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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
二人の旅路
87/619

第87話

それから2日。

なんでもない日課と時間が過ぎて俺達は大きな門の前に立っていた。そこから少し斜めを見れば何処までも続くような青が見える。ここではソラスシアと呼ばれぶっちゃけ海のようなものだ。

「ここがベアリードか?」

「うん。少なくとも私はそう教えてもらったけど…」

「分かった。あと、2人は身分証が無いから入るのには時間が掛かる筈だ。俺達が付き添いで入るから、離れるなよ?」

『はい!』

「行くぞ、」

港町なだけあり人が賑わっている。人の種類も様々で、剣を持つ者、槍を持つ者、弓を持つ者、と言うか冒険者だらけじゃないか!

「おっと、兄ちゃん。そこの2匹は兄ちゃんのか? 俺にも分けてくれや!」

人混みの中、ぶつかって早々優司達2人を見つけ手を伸ばしてくる。やはり他種族となると軽蔑対象なのだろうか?

「っ!」

「あっ! 渡せって言ってんだよ!」

伸ばす手に手を添え制止するが男はその手を振りはらい優司達2人を自分の懐へと引き寄せる。

「俺達が何をした!」

「あっ! お前も魔族だろ! なに人間を庇ってんだよ、人間なんて奴隷じゃねえか!」

「っ!」

確かに優司達は奴隷だった。そして2人共人間でこの大陸では他種族だな。やはり2人は守らなければ……。

「くはははっ! 自分の奴隷を盗まれて悔しいか! くははははっ!」

妙な高笑いが俺の耳を木霊す。周囲の魔族達も薄ら笑いを浮かべ俺達を見世物かのように嘲笑っている。なら、

「お前なんかにやるわけないだろ?」

「くははは! 嗤わせてくれるぜ! なら取り返してみな!」

本当は穏便に済ませたかった。いや、違う。俺は元々こんな性格だったな。動物を仕方ないとは言え殺していた俺に言葉での説得など向いていなかったのだ。

「っ!」

「ぐはっ…」

スキルも使わずスピードだけで懐に拳を1発。

次にしゃがみこもうとする顎を持ち上げ殴り飛ばす。その間に2人は逃げ出してリリスの元へと戻っている。

「…………」

「くはははは! 降参するなら今のうちだぞ!」

膝の所へ収納していたナイフを取り出すとそれを真ん前で構え俺に向ける。その構えは慣れた武人のものでなくまるで初心者同然だ。

「っ!」

「うわっ!」

俺が動いたのと同時にナイフは直線的に突きだされた。しかしまあ、逃れるのは簡単。ナイフを持つ手首を捻りあげ、隙のできた胸骨へと正拳。それだけでも大きなダメージなのだがそれに続けて鳩尾へと肘打ち。そして仕上げに胸ぐらを掴むと持ち上げて、

「俺の可愛い後輩達を誰が下賤なお前になんぞくれてやるか!」

「ぐはっ!」

掴んだままがら空きの顔へと拳を1発。何かが砕けるような感覚がしたが気にしない。痛みでピクピクと痙攣する男をよそに俺はリリス達の方へと戻る。

「お前達、大丈夫だったか?」

「は、はい…」

「ぼ、僕もです」

「そうか。なら良かった。コイツ等も開けてくれていることだし早く入ろうか?」

『はい!』

門までの道を一睨み。すると取り巻く人混みが半分に割れて門までの道を開く。

「行くぞ、」

しっかりとリリスの手をとって門を通る。2人もはぐれないようにしっかりと確認しながら。

「リョウさん、流石、ですね……」

「ふっ、守るっていう約束だろ?」

「は、はい!」

パッと花の咲いたような笑顔を浮かべた優司。当然だ。俺はこの町まで守るって約束で連れてきているし、それに俺自身コイツ等2人に愛着が沸いた。ミスミス下衆に渡してたまるか!

「なあリリス、宿って何処にあると思う?」

「北側、だからここら辺にあると思うよ。向こうは港関連のものばっかりに見えるし!」

「そうだな。なら手分けして探そう。と言いたいところだが、優司、お前は俺についてこい。藍夏はリリスとだ。待ち合わせはここ。分かったな?」

『はい!』

これには単なる宿探しではない。これを口実に優司に助言を与えようと思う。

「何処にあるんでしょうか?」

「さあな。探していれば見つかるだろう~」

「そんな呑気な話じゃないですよ! 泊まるところですよ!」

「まあまあ、気負わずに行こう」

「はい…」

「それはそうと藍夏とはうまくいってるのか?」

「はい。でもやっぱり僕には積極性が足りなくて…」

「そうか。まあ、仕方のないところだな…」

「はい…」

「優司、次の町で藍夏を誘ったらどうだ?」

「それって……、けど僕達、お金なんて…」

「俺が払ってやる。行ってこい!」

「は、はい!」

これで完璧。恐らく俺が後押ししなければコイツら2人共中々進まなそうだ。と言ってもここで手放すことは出来ない。何故ならこんなにも危険な町だから……。

「すいません、この町の宿って何処にありますか?」

「兄ちゃん観光客かい? ならここを真っ直ぐ行った所にある筈だよ!」

「ありがとうございます」

笑顔で教えてくれた女性に礼を言いながら俺達は元の場所へと歩みを早める。目的は果たせたからな!

「そう言えば藍夏ちゃん達も宿を探してるんですよね?」

「まあな、」

「それって宿が二軒見付かるんじゃないですか?」

「そうだ、」

「それって絞るの難しくないですか?」

「大丈夫だ。港から近い方を選べばいいだろ?」

「あ、そう言うことですか!」

「そう言うことだよ。アイツらの方が早いかもしれない。急ぐぞ、」

「はい!」

若干足を早めると俺達は待ち合わせ場所へと急いだ。


「あっ、リョウ!」

「リリスか。やっと見付けたぞ!」

人混みの中、走ってくるリリスを見付けてその体を抱き止めた。

「リョウ~っ!」

「リリス~っ!」

周囲からの視線をジリジリと感じるが気にしない。そう言えば俺達2人は会ってからほぼ離れたことなかったもんな。

「リョウさん達、仲良いね~」

「私達も似たようなものでしょ!」

仲むつまじい会話も聞こえ俺達2人は心置き無くイチャつける。とは言え長々とここにいても迷惑だよな。

「リリス、何処か見付けたか?」

「んー、ごめん。見付けられなかった…」

「仕方ないな。俺達は一軒だけ当てを見付けたぞ。港の方の申請とかもしなきゃだから早く宿の方も終わらせなきゃな!」

「だね!」

港町なだけありこの町の人工衛星密度は相当なものだ。多くの賑わう人々を活気と呼べば聞こえがいいが、この中の者に危害を加えられた俺達からすれば害虫の群れのように見える。

「リョウ、部屋割りはどうするの?」

「男女、でいいんじゃないか?」

「えー、私リョウと離れるの?」

「嫌か?」

「当たり前よ! ねえ、私とリョウじゃダメ?」

「ダメ、じゃないけど…。優司と藍夏を2人で入れるのか?」

「………」

「仕方ないな。2人共、今の話は聞いてたか?」

首だけで振り向くと急いで近付いてくる2人。離れるなって言ったのに……。

「えーと、すみません…」

「2人共、だから優司と藍夏一部屋でいいか?」

「えっ!?」

「んっ!?」

「だから、お前達2人一部屋でいいか?」

「えーと、藍夏ちゃんがいいなら…」

「わ、私だって、優司がいいなら……」

俺の手引きもあり仲が近くなっている2人はお互いを意識しているようで真っ赤になるのモジモジと聞こえるか聞こえないような声で返答を返す。ホント、まだ小学生の年齢なんだがなコイツら……。

「なら決定だ。入るぞ、」

「えっ、ここですか?」

「あぁ、そうだ!」

そこは大きなまるで教会のような所。普通は宿とは思わないだろうが、ちゃんと看板に書いてある。恐らくあの人も観光客と言うことでこのよつな所を選んだのだろう。何はともあれ、俺達はその宿の中へと入っていく。

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