人を見送ると俺は扉の鍵を閉め、エリをベッドへ下ろす。

「リリス、今日はエリと一緒に寝ていてくれ。俺は少し出掛けてくる、」

「えっ、今から?」

「あぁ。少し用事がある!」

「私もついて行けないかな?」

「ごめん。今回だけは無理だ…」

「仕方ないよね。ごめん。おやすみなさい……」

「お兄さん、行っちゃうの?」

「明日には帰ってくるよ。安心しろ、」

「お父さんみたい……」

「ふっ、ならお母さんと一緒に留守番していてくれ!」

「うん!」

「リョウ、お母さんって…」

「いいだろ? じゃあなっ!」

久し振りの時間。黒いコートをはためかせ俺は扉を出ていった。


「『状態変化・霊』」

実体のない存在へと化した俺は夜の空を自由に飛び回る。そして1番高い建物へと立つと、町を眺めてみた。

「やはりダメか。お前はどうすれば出てきてくれるんだ?」

最近俺が感じる恐怖。それは誰かが死ぬことでも自分が死ぬことでもない。最近俺が感じる恐怖は自分が自分でなくなること。ズバリ、俺は俺の中の俺がまだ生きてると思っている。

「やはりあの時からかな、」

そう。あの湖に魔法を掛けてから俺は不思議な何かに遮られているような感覚だった。視覚も、聴覚も、嗅覚も、思考までも何かに遮られていた。ならば、

「…………」

同じことをしてやればいい。魔力を限界まで放出して感覚がずれてくるまで!

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

今は片手だけしか使えないから効率が悪い。それに魔法じゃないから余計に…。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

それでも魔力は体全体から放出されている。高濃度の魔力が周囲を吹き荒れて既に見える域にまで達している。

「ぐっ!」

魔力で浮かび上がっていた体はズキンッという強い痛みと共に強い衝撃を発しながら屋上へと落ちた。必死に片膝をついて耐えているがもう、もたない……。


「久し振り! 切り離された僕!」

「久し振りだな。もう1人の俺……」

ここでは思考や意識を遮ぎっていたものが消えた。やはりその正体はコイツなのだろう。

「うんうん。そろそろ僕を受け入れてくれるかな?」

「いや、まだだ。今日、俺はお前と協力しようと思って来た」

「協力? 僕とかい?」

「あぁ。頼めないか?」

「ふふっ、面白いことを言うね。その見返りは何かな? 僕を受け入れてくれるのかい?」

「いや、それは出来ない。魔力と引き換えならどうだ?」

「魔力、何故僕が?」

「お前の体は魔力があれば具現化に近付く。なら逆に俺を取り込むことが出来るんじゃないか?」

「ふふっ、良いじゃないか。その提案にのってあげよう!」

よし、これで俺の目的は果たせた。他にも色々とあるが取り敢えずはこれさえ果たせれば十分だ。

「礼を言う…」

「とは言え僕は何をすればいいのかな? 君に力をあげればいいかな?」

「そうしてもらえると嬉しい…」

「ではそうするとしようか。けれど1つ注意して欲しいことがある」

「ん? なんだ?」

「僕の意識と力は離別したものではない。これの意味、分かるね?」

「………」

「いいね?」

「あぁ。許可しよう。帰るにはどうすればいい?」

「また僕を殺してみれば?」

「そうだな、」

グサッ!

霊体の手刀を腹に突き刺すと肉を斬る感触と共に力が俺に流れ込んでくるのを感じる。魂を吸収するのと似た感覚だな。

「またね。次からは君が呼べば出てあげるよ、」

そんな言葉を残しもう1人の俺は粉々に消えた。そして真っ暗な世界はガラスのようにパリンッと割れて月明かりが俺の目を射す。

「ふぅ。これで一息だ、」

ため息をついて、立っていた屋上に腰を下ろす。すると左側に違和感がある。

「んっ! 左手が……」

左手は切り落とした筈。しかし今、左を見ると黒い腕が生えて俺はその腕を自由に動かせる。

《驚いたかい? それは僕からのプレゼントだよ!》

そんな奴の声と共に現れたのは半透明の自分。フワフワと俺の周囲を飛び回り読めない笑みを浮かべている。

「プレゼントだと。お前にどんな利益が!?」

《酷いなあ。僕は君で君は僕。自分を助けるのは普通じゃないかな?》

「………」

《不便だったんでしょ。その左手、君にあげるよ! その左手は強いよ、魔力っぽいので出来てるから斬られてもすぐに回復するし、魔力と同じ感覚で自由に操ることも出来るんだよ!》

「ふっ、ならありがたく貰うとしよう」

《やけに素直だね?》

「あぁ。貰えるものは貰う。お前が1番知ってるんじゃないか?」

《まあね。そう言えば話は変わるけど、君には僕が見えているかい?》

「あぁ。半透明の自分がフワフワ浮いているように見える…」

《ん、なら良かった。僕は気が向いたらこんな感じで出てくるけど気にしないでね!》

「そんな勝手な……」

《あと、僕のことは君にしか見えないからね~》

スウッと薄れるように消えたもう1人の俺。その声は既に聞こえないが左手には奴と似た感覚がある。

「………」

真っ黒の腕の力は右手と全く同じ。魔力のような物で出来ていると言っていたな。けど何が出来るんだ?

「ふっ!」

試しに左手を魔力を操るのと似た感覚で尖らせてみる。すると奴の言う通り、俺の自由自在に形を変えることができた。

「斬ってもいいんだよな?」

ブシュッ!

刃を腕に当てて素早く切り落とす。するとボトンと云う物音と共に腕は落ちた。

「痛みは、ないな……」

まあ魔力を傷付けても痛くないのと同じで腕を切り落としても痛覚はない。そして消える様子もないことから繋げることはできるのだろう。

「………」

意識をすると断面と断面から魔力が吹き出して断面同士が繋がる。やはり魔力ではないが、魔力を使うこともできるのだろう。

「予想外のプレゼントだな…」

意外に有用な腕だ。これならば斬でも爆でも溶でも回復してしまうだろう。

「礼を言うぞもう1人の俺、」

魔力を高め翼を具現化させる。本当はズッとこのままが1番なのだが、これを隠すためにも俺は魔力を解いている。リリスやエリ等は常に魔力を巡らせているのだが、俺の場合そうはいかない。まあ、基礎能力でカバーできるがな!

バサッ、バサッ、バサッ、

空に飛び立った俺はこの港町全体を、そして海の方を眺める。やはり地平線の先にはなにも見えない。それ程までに離れていると云うことなのだろう。

「戻るか、」

心なしか翼が若干大きくなっている気がする。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、思考、全てが強化された感じだ。やはり奴を殺して出たのも関係しているんだろうな。

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