第9話
「昨日は世話になった、」
「いいえ、親父もいないし暇なんだよ。また泊まりに来ておくれ。」
「ありがとう、。またな、」
「じゃあね!」
やっとだ。今日はサバイバルトーナメント初日。派手にいこうではないか!
「おじさん!」
「坊主、ちゃんと準備はしてきただろうな?」
「はい!準備万全です!」
「そうかそうか、、選手控え室は向こうだ。中にはランダムで決められたトーナメント表がある。坊主の番になれば闘技場へ出るんだ、、分かったか?」
「はい!」
「よし!行ってこい!」
控え室に入ると中は大勢の人で溢れていた。
そんな中でトーナメント表は天井スレスレの場所に貼り付けられていて、見るには困らない。
「えーと、、俺は一番か、」
そう。俺のエントリーナンバーなんと一番。トーナメントが始まって一番始めに出るらしい。
「ん、、お前があのリョウって奴か?」
「そうですけど……。」
なんだこいつ、、確かに強そうだがなんとも武人の目じゃない。
「お前が俺の相手だと、冗談じゃない!」
「と言うことはアナタは二番のマイケルさんですか?」
「ああそうだ。くれぐれも死なんようにしてくれよ。」
「は、はい。」
「ふんっ、」
殴りたいら滅茶苦茶ウザい、それにやけにキザだ。無理だ。こんな奴が相手なんてこっちこそゴメンだ!
『一組目!リョウ選手&マイケル選手の入場でーす!』
ん、早いな。この扉、だよな?
俺が目線で質問すると他の選手がコクりと頷き教えてくれた。俺はそれに感謝し扉を通った。
『それではサバイバルトーナメント、開催でーす!』
その声と共に試合の火蓋は切って落とされた。
「はあっ!」
ガキンッ!
マイケル選手の武器はおじさんと同じ直剣。しかしおじさんとは比べ物にならないくらい弱い!
「炎魔法・炎鳥」
「うわっ!」
人体の中で魔力を一番扱いやすいのは両手。そして次に足なんだがその差は格段に大きい。だから両手以外で魔法を使うのは愚策だ。
まあ、それが今の状況に何故繋がるのかというと、手は二つある。と言うことで、魔法の同時発動も不可能ではない。もう分かってくれただろう。炎鳥の数は二羽。炎を纏う危険な魔法が二羽も敵に出来てしまった。
「炎鳥よ、炎矢による攻撃だ。」
「キュイ、キュイッ!」
「ちょ、そんなの反則だろ!魔物を闘技場に連れ出すなんて!」
「魔物じゃない。魔法だ!」
「はぁっ!?」
ガキンッ!
その間も手加減無しで短剣をぶつける。短剣は一撃のダメージはそこまでないが、手数が多い。これはこんな消耗戦の場では最適だ!
「舐めるなよ子供が!」
マイケルの体が発光したかと思うと目の前から消えた。そして後ろから剣を振り下ろされた。
「なにっ!」
「警戒はするものだな。」
今のはマイケルのスキルだよう。けど、剣による斬撃が通らなくて戸惑っている今なら…。
「雷魔法・ショックサンダー」
一瞬、ほんの一瞬、何かが光ったと思うとマイケルはその場へ倒れていた。
『勝者、リョウ選手ー!皆様、盛大な拍手を!!』
この一回戦は色々と俺も学ぶことが多かった。けれどそんなことよりも俺は疲れた。取り敢えずは客席でノンビリしよう。
ガヤガヤと煩い。学校以外中々山から降りない俺はこんな所は苦手だが仕方ない。上の方なら多少はマシだろう。
と言うことで客席の最上部へと足を運ぶ。すると早速のお客だ。
「旦那、今のは魔法ですかい?」
「言うわけないだろ。一応俺の特権なんだから」
「だと思いましたよ。それはそうとあのエルフの娘、歳はいくつですかい?」
「ん、、何故だ?」
「いやぁ、やけに色々と物知りで私がついていけねえんですわ。興味本位なんで良いですがね。」
「そうか。俺も歳は知らん。」
「そうですかい。そんなじゃ、契約お願いしますよ。」
商人は宝石だらけの手を振ると何処かへ去っていった。そして次は…、
「よお坊主、よくやったな。魔法なんか俺より上手くなってるじゃあねえか!」
「はい。色々練習しましたし!」
「そうかそうか、よくやった!取り敢えずはよくやった!」
「ありがとうございます!」
「ははは、また話そう。残念だがまだ仕事が残ってんだ!」
「はい。では、、」
機嫌の良いおじさんに手を振って送り出すと、次に来たのは…、
「シュラ!」
「リョウ!凄いじゃないの!」
「来てたのか?」
「あぁ。リョウが出るって言ってたからねぇ。」
「鍛冶屋は、いいのか?」
「大丈夫大丈夫、親父は家にいないし滅多に帰ってこない。それに収入なんて皆無だからね。」
「皆無って、、」
「本当さ。お客が来たのなんてリョウがここ数ヶ月で初めてさ!」
「そうだったのか。常連にならせてもらうよ。」
「ありがとね。そして、よろしくね。」
「あぁ。」
そしてちゃっかり俺の隣へ座る。
「て、座るのかよ!」
「ダメなの?あたし、一人だよ?」
「仕方ないな。」
「ありがとね!」
「シュラ、口調、変わってないか?」
「まあね。前までのは商売の口調だね。日頃からあんな口調じゃフレンドリー過ぎるでしょ!」
「まあ、そう言うものか?」
「そうだよ。それにあんなにサバサバしてたら女の子らしくないじゃない!」
「まあ、そうなのか?」
「うん!」
まあ、分かる気がする。
けど、前までのシュラも嫌いじゃないけどな。
『これにて午前の部は終了です!二刻後、午後の部を開始します!』
「どうするシュラ、一度帰るか?」
「実は…。」
「ん?」
「あたし、お弁当作ってきたんだ。帰られるか分からなかったから!」
「そうなのか?」
「うん!それで、二つ作ってきたしリョウもどう?」
「いいのか?」
「うん!リョウの為に作ってきたし!」
嬉しい。そしてその優しさには感謝だ。
いつかちゃんとしたお礼をしなくてはならないな。
「ありがとうシュラ。もらうよ、」
「うん。どうぞ、!」
「ありがとう、」
ヨーロッパ風文化なのに何故か弁当という物が存在した。本当にグチャグャな文化構成だな
「旨い。」
何故か懐かしい味がする。本当の意味で懐かしい。
「シュラ、、一つだけ、聞いていいか?」
「うん!どうしたの?」
「この弁当って方法、親父さんが言ってなかったか?」
「えっ、、どうして分かったの?」
「今度、親父さんが帰ってきたら教えてくれないか?」
「え、いいけど、、、どうしたの?」
「いや、、きっと俺と親父さんは同郷だと思ってな。」
「え、本当なの!?」
「あぁ。けど、それがどうしたんだ?」
「だって、親父ったら故郷のことは一切教えてくれないんだよ。ねぇ、その故郷っとどんな所?」
「そうだなぁ。」
流石にそのまま現代日本のことは教えられない。まあ、色々濁すべきか?
「ねぇ!」
「そうだなあ、どんなことが知りたい?」
「えーと、、まずはそこの特産物を教えてよ。」
「特産物か、、魚かな、」
「魚?魚って川に住んでいる?」
「いや、、海っていう大陸の外側にある大きな湖のことだ。」
「そんな物があるんだ、、て言うことは、故郷は大陸の外なの?」
「まあな。そんなところだ。」
確かに嘘はついていない。日本はここの外だからな。色々な意味で!
『これより午後の部でーす!第一組、リョウ選手&ガイラ選手は準備をしてください!』
「じゃあ行ってくる、」
「うん、頑張ってね!」
次の相手は魔法使いのガイラ選手。魔法攻めは出来ないな。