第88話
「はい、4名様ですね?」
「はい」
「それでは御部屋はどう致しましょうか?」
「2部屋御願いします、」
「はい。それではこちらが2部屋分の鍵になります」
受付の人から鍵を受けとると俺達は足早に部屋へ向かう。そして取り敢えずは1つの部屋に入り窮屈ではあるが部屋の中へ全員が腰を下ろした。
「2人共、俺達はここでお別れだ。お前達は人間の町へ行くと良い。俺達は獣人の大陸にでも行くかな?」
「だね。けどその前に、私達も藍夏ちゃん達もシアミドルまで行かなきゃ!」
『シアミドル?』
リリス以外が一斉に声が揃う。俺を含め優司達2人もこの世界に関しての知識は皆無で、そのことを知っているリリスは淡々と話を進める。
「うん。この四大陸の丁度中央に位置する大陸で名前をシアミドル。ここだけは種族とか関係無い人が集まってるんだって!」
「よく知ってるな~」
「当たり前よ! これでも次期領主として育てられたんだから!」
「へっ!」
「リリスさん!?」
「あー、2人には伝えてなかったな!」
「ふふ、こんにちは、わたくしヤミラス次期領主のリリス・ハーディングです」
「す、凄い…」
「リリスさん…」
普段は見せない優雅な笑みを浮かべると軽い御辞儀をする。完成されてるなあ~。
「凄いな、」
「ふふ、ある程度の礼儀とか作法とかならマスターしてるよ。ある程度は、だけどね!」
「それでも十分だろ?」
「そうかな~」
「あぁ。とは言え話が逸れたな。俺達がシアミドルへ向かうのは決定事項として、一応聞くがお前達はどうするんだ?」
「私達もシアミドルへ向かいます!」
「そうかそうか。けど、守るって約束はもうないぞ?」
「大丈夫です!」
「分かった。俺達は後で港の手続きに向かう。お前達も来るといい!」
『はい!』
「準備が出来たら下のカフェにまで来てくれ。リリス、行くぞ!」
「うん!」
荷物を部屋の中へ収納して、俺達は部屋を出る。アイツらも自分の部屋に荷物を置くだけだし早く戻ってくるとおもう。
「ねえリョウ、藍夏ちゃん達本当に手放していいの?」
「あぁ。人の大陸なら最悪は避けられるだろうし、実力も上がってきているからな!」
「最後、見届けなくていいの?」
「ふっ、確かに気掛かりだ。けどまあ、シアミドルで何かしてくれれば満足だし!」
「そうなんだ。2人共、そろそろお別れだね…」
「あぁ。少しの間だが愛着がわいた。どうか2人には幸せ、になってほしいな!」
「同感。2人共良い子だしね!」
「あぁ。あんなこと行ったが、落ち着いたらまた4人で旅したいな、」
「うん。ゆっくりとね、」
「そうだな~」
教会のようなつくり、いやもう既にあのアテネ神殿を連想するような外見のこの宿は外見とは似付かない内装で、当然なステンドグラス越しの光がまるで芸術のようだ。
「リョウさん、準備できました!」
「そうかそうか。なら行こう、」
「はい!」
とは言っても2人の荷物なんて無いに等しい。何故なら俺達と会うまでは何も持っていなかったのだから…。
「まずは港だよな?」
「うん。私もここに来るのは始めてだし、船なんて乗ったことないから…」
「まあいい。そんなこと気にするなよ、」
「う、うん…」
それにしても人が多い。朝の校門とは言わないが、それにしても人が多い。はぐれないようにリリスとはしっかり手を繋ぎながら優司達2人は常に確認している。はあ、左手が無いのがここまで不便だとは……。
「ここが港か…。なんというかぽくないな、」
「うん。ここまでしっかりしてるんだね~」
その姿はなんと予想外のものだった。普通に大きな建物に、ゾロゾロと入っていく人々。取り敢えず聞いてみるか!
「すいません。船に乗りたいのですがどうすればいいですか?」
「は、はいっー! えーと、えーと、その、ギルドで貰って、えーと、港で見せて…」
ダメだ。この人とは話が続かない。とは言え言いたいことは理解した。取り敢えずはギルドで何かを貰えば入れるということだな!
「分かりました、ありがとうございます!」
「は、はいー!」
俺達は足早に立ち去るとそのギルドへと向かう。因みに俺が誰かを連れギルドに入ったのはこれが3回目。果たしてお約束は続くのか!?
カランッ、カランッ、
「今回は、大丈夫みたいだな!」
その時、
ドカーーンッ!
目の前で何かが大きな爆発を起こし、砕けた木片が俺の頬を切り裂く。変わらんな…、
「闇魔法・重力5倍」
ドッとした圧力が体にかかり、俺達はいま5倍になっている。当然、何の構えもしていないギルド内の人間は身動きも出来ない。
「なあ、今の爆発はなんだ。答えろ、」
『…………』
「ギルドは冒険者同士の争いに中立でいるらしい。ならこの中にいる冒険者共を皆殺しにしようが問題ないよな?」
『っ!』
当然脅し。そんなことをすれば俺は問題ないにせよ、周囲の人。リリスや優司、藍夏なでも危険に晒すことになる。
「さあ名乗り出ろ。5秒以内にだ!」
「1つ……」
「2つ……」
「3つ……」
「4つ……」
前にもこんなことがあった気がする。やはり名乗りでない犯人。取り敢えず片腕でも折るかな?
「わ、私ですぅ…」
「はっ?」
「お、怒らないで下さい、ご、ごめんなさい……」
なんと名乗り出てきたのは優司達よりも小さい本当の意味で子供の女の子。小さな杖を両手で持ちながら頭を下げてくる姿はなんとも幼い感じだ。
「お、お前がしたのか?」
「は、はい。ご、ごめんなさい…!」
さっきの爆発は成人した大人以上の威力を秘めていた。そんな強力な魔法をこんな子供が使えるとは…。
「お前、こんな屋内で魔法を使うなんて相当な理由があるんだろうな?」
「………」
とは言え俺の中では年齢等どうでもいい。魔法は相手に危害を加えるのだ。それを扱う者として理由は述べてもらわなければ困る。
「リョウ、そんな聞き方じゃ怖いだけだよ!」
「………」
「お姉さんに話してごらん。何があったの?」
後ろからポカンと叩かれ、俺はリリスと入れ替わるように下がらされる。
「私、お金が欲しくて、けど一人じゃ何も出来ないから…。お兄さん達に頼んだら魔法を見せたら仲間に入れてやるって…、」
「そうなんだ。けどこんな部屋の中で魔法なんて危ないでしょ?」
「うん。ごめんなさい…」
「リョウ、これで満足。どうやらちゃんとした理由があるみたいだよ?」
「そのようだな。すまなかったな…」
「お兄さん……。私こそ、ごめんなさい…」
魔法を使った子はさておき、それをさせた愚かな大人を成敗しなければ…。
「聞いていたな。冒険者共! 素直に出てこい! この子に聞けば分かることだ!」
「………」
やはり素直には出てこないな。仕方ない…。
「おい、お前に魔法を使えって言った奴、分かるか?」
「はい。あの人達です…」
女の子の指差す方向には片手に酒瓶のほろ酔い兄ちゃん達が必死に笑いを堪えながらニタニタと笑っていやがる。
「少し目を瞑っててくれるか?」
「はい……」
その頃にはする事がわかっているのかヤレヤレとした表情を浮かべたリリスが優司達2人を下がらせ、女の子の方は目を塞がせていた。
「なあ、兄ちゃん達。この子のいってることは本当か?」
「本当だよ~、ヒクッ、仲間に入れんのに実力知るの、ヒクッ、普通だろ~?」
あっ、完全に酔ってる。昼間から酔っているのは危ないな。目覚ましをくれてやろう。
「あ、それは普通ですね。すみませんでした、」
「そうだろ~、ヒクッ、お前こそ偉そうだぞ~!」
「それはそうと、間接的にでも俺への敵対行動の主犯である貴方達を、俺はどうするでしょうか?」
俺は冷徹な笑みと共に手をかざした。




